アルファロメオ・アルファスパイダー(6MT)【ブリーフテスト】
アルファロメオ・アルファスパイダー(6MT) 2004.05.07 試乗記 ……492万4500円 総合評価……★★★★ 長いモデルライフを誇る「アルファスパイダー」。フェイスリフトを受け、3.2リッター「GTA」V6を積んだ最新仕様に、別冊CG編集室の道田宣和が乗った。
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円熟の極み
アルファロメオのオープンモデルは概して息が長い。先代の「スパイダー」は、「デュエット」の名でデビューしてから実に28年の長きにわたって生きながらえたし、代わって登場した新世代スパイダーも、1994年のデビュー以来すでに10年が経過した。
技術革新の激しい現代にあってはそのこと自体が稀だが、その間当然のように襲いかかってくるメカニズムの旧態化に対して、大小様々な改良で対抗してきた。主なところではエンジン、とりわけ“名機”の誉れ高いV6への切り替えや、ソフトトップの電動化などがそれ。細かいところでは、時代の進歩に合わせてデュアルエアバッグやEBD付きABSなども随時採り入れてきた。
機械は旧態化しても、デザインがまったくといっていいほど陳腐化しなかったことが、このクルマのエライところだ。結果としての最新型は、マイナス要素をプラス要素が十二分に補っており、おそらくこのクルマのモデルスパンを通じて、もっとも熟成された状態にある。そんな絶頂期のスパイダーを今日堪能できるわれわれこそ、果報者と言うべきかもしれない。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「10年の風雪に耐えた」スタイリングはピニンファリーナの作品。2003年には他のモデルにならってよりアルファらしいアイデンティティを付与すべく、(おそらくはチェントロスティレ=社内のデザイナーによって)伝統の盾型グリルを文字どおり前面に押し出したフェイスリフトが実施された。ただし、ボディサイドには依然ピニンファリーナのバッジが誇らしげに付いたままだ。全長(とついでに全高)が5mm伸びたのは、盾が大きくなったためである。これでますます人目を惹くようになったものとみえ、全8色が用意されるなかでもひときわ色鮮やかな「アルファレッド」(ソリッドカラー)に塗られたテスト車は、まるでデビューしたてのスーパーカーのように行く先々で注目を浴びた。イタリアンダンディズムの真骨頂である。
マイナーチェンジはそれに留まらなかった。2002年に2リッターツインカム4気筒「ツインスパーク」(155ps)から、3リッターV6DOHC24バルブ(220ps)へと大変換を遂げたばかりのエンジンは、さらに現行アルファのラインナップ中最強を誇る3.2リッター「GTAエンジン」に進化した。ただし、ピュアスポーツというよりはファンカーとしての性格が強いスパイダーの性格に合わせて、チューンは若干おとなしい。絶対的なパワーは「156/147GTA」より10ps低いが、それでも3リッターに比べて20psと1.9kgm増しの240ps/6200rpmと29.4kgm/4800rpmを得ている。対する車重は20kg増の1470kg。ファイナルレシオはなぜか5%弱低められたが、マニュアル6段のみが用意されるギアボックスは、6速だけがわずかにローギアード化されたほかは変化ない。
(グレード概要)
日本仕様はグレードを含めて上記1車種のみ。ステアリング位置は右しか用意されず、オプションもエクストラチャージとしてメタリック(6万8250円)/パール(28万3500円)ペイントの価格が掲げられているだけだ。そのかわり、装備は最初からかなりの豪華さで、全車レザーのシート/ステアリング/シフトノブを持つほか、オートエアコン、CDチェンジャー付きステレオなどが備わる。タイヤ/ホイールは、3リッターの205/50R16から225/45ZR17にサイズアップされただけでなく、OEタイヤのメイクが同じグッドイヤーでも「イーグルトゥーリング」から「イーグルF1」へと高性能化された。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
ひとことでいえば古典的なコクピット、この言葉に集約されるだろう。彫りの深いメーターナセルは「敢えてパセンジャーの干渉許さじ」の雰囲気濃厚で、ダッシュボードから手前に向かって大きくスロープしたT字型のコンソールとともにドライバー専用の空間を創り出す。建築でいえば流行の“DEN”(書斎)、男が独り逃げ込む隠れ家だ。
一方で、10年選手ならではの古臭さも散見される。ドアミラーは電動だが格納はされず、エアコンはいまや「147」などの弟分までが左右席を別個に温度設定できるデュアルモードなのに対してシングルどまり、ライトやワイパーをはじめとするスイッチ類は昔のままでいささかプラスチッキーな感があるといった具合である。
(前席)……★★★★
普段は開放感と実用性の最適な妥協として、サンルーフがベストだと思っている筆者も、こうして久々にフルオープンの世界に浸かってみると、やはりこの爽快感には抗しがたいものがある。時恰も春たけなわ。ウィンドシールド上端のキャッチを解き、わずか25秒のスイッチ操作で開閉するトップを下ろすとすべてが一変する。特にこの時期は夜がいい。木の芽の香りを運ぶ風は適度に身を引き締まらせ、足元からはヒーターの熱がふんだんに溢れて炬燵で暖をとる趣だ。桜並木を軽く流せば、普段は聞こえない歩道のさんざめきが後ろから聞こえてくる……。まさに春宵値千金である。
むろん、これはアルファのスパイダーに限った話ではないが、オープンモデルとしての華やかさ、演出の妙は、さすがに手慣れたものがある。その最たるものが色遣いだ。テスト車のレザーシートは赤のエクステリアに合わせた、「タンゴベージュ」なるちょっと煤けたブラウン。これはこれでイタリアの皮革製品を想わせる伊達な配色だが、ブルー系やグレー系のボディカラーには一転して眩しいくらいの「ヘレスレッド」や「パックホワイト」が内装色として組み合わされ、ハッとするくらいの艶やかさだ。しかも、シートの形状とステッチを微妙に変えた今回はいままで以上にしっくりと身体に馴染むのが嬉しい。このクルマのドライバーズシートに座った人間はきっと耳元で「主役はあなただ!」と囁かれているように感じることだろう。
乗車定員2名のスパイダーには後席がない。ただし、前席背後にはあたかもプラス2シートが存在するかのような雛壇状のスペースが確保され、フットウェルもちゃんとあるから、法さえ許せば子供の1人や2人は乗れそうである。むろん、本来の目的は容量の限られたトランクを補うための空間に違いなく、その意味での使い勝手も優れる。フットウェルや棚には手持ちの荷物をポンと放り込んでおけるし、立派なフェルト張りの棚にはカギ付きのリッドが備わっており、人目に曝したくない貴重品もここに収めておきさえすれば幌を立てなくても安心だからである。
(荷室)……★★
際立つカッコよさと完全自動で開閉する内張付きのソフトトップ。この2つを両立させてなお、人並みのトランクを確保するのは至難のワザである。したがって、リッドを開けてみると「MINI」より小さく(VDA法による計測で150リッター対147リッター)、奥行きの狭い空間があるばかり。スーツケースのような大物が入らないのは当然だが、かといってまったく役に立たないわけでもない。中央部分に限れば床は案外な深さがあり、最初から諦めずに、入るかどうか試すくらいの価値はありそうだ。それにトランクだからといって手を抜かず、ここでもフェルトで完全にトリムされているのがいかにも高級車であり、気持ちがいい。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
これならオートマチックの用意がないのも納得できる──3リッター以降のスパイダーに乗って、いつも強く感銘させられることのひとつである。言い方を換えれば、これほど乗りやすく、これほどイージーなマニュアル車もすくないはずだ。3.2リッターに増強されてますますその感が深まった。
なにしろ、あり余るほどのトルクがどのギアでもアイドリングをほんのすこし上まわる程度の低回転を可能にし、その気になればギアチェンジそのものを大幅にサボれる一方、ものの3000rpmも回せば例の官能的なV6サウンドがコクピットを満たしつつ、タコメーターの針が6200rpmのピークめがけてまるで小排気量ユニットのように、一気に、軽々と吹け上がるのである。目から鼻に抜ける才気煥発さと寛容さを併せ持つこのエンジン、まさに名機と呼ぶに相応しい。
クラッチの踏力自体もまるで苦にならない重さだ。ギアリングもちょうどいい。メーター100km/hは、6速2400rpmで、高すぎも低すぎもせず、そのままでも充分な加速を披露する。あるいは、1段、2段落として豪快なダッシュに移るのも自由自在だ。ストロークこそ長めだが、チェンジの正確さと速さも問題ない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
開口部の大きなオープンボディ、古い設計、そしてパワーが増大したぶん大きくなった車内外からの入力。この“三重苦”を前にして、セダン並みの剛性が保てたら奇跡というものだ。したがって、走行中はボディのあちこちから微細な音や振動が看取されるのは、ある程度やむを得ないところ。むしろカタカタ、ゴトゴトといった、主として艤装部分を音源とするラトル音の範囲に留まっているのが幸いだ。すくなくとも路面からの強い入力でハンドリングが影響を受けたりするほどではない。
操縦性そのものはフロントヘビーでアンダーが強めだが、そのぶんスタビリティは充分。タイヤのグレードアップによる乗り心地への悪影響はほとんどなく、もっぱらコーナリングパワーの増大というメリットだけを享受している。ステアリングは確実だが、小まわりが利かない点はアルファ共通の悪癖だ。
(写真=峰 昌宏/2004年5月)
【テストデータ】
報告者:道田宣和(別冊CG編集室)
テスト日:2004年3月19日〜25日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:14465km
タイヤ:(前)225/45ZR17(後)同じ(グッドイヤー・イーグルF1)
オプション装備:--
形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(7):高速道路(3)
テスト距離:375km
使用燃料:69.0リッター
参考燃費:5.4km/リッター

道田 宣和
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