ジャガーXKクーペ(FR/6AT)/XKコンバーチブル(FR/6AT)【海外試乗記(前編)】
時代の先端を切り開くために(前編) 2006.03.25 試乗記 ジャガーXKクーペ(FR/6AT)/XKコンバーチブル(FR/6AT) 2005年デトロイトショーでコンセプトカーとして展示、東京ショーでも完成型として展示されたニュー「ジャガーXK」。2006年夏ごろに日本導入が予定されるニューモデルに、南アフリカのケープタウンで先行試乗した。リトラクタブルでない理由
まばゆいばかりの明るい日差しに、カラッと乾いて何とも心地良い“初秋”を思わせる爽やかな風――そう、2月だというのにオープンカーのテストドライブには恵まれ過ぎたそんな環境に出会う事ができたのは、ココが南半球であるがゆえ。1996年の発売以来9万台という数を世界の市場へと送り出し、「ジャガーのスポーツカー史上で最も速い売れ行きを記録した」というのが従来型のXKシリーズ。そんな前モデルの成功を受け、再びの好記録達成に向けてスタートを切ろうという新型XKシリーズの国際試乗会は、日本からは3本のフライトを乗り継ぎ、自宅からの“ドアtoドア”で計算すれば丸々24時間以上を必要とする、南アフリカはケープタウンの地で開催された。
“2台のクルマが1台に”という、最近は他車でも良く耳にするキャッチフレーズが用いられている新しいXK。が、その意味するところは「スポーツカーとグランドツアラーの融合」で、昨今ありがちな「クーペとオープンの1ボディ化」でないのはむしろ逆に要注目点。このところ世界的な流行を見せるリトラクタブルハードトップを用いて2種類のボディタイプの統合を図ろうとしなかったのは、「それをやるとオープン時にジャガーらしい“薄型ボディ”のシルエットが達成できなくなるから」というのが最大の理由であったという。
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フロントマスクのエレガントさが……
「シトロエンC6」と並び世界で最も早いタイミングで“ポップアップフード”のテクノロジー(衝突時に自動的にボンネットが数センチ持ち上がる機構)を採り入れたのも、実は同様の理由からと推測がつく。すでに日欧で一部基準が法制化された歩行者保護要件を確保すべく、フード下面とエンジン上部との間に大きな隙間を得るための「分厚いフード」を採用したら、確かにこれまでスリークで繊細なプロポーションを継承してきたジャガースポーツカーの歴史に泥を塗る結果になってしまったかもしれない。すなわち、誕生した新しいXKシリーズのプロポーションは、誰もが「ジャガーのスポーツカー」に期待をする伸びやかで流麗なシルエットを見事に実現させているという事だ。
一方、こうしてサイドビューにもリアビューにもジャガーらしいダイナミックな流麗さが満点の新型XKだが、残念ながら個人的にはそのフロントマスクにだけは「期待値に及ばなかった」という思いを抱いてしまった。そんな印象の要因の大半は、ヘッドライトユニットの造形とその内部構造が醸し出す表情にあるように思う。ややシャープさに欠ける楕円がサイドへと回りこんだ形状のユニットと、今ひとつ繊細さに欠けるその内部デザインが醸し出す表情は、スリークでダイナミックな新型XKのプロポーションに対してはどうも今ひとつエレガントさが物足りないと思えてしまうのだが……。
2人の時間を愉しむ
「南アという遠隔地での試乗会開催のため、発売時点よりも5か月ほど遡ってラインオフをした“プリプロダクションモデル”を運んできた」という理由からか、実は数あるテスト車の中には、パネル類の合わせ目などに「一部難アリ」という仕上げのインテリアを持つモデルも混じっていた。ただしそうした点は本格生産立ち上がりの折には解消されるはず……、という前提で語るのであれば、新型XKのインテリアはそのデザインも質感も、「ジャガーのフラッグシップスポーツモデルにふさわしい」と評するに足るもの。
ナビゲーションシステムも含めた多彩な機能を持つわりに、ダッシュボード周りがスッキリとして見えるのは、それら操作系のスイッチ類を表面から取り除かれ、7インチディスプレイ上に集約した恩恵である。ただし、タッチパネル式による操作性は、必ずしも優れているとは言い難い。
コンバーチブルモデルに用いられる3層裏地付き構造のソフトトップは、電動油圧機構によって開閉動作をそれぞれおよそ18秒でこなす設計。およそ15km/hまでの速度であれば走行中でも動作を継続するので、信号待ち程度の停止時間でも楽に変身作業を行う事が可能だ。
トランクスペースに関しては、リトラクタブル式ハードトップを用いるモデルとは異なり、ルーフクローズ時でも広いとは言いがたい。また4シーターとはいえ、後席スペースはあくまで“緊急用”の域を脱しないものになっている。すなわち、新型XKはやはりジャガースポーツカーの系譜に倣って、クーペもコンバーチブルもあくまで「2人が贅沢に時間を愉しむ」ためのモデルであるというわけだ。(後編につづく)
(文=河村康彦/写真=ジャガージャパン/2006年3月)
・ジャガーXKクーペ(FR/6AT)/XKコンバーチブル(FR/6AT) 【海外試乗記(後編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000017976.html

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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