アルファ・ロメオ・アルファ159スポーツワゴン 2.2JTS(FF/2ペダル6MT)/3.2V6 Q4(4WD/6MT)【海外試乗記】
どこまでもスタイル優先 2006.09.02 試乗記 アルファ・ロメオ・アルファ159スポーツワゴン 2.2JTS(FF/2ペダル6MT)/3.2V6 Q4(4WD/6MT) この夏、日本では3.2 V6 Q4が導入された「アルファ・ロメオ159」。来年早々にも日本に導入予定のワゴンモデルに試乗。一足早くイタリア・シチリア島から報告する。ラインナップはセダンと同じ
最近日本の路上で見かけるアルファ・ロメオ(以下、アルファ)は、かつての定番の赤ではなくて、シルバーだったり、紺だったりとボディーカラーが他の色であることのほうが多い。それがヨーロッパの路上で見かけるアルファのようで(あくまで自己測定値)、もはやアルファが昔ながらのオタク車、もとい、エンスーなクルマではなく、広く一般に受け入れられるようになったひとつの証だと思う。さらに近い将来、その間口を広げるであろうクルマが今回試乗した159スポーツワゴンである。
新型「アルファ・スパイダー」の試乗会が行われたイタリアのシチリア島で、われわれ日本人プレスのために用意された「159スポーツワゴン」の試乗車は、2.2JTSと3.2 V6 Q4という、日本における159セダンと同じラインナップ。いずれも6段MTが組み合わされる。
走りもセダンと……
さっそく先ほどの言葉とは矛盾するようだが、「159」は先代モデルたる「156」よりひとまわり大きくなっても赤がよく似合う。さすがはアルファだ!? シチリアのまぶしい日差しの下で見た159スポーツワゴンも、上下に薄いテールゲートのおかげで、とにかくスタイリッシュである。最近日本で発売されたクライスラー300Cツーリングもルーフが低く、やはり”薄”カッコイイのだが、やはりこちらのほうがスタイリッシュ。僕は世界で一番かっこいいステーションワゴンだと思う。
果たして試乗した印象は、セダンとほとんど同じものであった。それはつまり、けっして小さくないテールゲートや荷室を備えるのにもかかわらず、セダンと同等のボディ剛性を持っているということでもある。簡単に言ってしまえば、2.2は軽快、対する3.2V6は重厚である。古くからのアルファ・ファンは受け入れがたいのかもしれないが、GMと共同開発したプラットフォームのおかげもあるだろう。静かで快適、かつ大きくなったアルファ・ロメオをして、GMのアルファだ、とか、歌わないアルファ(©NAVI副編アオキ)だとか言われてはいるが、昔のアルファへのこだわりがない分、僕は素直に受け入れられる。ハンドリングをはじめ、走らせればそこにドライビングプレジャーがある。それはドイツ車や日本車とは明らかに違う世界だ。
荷室はほぼカラのまま試乗したが、荷物積載を考えて、空荷だとリアサスペンションがちょっと硬め、という印象もほとんどなかった。開発者いわく、フロントサスペンションはセダンと共通、リアサスペンションもバネだけをワゴン用に改良したという。
2.2JTSは静粛性の高さが目立つが軽快なハンドリングが楽しめる。対する3.2V6のほうは、3000〜6000rpmあたりだと、GM由来のエンジンとはいえ、やはりアルファらしい音と力強さが魅力で、ついつい低めのギアで引っ張ってしまう。
トレードオフ
リアシートに座ると、スタイル優先で、テールゲートに向かってルーフラインが下りてくるため、頭上空間の余裕は少なくなる。しかし左右に余裕があるので、けっして閉塞感はない。足元の広さもセダンと同じだ。もっとも、GMと共同開発し、結果的にアルファだけが使うことになったこのプラットフォーム(セダン、ワゴン、ブレラ、スパイダーが共用する)では、これ以上クルマを小さくできないのだとか。
ラゲッジスペースはテールゲート開口部が決して低くないので、重いモノの出し入れが辛くなるシーンが出てくるかもしれない。また、リアシート・バックは分割可倒式でも、座面は固定されたままなので、持ち上げてフロアーをフルフラットに……という使い方はできない。
とはいえ、こうしたポイントも、すべてこのスタイルを優先したため……と考えれば納得できるのではないだろうか。ラゲッジスペース優先ならほかにいくらでも選択肢はある。
最大の魅力
とはいえ、スタイルはもとより、このクルマの最大のトピックは、“セダンより荷室が広い”ということにある。フツーのクルマであれば当然の事実である。しかし、先代モデルたる156スポーツワゴンはスタイル優先のために、セダンより荷室が狭かったのである。カッコよければいいじゃない、荷室は一応あるんだし……って、イタリア車ってなんて素敵なんでしょう。それが一転、159は荷室がセダンよりも40リッター広く、156スポーツワゴンより85リッター広くなった。それでいてやっぱりスタイリッシュなのだから、アルファってすばらしい。
さて、この159スポーツワゴン、日本では、2007年初頭に2.2JTSと3.2 V6 Q4が導入される予定である。前者にはセレスピードが、後者には新開発のアイシン製6段AT、「Qマチック」が組み合されて上陸するようだ。特に6段ATの導入は、純粋なアルファ・ファンや、ドイツ車へのアンチテーゼとしてだけでなく、新しいアルファ・ファンを得るという重要な役割を担うことになる。2.2の軽快感にするか、3.2V6のパワーと四駆性能を選ぶか。妙な位置に備わるテールゲートのオープナーに慣れたなら、颯爽と乗りこなしてほしい。
(文=NAVI中村昌弘/写真=フィアット・オート・ジャパン/2006年9月)
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |

中村 昌弘
-
ランボルギーニ・ウルスSE(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.3 ランボルギーニのスーパーSUV「ウルス」が「ウルスSE」へと進化。お化粧直しされたボディーの内部には、新設計のプラグインハイブリッドパワートレインが積まれているのだ。システム最高出力800PSの一端を味わってみた。
-
ダイハツ・ムーヴX(FF/CVT)【試乗記】 2025.9.2 ダイハツ伝統の軽ハイトワゴン「ムーヴ」が、およそ10年ぶりにフルモデルチェンジ。スライドドアの採用が話題となっている新型だが、魅力はそれだけではなかった。約2年の空白期間を経て、全く新しいコンセプトのもとに登場した7代目の仕上がりを報告する。
-
BMW M5ツーリング(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.1 プラグインハイブリッド車に生まれ変わってスーパーカーもかくやのパワーを手にした新型「BMW M5」には、ステーションワゴン版の「M5ツーリング」もラインナップされている。やはりアウトバーンを擁する国はひと味違う。日本の公道で能力の一端を味わってみた。
-
ホンダ・シビック タイプRレーシングブラックパッケージ(FF/6MT)【試乗記】 2025.8.30 いまだ根強い人気を誇る「ホンダ・シビック タイプR」に追加された、「レーシングブラックパッケージ」。待望の黒内装の登場に、かつてタイプRを買いかけたという筆者は何を思うのか? ホンダが誇る、今や希少な“ピュアスポーツ”への複雑な思いを吐露する。
-
BMW 120d Mスポーツ(FF/7AT)【試乗記】 2025.8.29 「BMW 1シリーズ」のラインナップに追加設定された48Vマイルドハイブリッドシステム搭載の「120d Mスポーツ」に試乗。電動化技術をプラスしたディーゼルエンジンと最新のBMWデザインによって、1シリーズはいかなる進化を遂げたのか。
-
NEW
BMWの今後を占う重要プロダクト 「ノイエクラッセX」改め新型「iX3」がデビュー
2025.9.5エディターから一言かねてクルマ好きを騒がせてきたBMWの「ノイエクラッセX」がついにベールを脱いだ。新型「iX3」は、デザインはもちろん、駆動系やインフォテインメントシステムなどがすべて刷新された新時代の電気自動車だ。その中身を解説する。 -
NEW
谷口信輝の新車試乗――BMW X3 M50 xDrive編
2025.9.5webCG Movies世界的な人気車種となっている、BMWのSUV「X3」。その最新型を、レーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか? ワインディングロードを走らせた印象を語ってもらった。 -
NEW
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性
2025.9.5デイリーコラムあのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代
2025.9.4デイリーコラム24年ぶりにホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。ベテランカーマニアには懐かしく、Z世代には新鮮なその名前は、元祖デートカーの代名詞でもあった。昭和と平成の自動車史に大いなる足跡を残したプレリュードの歴史を振り返る。 -
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】
2025.9.4試乗記24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。