トヨタbB1.5Z“Q version”(FF/4AT)【試乗速報】
音と光の「恋愛仕様」 2006.01.20 試乗記 トヨタbB1.5Z“Q version”(FF/4AT) ……203万4900円 トヨタ「bB」の2代目は、走ることよりも停まっている状態に重きを置いて開発された。若者にウケる「くつろぎ空間」とはいかなるものかを知るべく、試乗し、試聴した。
拡大
|
拡大
|
高校生の視線が集中
試乗会の行われたお台場で信号待ちをしていると、横断歩道を渡る修学旅行の高校生たちの視線がいっせいに集まった。クルマなんぞに興味がないはずの高校生の目を向けさせるのだから、「bB」の外観は相当なインパクトがあるのだ。いかにもワルそうでアクの強い顔つきは精悍というよりむしろ邪悪ささえ感じさせるのだが、それを「都会的でクール」と解釈できる年代には歓迎されるのだろう。先代bBは、スペースの広さを評価して乗っていた年配層もいるらしいが、新型はオヤジにはハードルが高そうだ。
「ミュージックプレーヤー」と自ら称するぐらいで、ターゲット層である20代の若者のニーズを分析して構想された商品なのだ。もともと「音・光・まったり」というコンセプトで開発されていたモデルが、途中からbBの後継に、ということに決まったのだという。先代bBに乗っていた人たちの中に、走りを楽しむというよりも室内で音楽を聴きながら過ごすことを選んでいた人が多かったことが、背景にあるわけだ。コンピューター会社が音楽機器で経営を支える時代なのだから、こういうのもアリなんだろう。
心身ともに弛緩する
新bBのウリは、まずは「マッタリモード」。フロントシートを目一杯低く落とし込み、外界から隔絶した空間を作るというものだ。リクライニングと組み合わせれば、高いウエストラインと相まって、完全に隠れ家状態となる。もちろん、これは停車している場合しか使ってはいけないモードだ。運転中にうっかりこのモードにしてしまうことがないように、ボタンを押しながらレバーを引き上げるという2段階の操作を必要とする。体重をかけながらマッタリモードに移行するわけだが、ドライビングポジションに復帰する時はステアリングに手をかけて腰を浮かさなくてはならない。結構腹筋を使うので、カラダがなまっているオヤジにはこのあたりもツライものがある。
マッタリモードを何に使うのかと聞くのは、野暮というものである。ホンダが以前「S-MX」のキャッチコピーに使った「恋愛仕様」という言葉が、このクルマにも当てはまるということなのだろう。さらに音と光でラブスペースをゴージャスに演出するのだから、クルマというのは進化するものだ。暗闇の中ではスピーカーに設えられた青いイルミネーションが妖しく浮かび上がり、サウンドにあわせて明滅する。アームレストには円形のコントローラーが備わり、これもイルミネーションで彩られている。ただし、この装備は「Q version」のみの設定なので、ほかのグレードを選ぶと少々寂しい思いをするかもしれない。
マッタリモードポジションでカラダを楽にして音と光に包まれていたら、だんだん心身ともに弛緩してくるのがわかった。生きる意欲とかアクティブな姿勢とか、そういった前向きな要素がだんだん削ぎ落とされてくるような気がした。それが狙いなのだから仕方がない。停まっている状態を重視して着想されたクルマである。寝ころんで天井を眺めていたら、そこが暗いのが物足りなくて、小型プラネタリウムで星空を映し出したらいいんじゃないか、などと考え始めた自分に驚いた。
|
エンジニアの苦労
運転してみて、特に不満はないし、とりたてて感動する点もなかった。これも、開発の意図どおりである。「クルマ型Music Player」なのだから、走りで妙に引っかかる部分があってはいけない。ただ、音楽空間、恋愛空間としてクルマをとらえるならば、乗り心地が悪くてはいけない。騒音に包まれるのも、もってのほかである。そのあたりは、さすがによく躾けられていた。快適性を何よりも優先させ、それでいて走りに不自然なところがあってはならず、安全にも気を配らなければならない。さまざまな条件をクリアすることに心を砕くエンジニアの苦労が推し量られる。
bBのベースとなったのは「パッソ/ブーン」で、開発の主役となったのはダイハツのチームである。以前の体制ではとてもこんなコンセプトのクルマは作れなかった、とダイハツのエンジニアが話していたそうだ。トヨタ/ダイハツのコラボレーションは、そういう意味では自由な開発環境を作り出しているのかもしれない。bBがクルマの歴史にどんな足跡を残すのかはにわかに判断できないが、クルマのさまざまな可能性を追求するシステムができているのだとすれば、今後とてつもなく斬新な発想で新たな自動車像が生み出されることもありえよう。
(文=NAVI鈴木真人/写真=峰昌宏/2006年1月)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
-
ボルボXC90ウルトラT8 AWDプラグインハイブリッド(4WD/8AT)【試乗記】 2026.4.18 2016年に上陸した2代目となるボルボのフラッグシップSUV「XC90」の最新アップデートモデルに試乗。パワフルなプラグインハイブリッドシステムを採用する3列シートSUVの走りを、先にステアリングを握った「V60」や「XC60」との比較を交えながら報告する。
-
ハーレーダビッドソン・パン アメリカ1250リミテッド(6MT)【レビュー】 2026.4.17 アメリカの大地が鍛えたアドベンチャーモデル「ハーレーダビッドソン・パン アメリカ1250」に、充実装備の上級モデル「リミテッド」が登場! 試乗して感じられた、日欧のライバルに勝るとも劣らない魅力と、どうしても気になるポイントを報告する。
-
レクサスIS300h“Fスポーツ”(FR/CVT)【試乗記】 2026.4.15 「レクサスIS」のビッグマイナーチェンジモデルが登場。もはや何度目か分からないほどの改良だが、長年にわたってコツコツとネガをつぶし続けてきただけあって、スポーツセダンとしてひとつの完成形といえるレベルに達している。“Fスポーツ”の仕上がりをリポートする。
-
モーガン・スーパースポーツ(FR/8AT)【試乗記】 2026.4.14 職人の手になるスポーツカーづくりを今に伝える、英国の老舗モーガン。その最新モデルがこの「スーパースポーツ」だ。モダンながらひと目でモーガンとわかる造形に、最新のシャシーがかなえるハイレベルな走り。粋人の要望に応える英国製ロードスターを試す。
-
ボルボV60ウルトラT6 AWDプラグインハイブリッド(4WD/8AT)【試乗記】 2026.4.13 1990年代のステーションワゴンブームでトップランナーであったボルボ。その伝統を受け継ぐモデルが「V60」だ。現行型の登場は2018年とベテランの域に達しようとしているが、アップデートされた最新プラグインハイブリッドモデルの印象やいかに。
-
NEW
「洗車でボディーにキズがつく」って本当ですか?
2026.4.21あの多田哲哉のクルマQ&Aマイカーは常にきれいな状態で維持したいものの、クルマ好きの間では「洗車することでボディーにキズがつく」「洗いすぎは害になる」という意見もある。実際のところ、どうなのか? 元トヨタの多田哲哉さんに聞いてみた。 -
ディフェンダー110 X-DYNAMIC HSE P300e(4WD/8AT)【試乗記】
2026.4.20試乗記本格クロスカントリービークルの「ディフェンダー」にプラグインハイブリッド車の「P300e」が登場。電気の力を借りて2リッターターボとしては格段にパワフルになった一方で、カタログ燃費はなかなか悲観的な数値を示している。果たしてその仕上がりは? -
ポルシェジャパンのイモー・ブッシュマン社長に聞く 日本での展望とスポーツカーの未来
2026.4.20デイリーコラム2025年8月に着任した、ポルシェジャパンのイモー・ブッシュマン新社長。彼の目に日本はどう映り、またどのような戦略を考えているのか? 難しい局面にあるスポーツカーや電気自動車の在り方に対する考えを含め、日本における新しいリーダーに話を聞いた。 -
スバル・ソルテラET-HS(前編)
2026.4.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバル&STIでクルマを鍛えてきた辰己英治さんが、“古巣”スバルの手になる電気自動車「ソルテラ」に試乗。パワートレインの電動化以外にも、さまざまな試みが取り入れられた一台を、ミスター・スバルはどう評価するのか? -
第57回:スズキはなぜインドに賭ける? 変わらず牛が闊歩するインドの最新工場を小沢コージが直撃
2026.4.18小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ小沢コージがインドへ。日本の自動車ファンにとってインドといえばスズキのイメージだが、実はスズキは現在、インドへの大型投資の真っ最中だ。なぜスズキはインドでこれほどまでに愛されるのか。最新工場を見学して考えた。 -
ボルボXC90ウルトラT8 AWDプラグインハイブリッド(4WD/8AT)【試乗記】
2026.4.18試乗記2016年に上陸した2代目となるボルボのフラッグシップSUV「XC90」の最新アップデートモデルに試乗。パワフルなプラグインハイブリッドシステムを採用する3列シートSUVの走りを、先にステアリングを握った「V60」や「XC60」との比較を交えながら報告する。





























