トヨタbB 1.3S(FF/4AT)【ブリーフテスト】
トヨタbB 1.3S(FF/4AT) 2006.02.21 試乗記 ……149万1000円 総合評価……★★★ 「トヨタのミュージックプレイヤー」と銘打つ「bB」。しかしウリである9つのスピーカーや、手元のコントローラーがないグレードも存在する。今回はベーシックグレードで、クルマとしてのデキを試す。
![]() |
“次もトヨタ車”となるかは疑問
走ってナンボ、というクルマとは対極に位置する「トヨタbB」。走りっぷりにはこれといって見るべきところはないが、そのコンセプトやデザインだけで「ほしい」と思わせる商品力はある意味すごいと思う。きっとこれをほしいと思う人は、試乗しなくても買っちゃうんだろうな。
そんな浮気な若者たちを振り向かせる魅力があるbBだが、これを買ったところで「次もまたトヨタ車を」という気持ちにはならないだろう。「見た目もいいけど、乗るといいじゃん、トヨタ」と思わせないことには、トヨタファンは育たないと思うんだけど。
ひとつ気になったのは、このクルマのウリのひとつである前席の“まったりモード”。機能はさておき、まったりモードのままでは運転してはいけないことになってはいるが、その気になればクルマを動かすことはできてしまう。また、音楽を聴きながら、エアコンを効かせた室内でまったりしたい、という欲求も必ず生まれるはずだ。余計なお世話かもしれないが、危険防止やアイドリングストップの観点から、まったりモードではエンジンが停止するような工夫が必要なのではないだろうか? そこまでメーカーが心配する必要はない? いや、最近の日本人のモラルは、メーカーが考えるほど高くないと思う。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
初代 「ヴィッツ」の派生車種として2000年2月にデビュー。2005年12月に発売された現行2代目は、トヨタ曰く「クルマ型ミュージックプレイヤー」。ベース車を「パッソ」としダイハツで生産される。エンジンは1.3と1.5の2本立てで、どちらも4段AT。1.3リッターにはFFと4WDが用意される。
エアコンがオートだと「Z」、マニュアルだと「S」というグレード分け。それに、エアロと室内イルミネーションの装備を持つ「Xバージョン」と、9スピーカーやアームレストコントローラーが備わる「Qバージョン」が組みあわせられる。
(グレード概要)
テスト車は1.3リッター前輪駆動の「S」グレード。マニュアルエアコン、ノーマル外観、14インチタイヤにスチールホイールなどを標準装備する、シリーズ内最廉価のベーシックグレードだ。ウリであるシートが深く下がる「まったりモード」は採用されるものの、ミュージックプレイヤーの核である「9スピーカー」「イルミネーション」は、このグレードには装備されない。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
今回の試乗車は最もベーシックな「S」グレードということで、スピーカーは4つ、ブルーのイルミネーションはセンタークラスターのカップホルダー部のみ、という実にジミ〜な仕様。でもそのシンプルさが意外に気持ちよかったりする。ダッシュボードは中央にアナログ式のメーターパネルがレイアウトされ、そこから両サイドに回り込む“腕”のようなデザインやその表面の四角いボツボツが、素材のチープさを隠しているのは上手いと思った。
(前席)……★★★
ドアを開けて足を踏み入れた瞬間、フロアが低いことに驚く。この高いアクセス性は、案外シニアに喜ばれそうだ。フロントのベンチシートは6:4の分割式で、センターコンソールを引き出せばセパレートシートのように使うことも可能。フロアから座面までの高さは十分だが、クッションやシートバックはやや平板な印象。自慢の“まったりモード”は簡単な操作で座面を下げることができるので、車内で休憩するには便利だ。
(後席)……★★★
天井の高いキャビンにアップライトに座るシートのおかげで、後席のスペースは下手なラクシュリーサルーンよりも広い。2段階だがリクライニングできるのもうれしいところだ。レッグルームは脚が組めるほど広いし、ヘッドルームも申し分ないが、内装色がダークグレーで統一されるために閉所感があり、これにボディの上下動が目立つ不快さが加わると、長時間閉じこめられるのは避けたいところだ。
(荷室)……★★★
全長3785mmのコンパクトなボディにもかかわらず、キャビン同様、ラゲッジスペースも十分な広さが確保されている。後席を起こした状態でも奥行き50cm以上、幅120cmほどのスペースは、高さも十分あるため使いやすい。シートバックを倒せば奥行きは120cm以上。ワンタッチでシートを倒す機構などは備わらず、とくに目新しさはないが、道具としては不満のない設計といえる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
bBのエンジンは109ps/14.4kgmを発揮する1.5リッターと92ps/12.5kgmの1.3リッターの2タイプが用意され、いずれも4段オートマチックが組み合わされる。今回の試乗車は1.3リッター搭載モデルだが、発進はスムーズで街中でも不満なく走るので、運転していてストレスを感じることはなかった。高速でも登り勾配で追い越し車線に出るような場合を除けばまずまずの性能。回せばそれなりにノイズや振動は高まるが、オーディオのボリュームを上げてしまえば気にならない!?
(乗り心地+ハンドリング)……★★
一方、乗り心地はあまり褒められたものではない。街中を走るようなスピードでは多少ゴツゴツした乗り心地で、タイヤの柔らかさになんとか助けられている印象。目地段差を越えたときのショックも逃がしきれず、とくにリアシートはツライ。高速でもフラット感が乏しく、スピードを上げるにつれてピッチングが目立ってくし、レーンチェンジの際のロールも比較的大きめだ。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2006年2月6日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2006年型
テスト車の走行距離:1306km
タイヤ:(前) 175/65R14(後)同じ(ヨコハマASPEC)
オプション装備:DVDナビゲーションシステム+ガラスアンテナ(TV)=14万7000円
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(7)
テスト距離:161.4km
使用燃料:12.8リッター
参考燃費:12.6km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
NEW
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。 -
NEW
トヨタ車はすべて“この顔”に!? 新定番「ハンマーヘッドデザイン」を考える
2025.10.20デイリーコラム“ハンマーヘッド”と呼ばれる特徴的なフロントデザインのトヨタ車が増えている。どうしてこのカタチが選ばれたのか? いずれはトヨタの全車種がこの顔になってしまうのか? 衝撃を受けた識者が、新たな定番デザインについて語る! -
NEW
BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ(FR/8AT)【試乗記】
2025.10.20試乗記「BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ」と聞いて「ほほう」と思われた方はかなりのカーマニアに違いない。その正体は「5シリーズ セダン」のロングホイールベースモデル。ニッチなこと極まりない商品なのだ。期待と不安の両方を胸にドライブした。