スバル・レガシィ ツーリングワゴン2.0GT spec.B(4WD/5AT)【ブリーフテスト】
スバル・レガシィ ツーリングワゴン2.0GT spec.B(4WD/5AT) 2006.06.29 試乗記 ……379万5750円 総合評価……★★★ 2リッターターボに固めた足と18インチタイヤ……レガシィ・シリーズでもっともスポーティな「GT spec.B」。マイナーチェンジで得た新機構「SI-DRIVE」以外に、瞠目するトコロがあった。 |
走りだけじゃない!環境性能もチェンジ
大規模なフェイスリフトを伴うモディファイを“マイナーチェンジ”。そうではなく、カタログスペックにも現れにくいリファインをメインとしたものを“一部改良”と呼ぶ――どうやら日本の自動車界にはそうした不文律(?)があるようだ。
デビューから丸3年で実施された現行レガシィ・シリーズのリファインは、開発に携わった人々もが「マイナーチェンジ」と表現する大規模なもの。たとえば前後バンパーやランプなど、比較的デザイン変更の容易な樹脂パーツ類だけではなく、キャラクターラインをより明確にアピールするためにフロントフェンダーのパネル形状自体も変更……などというトピックにも、今回のリファインに対する“気合いの入りよう”がうかがえるというものだ。
こうして、今回の“マイナーチェンジ”のメニューは多岐に渡るが、ひとつ特徴的なのは狙い所に「環境性能の充実にも重きを置いた」ということ。レガシィをはじめとしたスバル車は、これまでいずれも“走り”のポテンシャルの高さがクローズアップされがちであった。が、ここにきてそんなコメントが聞こえるのは、やはり最新の時代性にキャッチアップすることが最近のスバルでも大きなテーマになっている、という事実の現れであろうか。
|
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「レガシィ」は、言わずと知れたスバルの基幹モデル。現行モデルは、2003年5月23日にフルモデルチェンジした4代目で、3ナンバーサイズになりながら、先代と比べて約100kgの軽量化を施したボディを目玉に、中低回転域のトルクを向上させたエンジンや5ATの採用、細かいところではブレーキペダルのフィールを高めるパーツを採用するなど、スバルらしいエンジニアリング主導の改善が数多く施された。ボディサイズは、全長×全幅×全高=4680×1730(+35)×1470(-15)mm(2.0GT、カッコ内は先代比)、ホイールベースは先代より20mm延長され、2670mmとなった。
2006年5月、内外装のみならず、エンジンやボディにまで手を加える大幅なマイナーチェンジを実施。エクステリアはフロントマスクを中心に変更したほか、インテリアはシート形状を変更。ターボ車と3リッターモデルには、左右独立式エアコンと、ステアリングホイールの前後位置を調節できるテレスコピック機構が与えられた。
機関面での注目は、2リッターターボと3リッター車に与えられた「SI-DRIVE(Subaru Intelligent DRIVE)」。これは、「スポーツ」「スポーツ#」「インテリジェント」の3つのモードを任意に選択し、エンジン出力やスロットル特性を変化させることができるというもの。ほかに、足まわりの剛性などが高められた。レガシィシリーズでは3リッターにのみ設定されていた6MTが、「spec.B」に設定されたことも新しい。
(グレード概要)
「2.0GT spec.B」は、同じターボエンジンを積む「2.0GT」の上をいく、レガシィ・ツーリングワゴンのトップグレード。ビルシュタイン製ダンパーを装着するのは2.0GTと同じだが、spec.Bは215/45R18サイズのタイヤを履く。ホイールデザインが変更され、18インチは10スポークタイプとなった。
上級、かつもっともスポーティなグレードだけに、上記のSI-DRIVEや左右独立エアコン、テレスコピック機構などは標準で備わる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
「加飾パネルなどにより質感、機能性を高めながら、安心感のある室内空間を演出」、資料ではそう説明されるマイチェンを行ったインテリア。なるほど、ダッシュボード中央を左右に走る「航空機の翼をモチーフにした」という光り物パネルや、大型2連カップホルダーを備えるセンターコンソールの造形などが目新しい。が、それでもインパネやシートの基本的デザインが変わったりはしていないので、全体的な雰囲気は従来型からさほど大きく変化をしたとは思えないが。
変わった、変わってないにかかわらず、レガシィのインテリア質感は、もとからなかなかに高い。あまり話題にならないが、それは「定評あるトヨタ車のそれを凌ぐのではないか」とさえ思えるものだ。テスト車には、マッキントッシュのオーディオやヒーター付きドアミラーなどのオプションが装着されていたが、やはりメーカーオプションで装着のHDDナビの使い勝手は優れているとはいいがたい。最も高頻度で使う縮尺変更スイッチが「小さくてレイアウトが悪いために“命中度”が低い」など、タッチ式スイッチの操作性に問題があるのが残念だ。
(前席)……★★★★
レガシィのドライバーズシートに座りドライビング・ポジションを決めると、いつもなぜかホッとする。やはりボディのサイズ感が「日本という国に合っているナ」と感じられるし、ショートノーズのプロポーションを強調するためAピラーを無理矢理前に出し、そのために運転視界が犠牲になる……といった本末転倒な不自然さを感じなくてすむからだ。
シートそのものはサイズや面圧分布も適切で、日本車のシートのなかでは文句なく“上”の部類に入るという印象。フロントのパワーシートは相変わらずドライバー側にしか用意されないが、「両席ともにパワー仕様が欲しい」という声はないのだろうか? ステアリングに40mmのストロークで調整可能なテレスコピック機能が付いたのは朗報だ。
(後席)……★★★
「3リッター車のアームレスト前端にカップホルダーを設置」という以外、リアシートに関しては新しいニュースはない。サイズや着座感は「可もなく不可もなく」という印象。センター・アームレストを引き出すとそれが随分と薄っぺらいのは見かけ上ちょっと物足りない。
荷室拡大時のアレンジ方法も従来通りに「シートバック部分のみが前倒れする」というもの。上級グレードたる「GT spec.B」には、そうした動きをラゲッジスペース・サイドのスイッチで自動に実現させる“ワンタッチ・フォールディング機構”が標準装備となる。
(荷室)……★★★
まるで“キャビンの一部”のごとく仕上げられた質感は上々だが、標準装備のトノカバーを引き出すと、意外にもその高さ方向の寸法が外観から察するよりもずっと少ないことに気付く。テールゲート開口部下端とフロア高さが揃えられ、さらに前倒ししたリアのシートバック背面とも“ツラいち”の関係を実現させたことによる影響が大きい。もっとも宅配システムが完備し、購入した大きな家具をそのまま持ち帰るようなシーンが稀な日本では、これでも十二分なユーティリティ性の持ち主と理解できるが。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
今回のマイナーチェンジの目玉的存在が、ターボ車と3リッター6気筒車に標準の「SI-DRIVE」。電子制御スロットルの線形やエンジン・コンピュータ、AT車ではシフトプログラムなどを、センターコンソール上に設けられたダイヤル式スイッチで操作することで、「3つの走行性能を1台で使い分けられる」(カタログより)というのが売りの新デバイスだ。
デフォルト位置の「S(スポーツ)」モードでは、その動力性能はたしかに従来車と同等という印象。一方、ダイヤルを右回し、もしくはステアリング・スイッチの1タッチで選択可能な「S#(スポーツシャープ)」モードでは、なるほど特に半開時までのアクセルゲイン(ペダル踏み込み量に対する出力の現れ)がシャープになり、アップシフトのポイントが遅れ気味(高回転寄りでシフト)になるのを明確に実感する。
さらに、ダイヤルをプッシュしての「I(インテリジェント)」モードでは、ターボ圧やスロットル線形などから「最高出力を2リッターの自然吸気DOHC車と同等」までに抑え込み、それにより実用燃費を大幅向上させるという狙いだ。もっとも、トルク線図上では上側がカットされるのみで、下側を膨らませるといった細工がないのは残念。モードによってより低回転トルクが膨らんだり、「S#」ではオーバーブースト機能が働いたりすれば、より“本物感”が強かったのだが。
それにしても、シフトショックの大きさは相変わらずで、もはやレガシィ・シリーズのウィークポイント。今回も改善が見られなかったのは、ジャトコ製AT本体の問題か。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
実は今回のマイナーチェンジで最も“改善効果”が大きいと感じられたのが18インチタイヤ装着車の乗り心地に関してだった。従来は路面凹凸を直接的にパッセンジャーへと伝え、いかにも「18インチを履きこなしていないナ」と思えたそのテイストが、今回大きく改善された。
どのような路面でもしなやか……と表現できるまでには至っていないが、それでも直接的な衝撃感はグンと薄れ「タイヤが勝ち過ぎの印象」は随分薄くなった。エンジニア氏に聞けば、そんな印象の変化はサスペンションのリファインというよりも「サスタワー周りなど、フロント側を中心としたボディ補強が効いている」とのこと。それに要した重量はおよそ3kgだという。この「重量 対 フィール改善効果比率」(?)は随分なものなのだ。
路面状況を濃厚に伝えてくれるステアリング・フィールや、4輪の接地感のたしかさなど、これまでのレガシィの美点はもちろんそのまま継承されている。「レガシィ買うなら17インチ」、これまではそう思っていたが、新型ならば十分に迷う価値がありそうだ。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:河村康彦
テスト日:2006年6月19日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2006年型
テスト車の走行距離:3933km
タイヤ:(前)215/45R18(後)同じ(いずれもブリヂストン・ポテンザRE050A)
オプション装備:濃色ガラス+クリアビューパック+HDDナビシステム+マッキントッシュ・サウンドシステム(49万8750円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1):高速道路(6):山岳路(3)
テスト距離:366.3km
使用燃料:51.3リッター
参考燃費:7.14km/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
クルマの乗り味の“味”って何だ?
2026.1.20あの多田哲哉のクルマQ&A「乗り味」という言葉があるように、クルマの運転感覚は“味”で表現されることがある。では、車両開発者はその味をどう解釈して、どんなプロセスで理想を実現しているのか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.1.20試乗記「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は? -
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。






























