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MINIクーパー3ドアSE(FWD)

大人の(ゴーカート)フィーリング 2024.10.29 試乗記 生方 聡 最高出力218PS、一充電走行距離402kmを掲げる電動パワートレイン搭載の「MINIクーパー3ドアSE」に試乗。伝統の3ドアモデルにラインナップする最新の電気自動車バージョンにも、ファンが期待する“らしさは”あるのか。その仕上がりをチェックした。
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そっくりだけど意外と違っている

MINIといえば、真っ先に思い浮かぶのはこの3ドアモデルで、BMW製としては4代目となる最新版では、内燃機関(ICE)車と電気自動車(BEV)が併売されるのはご存じのとおりだ。

ICE車とBEVの見分け方は意外と簡単で、フェンダーにコントラストカラーのモールがつくのがICE版だ。しかし、よく見ると、ICE版のドアハンドルがグリップ式なのに対して、BEV版は空気抵抗の低減を考えてフラッシュドアハンドルを採用しているし、ボンネットの開き方もまるで違っている。

ホイールベースもICE版の2495mmに対して、BEV版は2525mmと30mm長く、一見そっくりだが、意外に違いが多いことに気づく。それでも、ひと目でMINIとわかるデザインに仕上がっているのは言うまでもない。

BEV版のクーパー3ドアには、搭載されるモーターとバッテリーの違いにより「E」とSEの2グレードが用意される。

エントリーグレードのクーパー3ドアEには、最高出力184PS(135kW)のモーターと容量40.7kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーが組み合わされる。一方、上級グレードのクーパー3ドアSEでは218PS(160kW)のモーターと54.2kWhのバッテリーが搭載される。航続距離はそれぞれ344kmと446km。今回はより高性能なSEをテストに引っ張り出した。

2024年3月1日に日本導入が発表された新型「MINIクーパー3ドア」。車名の“クーパー”は、従来型ではミドルレンジモデルに用いられるグレード名だったが、最新世代よりモデル名の一部となった。
2024年3月1日に日本導入が発表された新型「MINIクーパー3ドア」。車名の“クーパー”は、従来型ではミドルレンジモデルに用いられるグレード名だったが、最新世代よりモデル名の一部となった。拡大
今回試乗したBEV「MINIクーパー3ドアSE」の車両本体価格は531万円。リアまわりに電動モデルであることをわかりやすく示すエンブレムなどはないが、「S」のロゴがICE車は赤、BEVは明るいグリーンとされ、容易に識別できる。
今回試乗したBEV「MINIクーパー3ドアSE」の車両本体価格は531万円。リアまわりに電動モデルであることをわかりやすく示すエンブレムなどはないが、「S」のロゴがICE車は赤、BEVは明るいグリーンとされ、容易に識別できる。拡大
「MINIクーパー3ドアSE」のフロントフェイス。グリルの中央に位置するボディー同色のバンパーは、面積がICE車よりも広く、その上側がふさがれている。アダプティブLEDヘッドランプは、「MINIクーパー」全車に共通する標準装備アイテム。
「MINIクーパー3ドアSE」のフロントフェイス。グリルの中央に位置するボディー同色のバンパーは、面積がICE車よりも広く、その上側がふさがれている。アダプティブLEDヘッドランプは、「MINIクーパー」全車に共通する標準装備アイテム。拡大
最高出力218PS、最大トルク330N・mの電動モーターをフロントに搭載し、前輪を駆動する「MINIクーパー3ドアSE」。ボンネットの開口面積がICE車よりも狭い。
最高出力218PS、最大トルク330N・mの電動モーターをフロントに搭載し、前輪を駆動する「MINIクーパー3ドアSE」。ボンネットの開口面積がICE車よりも狭い。拡大
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ぬくもりを感じるインテリア

シンプルさに徹しながら、懐かしさと新しさが共存するMINIクーパー3ドアSEのエクステリアデザインにはあらためて感心する一方、シンプルさをきわめたインテリアの変わりようには驚くばかりだ。

従来のMINIは、せり立ったダッシュボードに丸いセンターディスプレイとトグルスイッチが並ぶデザインがメカ好きの心をくすぐったが、最新版では、明るいファブリック素材がぬくもりを感じさせ、これまでのようなダッシュボードの威圧感がすっかり薄れている。これをさびしいと思う人は少なくないだろうが、一方、私はこの雰囲気が好きで、安っぽさとは無縁なのもうれしいところだ。

円形センターディスプレイはその大きさに驚かされるが、ガラスでカバーされることもあって、上手に上質感を演出している。ただ、最近増えてきたとはいえ、中央にメーターがあるのは視線移動が増えて面倒かと心配していたが、ステアリングホイールの先にヘッドアップディスプレイが配置されることで、運転に必要な情報を常に視界の中に捉えることができ、とくに不便を感じることはなかった。

センターパネルにはパワートレインのオン/オフスイッチやシフトセレクター、そして、走行モードとインテリアの雰囲気が変更できるスイッチが並び、使用頻度が高いシフト操作もすぐに使い慣れた。

コックピットでは、センターに配置された円形の9.4インチ有機ELディスプレイや、リサイクルポリエステルを用いた布地を思わせる新素材で覆われるダッシュボードが目を引く。
コックピットでは、センターに配置された円形の9.4インチ有機ELディスプレイや、リサイクルポリエステルを用いた布地を思わせる新素材で覆われるダッシュボードが目を引く。拡大
円形のタッチ式有機ELディスプレイには、速度計やバッテリー残量表示のほか、AR(拡張現実)機能付きのナビゲーションシステムやマルチメディア、電話、エアコンなどの操作機能が盛り込まれている。写真は走行データを表示させた様子。
円形のタッチ式有機ELディスプレイには、速度計やバッテリー残量表示のほか、AR(拡張現実)機能付きのナビゲーションシステムやマルチメディア、電話、エアコンなどの操作機能が盛り込まれている。写真は走行データを表示させた様子。拡大
ダッシュボードの中央下部に、オーディオスイッチやパワーユニットのスタート/ストップスイッチ、シフトセレクター、「MINIエクスペリエンスモード」の切り替えスイッチなどが配置される。
ダッシュボードの中央下部に、オーディオスイッチやパワーユニットのスタート/ストップスイッチ、シフトセレクター、「MINIエクスペリエンスモード」の切り替えスイッチなどが配置される。拡大
「MINIクーパー3ドアSE」のボディーサイズは全長×全幅×全高=3860×1755×1460mm、ホイールベースは2525mm。ICE車よりも全長が15mm短く、全幅が10mm広く、全高が5mm高い設定になっている。
「MINIクーパー3ドアSE」のボディーサイズは全長×全幅×全高=3860×1755×1460mm、ホイールベースは2525mm。ICE車よりも全長が15mm短く、全幅が10mm広く、全高が5mm高い設定になっている。拡大

多彩なドライビングプログラム

MINIクーパー3ドアSEには、「GO-KART」「TIMELESS」「CORE」「GREEN」という3つの走行モードと、「CORE」「VIVID」「TIMELESS」「PERSONAL」「BALANCE」という4つのエクスペリエンスモードが用意される。これらはセンターパネルの「EXPERIENCE」スイッチで変更が可能だ。

まずは標準のTIMELESSを選び動き出すと、想像以上に力強い加速が得られ、アクセルペダルに対する反応もBEVならではの鋭さだ。街なかはもちろん、高速道路でもまわりをリードできるだけの速さを備えている。省エネモードのGREENではアクセル操作に対する反応が穏やかになるが、それでもストレスなく街なかを走行できるレベルだ。

MINIといえば“ゴーカートフィーリング”だけに、わくわくしながらGO-KARTに切り替えると、アクセルレスポンスはTIMELESSに輪をかけて鋭く、スポーティーさが際だつ。それでいて荒々しさはなく、“ゴーカート”よりも“スポーツ”といったほうがお似合いかもしれない。

TIMELESSとGO-KARTでは、人工的に合成した音で走りの興奮を高める「MINIサウンド」が利用できる。実際にMINIサウンドをオンにすると、アクセル操作に合わせてサウンドが高まるが、人工的な音づくりは、ゲームの効果音と思えば楽しめるのかもしれない。でも、サウンドによる演出よりも、音もなくぐんぐんスピードが上がっていくのがBEVの醍醐味(だいごみ)と考える私は、すぐにMINIサウンドをオフにしてしまった。そのほうがドライブにともなう疲れも軽く済むような気がする。

「MINIクーパー3ドアSE」には、「GO-KART」「TIMELESS」「GREEN」という3つの走行モードが用意される。写真はGO-KARTモードを選択したセンターディスプレイの画面表示。
「MINIクーパー3ドアSE」には、「GO-KART」「TIMELESS」「GREEN」という3つの走行モードが用意される。写真はGO-KARTモードを選択したセンターディスプレイの画面表示。拡大
今回の試乗車両には、有償オプションの「フェイバードトリム」と「Mパッケージ」も組み合わされていた。前者にはステアリングホイールヒーターや「ジョンクーパーワークスシート」などが、後者にはプライバシーガラスやシートの電動調整機能、harman/kardon製HiFiラウドスピーカーシステムなどが含まれている。
今回の試乗車両には、有償オプションの「フェイバードトリム」と「Mパッケージ」も組み合わされていた。前者にはステアリングホイールヒーターや「ジョンクーパーワークスシート」などが、後者にはプライバシーガラスやシートの電動調整機能、harman/kardon製HiFiラウドスピーカーシステムなどが含まれている。拡大
「ベスキンベージュ」と呼ばれる明るいインテリアカラーが選択された「MINIクーパー3ドアSE」のキャビン。後席は2人掛けで、乗車定員は4人となる。
「ベスキンベージュ」と呼ばれる明るいインテリアカラーが選択された「MINIクーパー3ドアSE」のキャビン。後席は2人掛けで、乗車定員は4人となる。拡大
今回試乗した車両は、8万2000円の有償色「ブレージングブルー」をまとっていた。ホワイトのルーフとミラーキャップは、無償オプションとして選択できる。フェンダーにコントラストカラーのモールがなく、アウタードアハンドルがフラッシュタイプなのもBEVの特徴だ。
今回試乗した車両は、8万2000円の有償色「ブレージングブルー」をまとっていた。ホワイトのルーフとミラーキャップは、無償オプションとして選択できる。フェンダーにコントラストカラーのモールがなく、アウタードアハンドルがフラッシュタイプなのもBEVの特徴だ。拡大

「BMW i」ゆずりの回生ブレーキ

MINIクーパー3ドアSEの回生ブレーキは、「BMW iX1」や「iX2」などと基本的な考え方は同じである。すなわち、Dレンジでは、設定メニューで「低」「中」「強」の3段階と、先行車両との距離などに応じて自動的に強さを調節する「アダプティブエネルギー回生」が選択可能だ。一方、Bレンジでは、「強」に相当する強めの回生ブレーキが得られるとともに、アクセルオフで車両を停止に至らせる“ワンペダルドライブ”が可能だ。多彩な選択肢が用意されるのはうれしいことで、しかも、シフトスイッチでDとBを切り替えることで、すばやく2つのパターンが使えるのはとても便利である。

MINIクーパー3ドアSEの走りについては、乗り心地は多少硬めで、路面によってはリアから軽いショックを拾うこともあるが、ショックのカドが取れているので、決して不快ではない。高速走行時のフラットさはいま一歩というところだが、それも気にするほどはない。

コーナーでステアリングを操作すると、俊敏さが感じられるのはMINIらしいところ。とはいえ、従来のICE版にくらべると穏やかな印象だ。それでも、EVならではのアクセルレスポンスの鋭さを生かすことで、スポーティーなドライビングが楽しめる。

全長3860mmの3ドアモデルだけに、後席やラゲッジルームには余裕がないが、普段は1人か2人で出かけるという人には、便利で楽しいMINIクーパー3ドアSE。これでコンバーチブルがあったら……なんて思うのは私だけではないはずだ。

(文=生方 聡/写真=花村英典/編集=櫻井健一)

「MINIクーパー3ドアSE」は容量54.2kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載。一充電走行距離は402kmと発表されている。普通充電ポートを左リアフェンダーに、急速充電ポート(写真)を、右リアフェンダーに配置する。
「MINIクーパー3ドアSE」は容量54.2kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載。一充電走行距離は402kmと発表されている。普通充電ポートを左リアフェンダーに、急速充電ポート(写真)を、右リアフェンダーに配置する。拡大
「18インチナイトフラッシュスポーク2トーン」ホイールは12万3000円の有償オプションアイテム。今回の試乗車は225/40R18サイズの「ミシュランeプライマシー」タイヤを組み合わせていた。
「18インチナイトフラッシュスポーク2トーン」ホイールは12万3000円の有償オプションアイテム。今回の試乗車は225/40R18サイズの「ミシュランeプライマシー」タイヤを組み合わせていた。拡大
後席使用時の荷室容量は210リッター。50:50の分割可倒式となるリアシートの背もたれをすべて前方に倒せば、荷室容量を最大800リッターに拡大することができる。最大容量はICE車よりも75リッター多い。
後席使用時の荷室容量は210リッター。50:50の分割可倒式となるリアシートの背もたれをすべて前方に倒せば、荷室容量を最大800リッターに拡大することができる。最大容量はICE車よりも75リッター多い。拡大
「MINIクーパー3ドアSE」の回生ブレーキは、Dレンジで「低」「中」「強」の3段階と、先行車両との距離などに応じて自動的に強さを調節する「アダプティブエネルギー回生」が選択できる。
「MINIクーパー3ドアSE」の回生ブレーキは、Dレンジで「低」「中」「強」の3段階と、先行車両との距離などに応じて自動的に強さを調節する「アダプティブエネルギー回生」が選択できる。拡大

テスト車のデータ

MINIクーパー3ドアSE

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3860×1755×1460mm
ホイールベース:2525mm
車重:1640kg
駆動方式:FWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:218PS(160kW)/7000rpm
最大トルク:330N・m(33.6kgf・m)/1000-4500rpm
タイヤ:(前)225/40R18 92V XL/(後)225/40R18 92V XL(ミシュランeプライマシー)
交流電力量消費率:133Wh/km(WLTCモード)
一充電走行距離:446km(WLTCモード)
価格:531万円/テスト車=592万5000円
オプション装備:ボディーカラー<ブレージングブルー>(8万2000円)/インテリアカラー<べスキンベージュ>(0円)/フェイバードトリム(16万4000円)/Mパッケージ(24万6000円)/18インチホイール<ナイトフラッシュスポーク2トーン>(12万3000円)/ホワイトルーフ&ミラー(0円)

テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:2962km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:294.1km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:6.9km/kWh(車載電費計計測値)

MINIクーパー3ドアSE
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生方 聡

生方 聡

モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。

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