ダイハツCOO 1.5CXリミテッド(FF/4AT)【ブリーフテスト】
ダイハツCOO 1.5CXリミテッド(FF/4AT) 2006.07.06 試乗記 ……209万7900円 総合評価……★★★ 2005年12月に発売された「トヨタbB」の兄弟車として登場したダイハツ「COO(クー)」。若者向けをアピールするbBに対し、幅広いユーザーをターゲットとするCOO。その使い勝手を試す。
![]() |
もっとよいクルマ
「ダイハツCOO(クー)」を説明すると、「トヨタbBと多くのコンポーネンツを共用しつつ、内外装や装備を変更して差別化を図った……」ということになる。ただし若者向けbBと比較して、クーは、ファミリー層をターゲットとする。
ただハードはそのまま企画だけを換えて“別商品”とするには限界がある。コンセプトを見直したといいつつも、それほど違わないものがでてきてしまうと、せっかくの差別化も後づけの理由に感じてしまう。実際、後づけであろうが。
パッケージングの面からは、「クー」はファミリーカーにこそふさわしいと思っている。実物を見るとデザインも「bB」とはずいぶん違う。それどころか、細部のチューニングや変更で、もっとよいクルマになると思えるのだ。
一方、その乗り心地は軽自動車の延長線上にあるような感じであった。ダイハツディーラーでは軽からのステップアップ組も多いであろうから、抵抗感はむしろ少ない……か?
![]() |
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2005年12月に発売された「トヨタbB」の兄弟車として、2006年5月8日にデビューしたのが「ダイハツ・クー」。いずれもダイハツの工場で生産される。若者向けをアピールする「bB」と差別化を図り、ヤングファミリー/ヤングミセスをターゲットとする。エンジンラインナップはbB同様、1.3と1.5の2本立て。トランスミッションは全車4段ATで、前輪駆動の他、4WDも用意される。1.5リッターモデルにのみ、車両安定性を制御するVSCがオプション装備できる。
(グレード概要)
テスト車の「CX-Limited」は、1.5リッターの上級グレード「CX」にエアロパーツその他を追加装備。すなわちリアスポイラー、サイドストーンガード、ディスチャージヘッドランプ、MOMOステアリングなどが付与される。15インチタイヤ/アルミホイール、6スピーカーなども標準で備わる。bBと違い、プラズマクラスターエアコンを採用したところも注目。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
スカットル位置が高く窓の天地が薄いため、視界の広さは全高から期待されるほどではない。フロントバンパー下部が張り出した形状のため、ボディの見切りもいまひとつ。
ファミリーユースとしては、ダッシュパネル付近の物入れがもう少し欲しいところ。内装が(bBと同じ)ブラックしかないのも寂しい。
(前席)……★★★
凹凸のないフラットな形状のシートは、ボディのスクエアな印象とあっているし、インテリアの広さ感も演出している。シート生地は若干ムレやすく感じた。
bBのマッタリモードがなくなった代わりに採用された「シートリフター」「アンダートレイ」はスペースの有効活用だけでなく、コンセプトに見合った装備として好ましく感じた。
(後席)……★★★
240mmスライドするリアシートは、足を組むことができるぐらいに広い足下スペースをうむ。頭上の空間も十分で、居心地は悪くない。ただ、乗り込んで座るまでは気持ちいいのだが、走り出すとその乗り心地は少々期待はずれ。リアシートのリクライニングもリラックスできそうなのだが、フラットな座面が体を抑えてくれず、走っているうちにおしりが前にずれてくる。
(荷室)……★★★
リアシートを一番後ろまで下げると、荷室奥行きは490mmしかなく、大物の積み込みは不可。ハッチゲートを閉めたまま後部座席から物を投げ入れる使い方しかできない。もちろんリアシートのスライドを前にすることで、730mmの奥行きが生まれるほか、各種シートアレンジで長尺物の収納も可能。とはいうものの、荷室床面は地上から680mmと高めで、女性の荷物の積み卸しには難儀しそうだ。ハッチゲートにぶらさがるヒモをひっぱって閉めるという作りは、シンプルで好感が持てる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
1070kgのボディを引っ張るには、1.5リッターユニットのパワーは十分。山道に入っても、手動での変速をうまく使うことで、とりたててストレスを感じない走りができる。コラムシフトがステアリングから近く、操作がしやすいのもマル。ただし、エンジン音を含め、遮音性が低いのが気にかかる。大人4人乗車ともなるとエンジンは騒がしくなるし、ロードノイズもかなり進入してくるので、ヤングファミリーが楽しく移動するには、ゆったり走ることをオススメする。
(乗り心地+ハンドリング)……★★
乗り心地は褒められたものではない。90km/hぐらいで一番安定感がでるが、町乗りでは細かい路面の凹凸もダイレクトに体に伝え、高速道路ではピッチングが激しくなる。
コーナーでステアリングホイールを切ると、ボディ剛性の低さも現れ、タイヤから上屋へと足もとから時間差でアプローチするような動きを見せる。足回りのセッティングもピシッとせず、コーナリング中もふらふらと不安定だ。さらに先にも書いたフラットなシート形状のおかげで、必要以上に体が動き、不安感がでたことも付記しておく。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:webCG本諏訪裕幸
テスト日:2006年6月15日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2006年型
テスト車の走行距離:1567km
タイヤ:(前)185/55R15(後)同じ(いずれもヨコハマ ADVAN A-043)
オプション装備:VSC(6万3000円)/SRSカーテンシールドエアバッグ&SRSサイドエアバッグ(6万3000円)/HDDナビゲーションシステム(27万900円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:高速道路(7):山岳路(3)
テスト距離:140.8km
使用燃料:13リッター
参考燃費:10.8km/リッター

本諏訪 裕幸
-
ランボルギーニ・ウルスSE(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.3 ランボルギーニのスーパーSUV「ウルス」が「ウルスSE」へと進化。お化粧直しされたボディーの内部には、新設計のプラグインハイブリッドパワートレインが積まれているのだ。システム最高出力800PSの一端を味わってみた。
-
ダイハツ・ムーヴX(FF/CVT)【試乗記】 2025.9.2 ダイハツ伝統の軽ハイトワゴン「ムーヴ」が、およそ10年ぶりにフルモデルチェンジ。スライドドアの採用が話題となっている新型だが、魅力はそれだけではなかった。約2年の空白期間を経て、全く新しいコンセプトのもとに登場した7代目の仕上がりを報告する。
-
BMW M5ツーリング(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.1 プラグインハイブリッド車に生まれ変わってスーパーカーもかくやのパワーを手にした新型「BMW M5」には、ステーションワゴン版の「M5ツーリング」もラインナップされている。やはりアウトバーンを擁する国はひと味違う。日本の公道で能力の一端を味わってみた。
-
ホンダ・シビック タイプRレーシングブラックパッケージ(FF/6MT)【試乗記】 2025.8.30 いまだ根強い人気を誇る「ホンダ・シビック タイプR」に追加された、「レーシングブラックパッケージ」。待望の黒内装の登場に、かつてタイプRを買いかけたという筆者は何を思うのか? ホンダが誇る、今や希少な“ピュアスポーツ”への複雑な思いを吐露する。
-
BMW 120d Mスポーツ(FF/7AT)【試乗記】 2025.8.29 「BMW 1シリーズ」のラインナップに追加設定された48Vマイルドハイブリッドシステム搭載の「120d Mスポーツ」に試乗。電動化技術をプラスしたディーゼルエンジンと最新のBMWデザインによって、1シリーズはいかなる進化を遂げたのか。
-
NEW
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性
2025.9.5デイリーコラムあのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。 -
NEW
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。 -
NEW
新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代
2025.9.4デイリーコラム24年ぶりにホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。ベテランカーマニアには懐かしく、Z世代には新鮮なその名前は、元祖デートカーの代名詞でもあった。昭和と平成の自動車史に大いなる足跡を残したプレリュードの歴史を振り返る。 -
NEW
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】
2025.9.4試乗記24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。 -
第926回:フィアット初の電動三輪多目的車 その客を大切にせよ
2025.9.4マッキナ あらモーダ!ステランティスが新しい電動三輪車「フィアット・トリス」を発表。イタリアでデザインされ、モロッコで生産される新しいモビリティーが狙う、マーケットと顧客とは? イタリア在住の大矢アキオが、地中海の向こう側にある成長市場の重要性を語る。 -
ロータス・エメヤR(後編)
2025.9.4あの多田哲哉の自動車放談長年にわたりトヨタで車両開発に取り組んできた多田哲哉さんをして「あまりにも衝撃的な一台」といわしめる「ロータス・エメヤR」。その存在意義について、ベテランエンジニアが熱く語る。