アルファ・ロメオ・アルファ・ブレラ Sky Window 3.2 JTS Q4(4WD/6MT)【試乗記】
評価に悩む妖しい魅力 2006.06.23 試乗記 アルファ・ロメオ・アルファ・ブレラ Sky Window 3.2 JTS Q4(4WD/6MT) ……647万8500円 アルファ・ロメオならではのV6サウンドで人々を魅了した「GTV」。その後継といえる「ブレラ」のV6モデルは、GTVの官能を備えているのか? 駆動方式に4WDを採用した新しいアルファのV6クーペに乗る。名機との決別がもたらすものは?
日本に当初導入された、「ブレラ・スカイウインドウ2.2JTS」の走りっぷりは、なかなか大したものだ。シャープで懐深いステアリングの効きと十分なスタビリティは、FFスポーツとしての高いポテンシャルを感じさせる。「アルファ156」や「アルファGT」の演出過多な……そうするしかなかったことは理解するけれど……ハンドリングをどうにも好きになれなかった僕としては、「これでこそアルファだ!」と、喝采を送りたい気持ちにさせられたものである。
そうなると否応なく、トップグレード「スカイウインドウ3.2 JTS Q4」への期待も高まるというものだ。「アルファ156」まで長らく使われてきたアノ名機ついに決別して、新たに設計されたV型6気筒ユニットや、通常時でリアに57%のトルクを配分するフルタイム4WDシステムによって構築された、新しいアルファ・ロメオの走りの世界とは一体どんなものなのか。
逸る気持ちで握ったステアリングだったのだが、結論から言うと、2.2JTSほどの高い完成度を感じることができなかった。しかし、その一方で妖しい魅力に惹かれた面があるのも否定できず、実はまだ、自分のなかでどう評価してよいのか悩んでいるところだ。
4WDシステムが活きる
6段MTのシフトレバーを1速に入れてクラッチを繋いでいく。と、ここで感じるのが動き出しの鈍さだ。これはエンジンにガツンとくるトルク感がないせいというより、やはり車重が効いているのだろう。車検証を見ると、車重はなんと1750kgと、2.2JTSより170kgも重いのだ。走り出してしまえば、さすが排気量なりにトルクがあって、どんどんシフトアップしていっても流れに乗るのはたやすい。けれど、逆にトップエンドまで回したところで今ひとつエンジンや走りの表情には抑揚がなく、回転計を見ていないと不意にレブリミッターに当ててしまう。ようするに回り方やサウンドが平板で、それだけでリミットを感じることができないのである。
フットワークも、やはり鈍重な印象が拭えない。ターンインも2.2JTSほどは鋭くなく、普通に流している時には、ヨッコイショとノーズを向けていくような感覚。ところが、もっとキレイに曲がらないものかと、更に前荷重を意識しながらステアリングを切り込んでいくと、今度は一転、かなり大きめにテールが流れて、なかなか止まらないのだ。
今どき、こんなハンドリングがアリか? と思うところだが、実はここでトルク配分を後ろに寄せたフルタイム4WDシステムが活きる。頃合いのところでアクセルオンしてやるとリアのスライドがぴたりと止まり、今度は背後から押し出される、まるでFR車のような姿勢で、しかも安定感たっぷりに立ち上がることができるのである。
演出過剰と、演出不足と
つまり、ハンドリングのこの味付けは確信犯なのだろう。楽しくなかったとは言わない。けれど、2.2JTSの素の実力を知っているだけに、そうした演出に頼るという姿勢はどうだろうか? と思ってしまうのも事実である。一方、意図的(?)な盛り上げという意味で言えば、エンジンは演出が足りな過ぎるように思う。実用上の不足はまったくないが、甘美なサウンドや伸び感で魅了した、かつてのアルファV6のように、有無を言わさず陶酔してしまうというほどではないのだ、正直に言って。
冒頭で156やGTを引き合いに出したが、実際はブレラは「GTV」の後継と考えるのが正しいはずだ。そうだとして、果たしてこの走りっぷりは、最終型のよく煮詰められたGTVを既に超えていると言えるだろうか? 実際のコーナリングスピード云々はわからないが、少なくとも変な演出に走らず、エンジンフィーリングもフットワークも、素の気持ちよさを持っていたGTVのことを思い起こすと、僕はそれが現状のブレラに取って代わられたことに、まだちょっと納得できない。
つまるところ、未だあの甘美だったGTVのことを、忘れられないでいる僕なのだ。それは、あの素晴らしく斬新で、そしていつまでも古さを感じさせることのなかったスタイリングも含めて。
今後、僕のこんな思いを覆させるほどの熟成が図られることを、ブレラには強く期待している。
(文=島下泰久/写真=高橋信宏/2006年6月)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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