三菱 i G (MR/4AT)【短評(後編)】
欠点を帳消しにできる革命児(後編) 2006.03.11 試乗記 三菱 i G (MR/4AT) ……149万1000円 デザインやパッケージングにこだわった「三菱i」。高速での静かさに感動したリポーターは、そこでさらなる驚きを見つけた。並はずれた安定感
でもこれで驚くのは早かった。乗り心地が驚異的にフラットなのだ。とにかく揺れが少ない。路面からのショックは、ゆったりしっとりいなす。とんでもなくおとなびている。自分が乗っているクルマの非凡さが、だんだんわかってきた。
直進安定性がまたすばらしい。今回試乗した2WDでは高速でハンドルの遊びが少し気になったが、クルマそのものはレールの上を走っているようにまっすぐ突き進む。確実な操舵感が欲しい人は4WDを選べばいい、というのは試乗会で確認ずみだ。
市街地限定で試したハンドリングも落ち着きはらっていた。ミッドシップだからといって、鋭い身のこなしは追求していない。むしろ切れ味は意識的に鈍くしてあり、おかげで安心して操れる。コーナーの出口でアクセルを踏むと、リアのトラクションに負けて、フロントが外へふくらもうとする。安全第一の性格だ。
それにしても、2名乗車でほぼイーブンになる前後重量配分と、エンジンを45度傾けて置いたことによる重心の低さが生み出す安定感は、並はずれていた。四隅に置かれたタイヤにバランスよく荷重がかかっているのを実感し、腰高感ゼロのロールに身をまかせながらのコーナリングは、キビキビ感とは別の種類の心地よさ。車体全体が沈み込むようなブレーキングも、信頼できるのを通り越して、快感に思えるほどだった。
欠点は直せばいいこと
ちなみに4WDでは、同じスピードでもフロントはなかなかふくらまず、操舵に合わせてキチッとインを向いてくれる。直進性についてもいえるが、2WDとの走りの差が大きい。しかも4WDが基本に思える。アウディのクワトロに近いものを感じた。
欠点も目につくけれど、それを帳消しにしてあまりあるデザインのすばらしさと、走りの気持ちよさがある。三菱 i は、フランスやイタリアのコンパクトカー、具体的にいえば「プジョー206」や「フィアット・パンダ」あたりを思わせる。
すべてが完璧なほうが、機械としてはいいのだろう。けれどもいっしょに暮らす相手としてみると、味気ないと思ってしまう。少々いたらない部分があって、でもそれを上回るチャームポイントがあって、というほうが愛せるっていうものだ。
それに欠点は、これから直していけばいいこと。トリノ五輪のカーリングチームみたいに、戦いながら強さを身につけていけばいい。未知の分野に果敢に挑戦し、想像以上の結果を出した。まずはそれを評価したい。
(文=森口将之/写真=河野敦樹/2006年3月)
・三菱 i G (MR/4AT)【短評(前編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000017932.html

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
ランボルギーニ・ウルスSE(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.3 ランボルギーニのスーパーSUV「ウルス」が「ウルスSE」へと進化。お化粧直しされたボディーの内部には、新設計のプラグインハイブリッドパワートレインが積まれているのだ。システム最高出力800PSの一端を味わってみた。
-
ダイハツ・ムーヴX(FF/CVT)【試乗記】 2025.9.2 ダイハツ伝統の軽ハイトワゴン「ムーヴ」が、およそ10年ぶりにフルモデルチェンジ。スライドドアの採用が話題となっている新型だが、魅力はそれだけではなかった。約2年の空白期間を経て、全く新しいコンセプトのもとに登場した7代目の仕上がりを報告する。
-
BMW M5ツーリング(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.1 プラグインハイブリッド車に生まれ変わってスーパーカーもかくやのパワーを手にした新型「BMW M5」には、ステーションワゴン版の「M5ツーリング」もラインナップされている。やはりアウトバーンを擁する国はひと味違う。日本の公道で能力の一端を味わってみた。
-
ホンダ・シビック タイプRレーシングブラックパッケージ(FF/6MT)【試乗記】 2025.8.30 いまだ根強い人気を誇る「ホンダ・シビック タイプR」に追加された、「レーシングブラックパッケージ」。待望の黒内装の登場に、かつてタイプRを買いかけたという筆者は何を思うのか? ホンダが誇る、今や希少な“ピュアスポーツ”への複雑な思いを吐露する。
-
BMW 120d Mスポーツ(FF/7AT)【試乗記】 2025.8.29 「BMW 1シリーズ」のラインナップに追加設定された48Vマイルドハイブリッドシステム搭載の「120d Mスポーツ」に試乗。電動化技術をプラスしたディーゼルエンジンと最新のBMWデザインによって、1シリーズはいかなる進化を遂げたのか。
-
NEW
谷口信輝の新車試乗――BMW X3 M50 xDrive編
2025.9.5webCG Movies世界的な人気車種となっている、BMWのSUV「X3」。その最新型を、レーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか? ワインディングロードを走らせた印象を語ってもらった。 -
NEW
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性
2025.9.5デイリーコラムあのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。 -
NEW
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代
2025.9.4デイリーコラム24年ぶりにホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。ベテランカーマニアには懐かしく、Z世代には新鮮なその名前は、元祖デートカーの代名詞でもあった。昭和と平成の自動車史に大いなる足跡を残したプレリュードの歴史を振り返る。 -
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】
2025.9.4試乗記24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。 -
第926回:フィアット初の電動三輪多目的車 その客を大切にせよ
2025.9.4マッキナ あらモーダ!ステランティスが新しい電動三輪車「フィアット・トリス」を発表。イタリアでデザインされ、モロッコで生産される新しいモビリティーが狙う、マーケットと顧客とは? イタリア在住の大矢アキオが、地中海の向こう側にある成長市場の重要性を語る。