トヨタbBのライバル車はコレ【ライバル車はコレ】
キャラ違い(?)2BOXカー対決 2006.04.11 試乗記 トヨタbBの「ライバル車はコレ」 今も昔もエントリーモデルとして親しまれる2BOXカーは、道具系からスポーティまで様々ある。一方、トヨタの新型「bB」は、道具でもスポーティでもない、新たな次元で勝負をかけた。日本でメジャーな2BOXと較べてみると……。トヨタbB(1.5リッター/144万9000円〜170万1000円)
■道具としてのクルマを自己否定!?
“クルマ型ミュージック・プレーヤー”なる意表をついたキャッチフレーズと共に2005年も残り数日と押し迫ったタイミングで登場したのが、2代目「bB」。基本的なボディ・シルエットは、従来型同様にメリハリある2BOXのスタイルである。
が、そこに与えられたフロントマスクはまるで能面を貼り付けた(?)ようだし、リアバンパー直上と低い位置に設けられたリアランプもちょっと不気味(!?)なデザインだ。
こうしたディテール・デザインに、あえて機能性とは無縁の“特殊な記号性”を持たせたのは、今度のモデルが従来型以上に「若い男性」へとターゲット・ユーザーを絞り込んだゆえ。冒頭のキャッチコピーも含め、「もはや道具としての自動車なんて、機能的には動けば何でもイイ」という感情を持つとされる、こうした層の人々をもう一度振り返らせようと、トヨタ自らがクルマである事を自己否定する“禁じ手”の販売戦略に挑んだのがこのモデルとも言えそうだ。
ホイールベースは40mm延長されたものの、前後のオーバーハングが大幅に短くなったので全長は短縮。(旧型)ヴィッツを骨格のベースとしていた従来型に対し、今回のベース車両はトヨタ・ラインナップの末っ子である「パッソ」がベースである。それゆえ、実はこのクルマの主たる開発もパッソ同様に、“子会社”であるダイハツが担当した。最小回転半径が従来型の5.5mから4.9mへと大きく改善されたのもベース車両の変更によるもので、大きくなった現行ヴィッツをベースにしていたら、こうはいかなかったはずだ。
ミュージックプレーヤーを謳う新型bBは、インテリアにも特徴がある。ベルトラインの下に隠れるほど低い位置でリクライニングが可能な“まったりシート”もひとつのセールスポイントであるが、目立った売り物は、サウンドレベルに応じてリングが点滅する例のスピーカーと、アームレストに内蔵のiPod型(?)オーディオ・コントローラーだ。
といっても、9スピーカーやアームレストコントローラーが備わる「Qバージョン」ではないモデルは、いきなりオーディオレスになってしまう。それで“ミュージック・プレーヤー”を名乗るとは、ちょっと過大広告ではないか??
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【ライバル車 その1】日産キューブ(1.5リッター/144万6900円〜156万2400円)
■まろやか風味の便利な道具
“名は体を表す”とばかり、「これでもか」というボクシーなボディがすっかりお馴染みの「キューブ」。もっとも、このクルマが拘っているのは“かど丸の四角”というデザインキューにある。
なるほど、シルエット的にはパンパンのスクエアに見えるボディも、そのすべての末端部分には優しいアールによる「隅切り」の処理が施される。合わせて、フロントグリルやウインドゥ・グラフィックなどにも同様のテクニックを採用。単なるハコに留まらず、「デザインされた」という印象をきっちりと醸し出しているのは立派だ。
そもそも天地方向に薄く、さらに後ろ上がりのベルトラインを採用したことで「なんとか面積を小さくしたかった」という意図が感じられるbBのサイド・ウインドウグラフィックに比べると、ルーフラインに合わせた水平基調を描くキューブのサイドビューは窓面積自体がグンと大きい。それもあり、このクルマのエクステリア・デザインは「広い室内」を外観上からもしっかり連想させる。いかにも“密室感”が強そうなbBに比べると、これもまた狙ったキャラクターの違いが歴然とする。
デザインの方向性が大きく違うこともあり、果たして“ライバル車”と呼ぶ事が適切かという疑問はちょっとばかり残るものの、ボディサイズと価格を考えるとやはり一度は比べたくなってしまうこの両者。街乗りには十分、高速道路も無難にこなす……といった走りの実力は双方甲乙つけ難い。ただし、いまだ違和感の強いキューブの電動パワーステアリングのフィーリングは、同じく電動式を用いるbBのそれに完敗しているが……。
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【ライバル車 その2】スズキ・スイフトスポーツ(1.6リッター/156万4500円〜177万4500円)
■狙うは世界のホットハッチ
“まったりシート”に“ぴかぴかスピーカー”のついたbBのZグレード“Qバージョン”のお値段は170.1万円である。クルマのキャラクターや装備品の差という話題はひとまずおいて、価格面だけから「他にどんなモデルが選べるか?」探してみると、楽勝で手に入るのが例えばスイフト・シリーズ最高峰の「スイフト・スポーツ」だ。
“停まっても楽しめる”ことを追い求めたbBに対し、こちらはまさに“走り”を重視と正反対のクルマだ。全長×全幅サイズこそ(たまたま)接近しているものの、日本(の若い男性)のみをターゲットとしたbBに対し、「スズキきっての世界戦略車」であるスイフトの1バリエーションであるこちらは、欧州発の“ホットハッチ”たちにも「一矢を報いたい!」という、純粋な国際派を狙う。
まるで『機関車トーマス』のごとき(?)仮面を被ったかのようなbBの顔付きに比べると、フロントマスクに威圧感こそ感じられない。とはいえ、高性能車に共通の記号である、大きな開口部を強調したフロントマスクを採用するなど、ルックスはグンとファンクショナブル。そもそも、1.3/1.5リッター・エンジンを搭載するベース車両が、すでに欧州ライバルにもヒケをとらないほど侮れない走りの実力を示すだけに、そのチューニング版たるスポーツ・グレードの走りのポテンシャルは走る・曲がる・止まるの全てが見逃せない水準に達している。
一方で、ちょっと硬質な乗り味や機敏なハンドリングのテイストには、「四六時中そんなに張り切ってクルマに乗ってられっか!」なんて意見も聞こえてきそう。まぁ、クルマの狙いが違うなら購入者のカラーも全く異なるであろうから、bBからは“最も縁遠いライバル”がこのモデルか……。
(文=河村康彦/写真=広報写真/2006年4月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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