アウディA3 2.0 FSI スポーツ(6AT)【ブリーフテスト】
アウディA3 2.0 FSI スポーツ(6AT) 2003.12.26 試乗記 ……350.0万円 総合評価……★★★ “小さな高級車”は、多くの自動車メーカーの果たせぬ夢のひとつ。アウディのニューA3は、圧倒的なフィニッシュのよさで、このカテゴリーに挑戦する。『webCG』コンテンツエディターのアオキが乗った。クールビューティ
夜。砂漠の街のスーパーマーケット。駐車場に停めた「アウディA3」のなかには謎の美女。なぜ「謎の」のあとには、かならず「美女」とつづくのか。それはともかく、アタッシェケースを開けて、微笑む彼女。
店から出てきたチンピラ風のオトコがクルマをなでまわすと、車内をのぞく。体を固める美女。しかしチンピラは、サイドウィンドウに映った自分の姿にニンマリして、ネクタイを締めると去っていくのであった……。
資本主義社会において、広告とはまことに大切なものである。
「見えないところにも、何かがある」というキャッチフレーズをテレビで見るたび、可笑しく思っていた。ことさらクルマ好きでもない消費者に、「アウディA3は、モデルチェンジしたんですよォ! カッコは先代と似てるけど、別モノなんでェす!!」と、必死に啓蒙しているように感じたから。
でも、ヴィム・ヴェンダースの手になる、サスペンス映画のエッセンスだけを抽出したようなショートショートフィルムを繰り返し見せられると、初見では(不覚にも)「ボワンと膨らんだ」と頭のなかで形容したコンパクトモデルが、ちゃんと広報資料通り「よりソリッドに、よりスポーティに」、そのうえスタイリッシュに見えてくるから不思議だ。こうして、自動車メーカーは、“ブランド確立”と“イメージ向上”を果たすのだな。
日本に入るA3は、3種類。2リッター直4が2種と、3.2リッターV6が1種。テスト車の「2.0FSI Sport」は、2リッターモデルの“よりスポーティ”バージョン。
内外とも有無をいわさぬ高い質感。ドライブフィールも落ち着いたもの。「ルマンの技術を投入した」スポーツハッチと聞いて、かつてのホットハッチを想像すると裏切られる。A3は、クールに速い。プレミアムに重厚に。しかし、FF(前輪駆動)車の癖を見事に隠した身のこなしは、どこか“鈍”。「感度の悪い美女」と言ったら、下品に過ぎましょうか。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
“プレミアムコンパクト”を標榜する、アウディのスポーツハッチ「A3」。2代目は、2003年のジュネーブショーでデビューした。日本への導入は、2003年9月から。
ラインナップは、「FSI」こと直噴化された2リッター直4DOHC16バルブ(150ps)を積む「2.0FSI」と、その上級版「2.0FSIスポーツ」。さらに3.2リッターV6DOHC24バルブ(250ps)を搭載する「3.2クワトロ」が用意される。トランスミッションは、4気筒がティプトロニックの6段(!)AT、V6が「DSG」と呼ばれる2ペダル式6段MTとなる。
サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット/コイル、リアは先代のトーションビーム式から、4リンク/コイルの完全独立式に進化した。
(グレード概要)
FSIスポーツは、その名の通り、FSIのスポーティ版。ホイールが17インチとなり、サスペンションがハードにセッティングされる。シートはスポーツタイプに替えられ、ステアリングホイールは3本スポークに。「アルカンタラ+本革」仕様や「BOSEサウンドシステム」がオプションで用意されるのも、FSIスポーツの特権だ。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
いかにも(最近の)アウディらしく、隙なく「シンプル&クリーン」にまとめられたインパネまわり。グレーとアイボリーの上品な色合い、質感、取り付け精度の高さ、そしてむやみに木目調パネルに頼らない先進性に感心。デザイナーズマンションのようだ。難を言えば、後付けナビを溶け込ませる難しさ、か。
エアコンは左右独立。センターコンソールからの「飛び出し式カップホルダー」は、缶を差す円周が伸縮性素材で囲まれていて、サイズにかかわらず使いやすい。小さな親切。
(前席)……★★★★
ややこぶりなスポーツシート。シート全体を調整できるレバー式ハイトコントロールが備わる。座り心地、ホールド性とも良好だが、車両本体価格330,0万円にして、スライド、リクライニングとも手動式であることに不満を抱くユーザーがいるかも。ただし、運転席、助手席ともランバーサポートは電動。サポートの出っ張り度合い、腰付近の上下位置を、電動で細かくコントロールできる。
クリーンなインテリアにして、センターコンソール下部や左右席間の小物置き、モノ入れを兼ねたアームレスト、実用的なドアポケットと、日常的な使い勝手にも配慮される。
(後席)……★★★
大きなサイドウィンドウ(はめ殺し)の恩恵で、閉塞感の少ないリアシート。低めの着座位置で頭上空間を稼ぐが、不自然なほどではない。膝前のスペースも確保され、大人2人用として、完全に実用的。センターシートにも3点式シートベルトが備わるが、ヘッドレストの高さが不足気味で、成人向けとは言いかねる。
乗り降りは、フロントシート肩のレバーを引くことで、前席背もたれを前に倒し、前方にスライドすることで行う。3ドアモデルとしての乗降性は、標準的か。
(荷室)……★★★
スクウェアで、使いやすそうなラゲッジルーム。バンパーレベルから下がった位置にあるフロアが印象的。てっきりタイヤ修理剤を採用してスペースを稼いだか、と思ったら、床下にはちゃんとテンパータイヤが収まっていた。床面最大幅102cm、奥行き80cm、パーセルシェルフまでの高さ55cm。ラゲッジネットは、標準装備。
後席の背もたれは、6:4の分割可倒式。ヘッドレストを外すことなく、前に倒すことが可能だ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
アウディ自慢のFSIユニット。直噴化にともない、バルブがひとつツブされ、1気筒4バルブになった。回転はスムーズで、何気なく(?)トルクを提供するタイプ。150ps、20.4kgmと、2リッターエンジンとして十分以上のアウトプットを誇る。が、「ルマン24時間レースの覇者」のパワーソースとしては、盛り上がりに欠け、どこか“暖簾に腕押し”感があり。街なかでの中低回転域では、ゴロゴロ唸り、プレミアム感をやや損ねる。
組み合わされるトランスミッションは、贅沢な6段ATで、ノーマルの「D」レンジほか、ガラっと表情を変える「S」ポジション、加えてシーケンシャルシフト用ゲートが用意される。
全体に不満ないシフトプログラムだが、パーシャルスロットルで微妙に加減速するときに、やや迷ったり、シフトダウンのショックが大きくなることがある。スタイリッシュなクルマに合わせた、プラスアルファの、一層の洗練が望まれる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
なるほど“小さな高級車”と思わせる、重厚感ある乗り心地。高速でのフラットさは、「ツアラー」と呼びたいほど。お買い物グルマというより、ロングドライブの友だ。
アウディの美点、「FFを感じさせないスムーズなステアリング」を末弟も引き継いでいて、上品。足まわりはしっかり。峠でも破綻ない走りを見せる。トレードオフとして、(かつての)イタリアン&フレンチハッチの破天荒な軽やかさはない。
(写真=高橋信宏(T)/峰 昌宏(M))
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2003年10月28日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:6608km
タイヤ:(前)225/45R17(後)同じ
オプション装備:キセノンヘッドランプパッケージ(10.0万円)/BOSE&インテリア・ライディングパッケージ(10.0万円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(5):山岳路(1)
テスト距離:660.3km
使用燃料:71.1リッター
参考燃費:9.3km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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