MINI クーパーS ジョンクーパーワークス(FF/6MT)【試乗記】
プレミアムスポーツコンパクト 2006.04.26 試乗記 MINI クーパーS ジョンクーパーワークス(FF/6MT) ……460万4355円 MINIのチューナーは数あれど、それと知られたジョン・クーパー・ワークス(JCW)。メーカー純正のJCWキットに加え、あまたあるオプションを装着した“スペシャルMINI”のお味やいかに?格の違うコンパクトカー
ミニ・クーパーSの価格は6速MT仕様で282万4500円。これに57万7500円のジョン・クーパー・ワークス(JCW)キット“だけ”を装着すると、価格は約340万円である。が、試乗車にはもろもろのアクセサリーが備わっており、お値段、なんと約460万円にもなる。ふたクラス上のBMW320iMスポーツより高い数字だ。
「なぜそんなに高いのか?」そのワケは、試乗車が多様に用意されたMINIのオプションパーツをてんこ盛りに装着した仕様だったからだ。とはいえ、カーボンファイバー製のリアウイングやインパネ、レカロシートなどは必要ないからと、オプションをすべて選ばなかったとしても、340万円ぐらいになることは、先に述べた。この日いっしょに試乗したフォルクスワーゲン・パサートのベーシックグレード「2.0」を上回ってしまう。
長さは3700mmに満たず、幅は5ナンバー枠に収まり、リアシートやラゲッジスペースが広いわけでもない小さな2ボックスが340万円もするとは! こう考える人は、このクルマのターゲットユーザーではないのかもしれない。
たとえばベントレーのコンチネンタル・フライングスパーあたりをポンと買えるような人が、街なかや峠道を小気味よく走れるコンパクトカーを、サードカーあたりとして欲しいときに、このJCWはおすすめかもしれない。“ミニ・クーパーの美味しい要素が全部入り”といえる内容は、格の違うコンパクトカーを望む人たちに最適だから。
JCWのスゴイところ
ノーマルでも170psをマークするスーパーチャージャーつき1.6リッターエンジンをベースに、シリンダーヘッド、エキゾーストシステム、スーパーチャージャーを換え、コンピュータのリセッティングを行うことで得られたパワーは、210ps。このクラスでは唯一の200ps超えだ。対する車重は1180kgにすぎない。ふつうのクーパーSには6速ATも用意されるが、JCWはそのパワーとトルクに耐えられるATがないとのことで、MTのみの設定だ。
どんなにお金があっても、腕がともなっていないと、こんなスペックのクルマは扱いきれないのでは? と思う人もいるだろう。でも実際は、そんなことはない。MTを運転できて、重いクラッチを苦にしない人なら、問題なく走れる。
210psのパワーは、たしかに衝撃的だ。自然吸気エンジンではないから、低回転から強烈なトルクを炸裂させるわけではないけれど、3000rpmあたりから上では、アクセルを深く踏んだ瞬間に、頭がヘッドレストに叩きつけられる。どこへ飛んでいくかわからないような勢い。その勢いが高回転まで際限なく続いていくところが、JCWのすごさである。
アクセルオンでのエキゾーストサウンドとスーパーチャージャーの唸り、アクセルオフでマフラーの中で排気がボコボコと弾ける音も、エクストラワイルド。チューニングカーっぽさ満点だ。
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乗り心地のいい、チューンドカー
そんな具合だから、あいにく雨のなかでの試乗となった今回の場合、全力を出しきることなどできなかった。ガシッとした重みを返すステアリングを切って、ミニらしいゴーカートのようなキビキビした身のこなしを味わうには、アクセルをなでるぐらいがちょうどいい。
でもアクセルを踏みすぎて、前輪が暴れ出そうとしても、すぐにDSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)がサポートしてくれる。メーターの中のインジケーターは元気に点滅しまくるけれど、危ない状況にはならずにすむ。お母さんに見守られたやんちゃ坊主という感じだ。
乗り心地もいい。タイヤサイズが195/55R16とノーマルだったおかげもあるし、意外にふっかりした座り心地の、厚みのあるスポーツシートのおかげもあるが、固いけれどぜんぜんビシビシこない。小さなボディに210psを組み合わせておいて、この快適性……加速性能と同じぐらい、すごいと思った。
チューニングカーっぽい荒々しさを演出としては感じさせながら、実際の走りは高度にソフィスティケーテッドされている。ジョン・クーパーという名前でノスタルジーをアピールしておきながら、中身はBMWのMシリーズを思わせる完成度の高さ。ホットハッチなんていう子供っぽい表現でなく、JCWはプレミアムスポーツコンパクトと呼ぶべきクルマなのである。
(文=森口将之/写真=峰昌宏/2006年4月)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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