アルファ・ロメオ・アルファ・ブレラ Sky Window 3.2 JTS Q4 Q-トロニック(4WD/6AT)【ブリーフテスト】
アルファ・ロメオ・アルファ・ブレラ Sky Window 3.2 JTS Q4 Q-トロニック(4WD/6AT) 2007.05.11 試乗記 ……593万円総合評価……★★★
アルファ・ロメオのスタイリッシュなクーペ「ブレラ」に、待望の右ハンドル&オートマモデルが追加された。
日本向きといえる仕様は、いったいどんな走りをもたらすのか?
イージーに乗れるブレラ
ブレラのいちばんの魅力は、なんといってもその抜きん出たカッコよさ。購入の動機としてはそれだけで十分だと思うが、「左のマニュアルはちょっと……」という理由からこれまで購入に踏み切れなかった人は多かったはず。
そんな人に朗報、3.2JTS Q4に6ATの「Q-トロニック」が追加となった。しかも右ハンドル仕様というのがうれしい。
そもそも、ブレラの3.2JTS Q4というモデルがスポーティな走りを前面に押し出す、というよりは、GT的なモデルなので、オートマチックを積んだところで失うものはない。反対に6ATと右ハンドルを手に入れたことにより、イージーに乗れるクーペとして、広い層から受け入れられるのは確実。本音としては、2.2JTSのセレスピードが先にほしかったが、まあそれはともかく、これからブレラのセクシーな姿を街で目にする機会が増えればいいと思う。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
ジョルジェット・ジウジアーロがデザインを手がけた、スタイリッシュなクーペ。「GTV」のポジションを引き継ぐ、アルファ・ロメオの2+2モデルである。
コンセプトカーとして2002年に登場し、2005年3月のジュネーブショーで生産型がデビュー。日本では、2006年4月8日に発売された。
プラットフォームやエンジンなどの主要コンポーネンツは、セダンの「アルファ159」と共有する。
当初の日本におけるラインナップは、2種類のエンジンに3つのグレードという構成で、全車左ハンドル、6段MTのみ。すなわち、2.2リッター直4(185ps/6500rpm、23.4kgm/4500rpm)のFFモデル「2.2 JTS」、大型ガラスルーフ「スカイウィンドー」を装備する「Sky Window 2.2 JTS 」、そして、3.2リッターV6エンジン(260ps/6300rpm、32.8kgm/4500rpm)の4WDモデル「Sky Window 3.2 JTS Q4」であった。
(グレード概要)
試乗車は、ブレラ初の“右ハンドル&オートマ仕様”「Sky Window 3.2 JTS Q4 Q-トロニック」である。同車の日本デビューから約1年を経た、2007年3月17日に追加発売された。
その名の通り、エンジンは3.2リッターV6で駆動方式は4WD。トランスミッションはパドル付きの6段AT「Q-トロニック」が組み合わされる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
「アルファ159」と兄弟関係にあるブレラだけに、インパネは159と酷似したデザインを採用する。大きなセンターパネルがドライバーに向けられ、そこに3連のエアベントや油温計/水温計/燃料計、スターターボタンが配置されるところや、メーターパネルに大型の速度計と回転計が置かれる様子はすっかりお馴染み。それでも、パネルをブラッシュ仕上げのアルミにしたり、メーターの照明を白色に変えるなどして、差別化を図った努力も見られる。
全体としては無難にまとまっているが、クーペとしてはタイトさが乏しいのが残念なところ。
(前席)……★★★★
レッドのボディカラーにコーディネートされるのは、ブラックのレザーシート。159に比べて座面が少し低く設定されているため、自然なシートポジションが採れてうれしい。電動の調整機能やポルトローナフラウ社のレザーは標準。スポーティなデザインだが窮屈な感じはなく、適度に張りのあるシートクッション、シートバックにより快適さが保たれる。
握りがやや太めのステアリングホイールには、マニュアルシフト用のパドルが設置される。ステアリングホイールのスポーク部裏側に、左:シフトダウン、右:シフトアップのスイッチがそれぞれ付く。位置についてはとくに不満はないが、シフトレバーがDレンジのままでマニュアル操作できないのは、高速などでちょっとエンジンブレーキがほしいときなど不便だった。
(後席)……★★
電動のウォークイン機構により、後席にアクセスするときの手間は軽減される。用意されるスペースは大人がギリギリ座れるというもので、足元や膝の余裕はミニマム、Sky Windowのおかげで頭は天井についてしまう。センタートンネルがあるので左右の移動も困難。できれば座りたくない。短時間の移動ならなんとかガマンできるレベルだ。
(荷室)……★★★
ハッチバックスタイルを採用するおかげで、見た目よりはずっと使いやすいラゲッジスペース。両サイドに段差があるのが難点だが、奥行きは90cm、いざとなれば後席を倒して荷室を拡大することもできるので、実用性は高い。
地面から開口部までの高さが高いため、重量物の出し入れは辛いかもしれない。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
3.2リッターV6は2000rpm手前から6000rpmくらいの広い回転域でスムーズに回るのが気持ちいい洗練のエンジン。フルタイム4WDが組み合わされるおかげで、アクセルを思い切り踏み込んでもタイヤが音を上げることもなく、安心してパワーを使い切れるのがうれしいところ。
ただ、1780kgの重量級ボディの前には、260PSのパワーも色褪せてしまい、力強く軽快な性能を期待すると肩透かしを食らうだろう。
オートマチックは、走り出すとあっという間に6速に入る……というタイプではなく、アクセルを緩めてもなかなかシフトアップしない“悪癖”がいまも残る。それでも、以前に比べたらイライラはずっと少なくなった。積極的にドライブしたければマニュアルシフトを活用する手があるが、それでもシフトアップ/ダウンがさほど速くないので、楽しさは半減。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
クーペらしい(?)やや硬めのサスペンションが与えられるため、一般道の路面の荒れた部分や、高速道路の目地段差などではショックを遮断しきれず、辛い思いをすることがあったが、そのぶん高速のフラットさは上々で、長距離をイッキに走るようなときには頼りになる。
ワインディングロードでは、ロールを許しつつも路面をしっかりと掴みながらコーナーを駆けぬける感覚が楽しい。しかし、ボディが重いために機敏なハンドリングとは言い難く、軽快さを求めるなら「アルファGT」をオススメする。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2007年4月23日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2007年型
テスト車の走行距離:1500km
タイヤ:(前)235/45R18(後)同じ(いずれも、ブリヂストン POTENZA RE050A)
オプション装備:パックBOSE(13万円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1):高速道路(7):山岳路(2)
テスト距離:639.7km
使用燃料:110.2リッター
参考燃費:5.8km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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