トヨタRAV4 Sport(4WD/CVT)【ブリーフテスト】
トヨタRAV4 Sport(4WD/CVT) 2006.02.14 試乗記 ……295万6800円 総合評価……★★★★ 大きくなったとはいえ、SUVとしては今でもコンパクトなトヨタの街乗りヨンク、新型「RAV4」。スポーツモデルに試乗、期待の乗り心地はどうなのか。
|
サイズアップを有効利用
サイズアップした功罪はこの場合、功のほうが大きい。全長4335mmは今でもSUVとしてはコンパクトな部類に属し、3ナンバーの幅は十分な室内スペースにあてられている。その限られた全長にしてもリアシートやトランクはシートバックの角度調節やネットなどのアイディアにより、スマートに有効利用される。ボディ剛性を含め足まわりのガッシリした感じも強化され、兄貴分のハリアーよりもヘビーデューティな感じを受ける。
エンジンは存在をことさら主張しないが、1.56トンと比較的軽い重量には十分。乗り心地や操舵感などをさらに洗練させれば、ミニサイズの高級SUVも創作可能。デザインとしてはディテールにおいてどっかで見たような借材が陳腐。基本骨格がいいだけに惜しい。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
ヨンクといえばヘビーデューティという既成概念を覆し、街乗り重視のSUVのはしりとして1994年に産声をあげた「RAV4」。泥臭くないスタイリッシュなデザイン、コンパクトなボディ、四輪独立懸架の足まわりなどを盛り込んだこのクラスの先駆けが、2005年11月14日に3代目へと進化した。バリエーションに3ドアはなく、5ドアのみ。全長×全幅×全高=4335×1815×1685mm、ホイールベース=2560mmとほぼすべてのディメンションを大幅に拡大した。
先代まで1.8、2リッターと2種類あったエンジンは、VVT-i(連続可変バルブタイミング機構)付き「2AZ-FE」型の改良版2.4リッター直4(170ps、22.8kgm)に一本化。トランスミッションは、マニュアル感覚で7段シフトできる「7速スポーツシーケンシャルシフトマチック」だけと構成はシンプルだ。サスペンションは前マクファーソンストラット式、後ダブルウィッシュボーン式。リアはアブソーバーを床下に斜めに配置し上部の空間侵食を極力避けたのがポイントという。
4WDは「アクティブトルクコントロール4WD」で、「S-VSC」(ステアリング協調車両安定性制御システム)とともに、車両安定に寄与すべく、電動パワーステアリング(EPS)とブレーキ制御(VSC、ABS)、駆動力制御(TRC)、前後輪トルク配分を行う電子制御カップリングを協調コントロールする。ヨンクのみならず2WDもある。
(グレード概要)
テスト車はその名の通り、走りを重視したスポーティなグレード。坂道発進時の車両のずり落ちを防止する「ヒルスタートアシストコントロール&ダウンヒルアシストコントロール制御」や「S-VSC」(ステアリング協調車両安定性制御システム)とアクティブコントロール4WD協調制御、外装ではカラードオーバーフェンダー、18インチホイールが標準装備となる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
正面メーター類は外側シェルターのわりには小振りだがスッキリ見やすく情報も完備している。センター部はナビ画面を主体に空調、オーディオなど使いやすく見た目にも楽しい。電動ムーンルーフやスマートエントリー等とともに47万8800円のオプションではあるが価値あり。ドアまわりまで含めたインパネ全体として立体的なデザインは新しくもあり力強さを感じる。
(前席)……★★★
シートの座り心地は良好。同列にあるハイトコントロールとリクライニングのレバーは操作しにくい。シートバックの形状はまずまずながらランバーサポート調整もほしい。座面後傾角は浅めながらクッションの堅さがほどほどで許容範囲内。サイドの盛り上げは乗降性との兼ね合いで上々。サイドブレーキはレバー式で安心。シフトゲートが横方向に広く曖昧でポジションを確認しにくい。
(後席)……★★★
空間的には外見以上に広い。3ナンバーの恩恵で横方向の広さも十分。背面の角度が左右別々に変化させられることにより段差は横方向の支えにもなる。垂直に近づけると箱などの積載に便利。中央部はやや狭いが緊急時には3人掛けも可能。折り畳めるタイプのシートにしてはクッションも厚めでいい。高めのフロアによる乗降性はお年寄りや子供にとってちょっと辛そうだがAクラスほど高くはなく許容範囲か。
(荷室)……★★★★
外から見て想像する以上に奥行きも深くフロア面積的にも広め。バンパー高とフラットなフロア下にも収納可能なスペースあり。後席バックレスト角度を立てるだけでも大きな箱など積めそう。またこの手のトランクは天地方向にスペースがあるものの十分に利用しにくいところだが、2本のバーとネットの組み合わせはアイディア賞で大変便利。スペアタイアをバックドアに背負うだけのことはある。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
2.4リッターの排気量を感じさせるパワー感は希薄ながらCVTはよく出来ており、エンジン回転をあまり上下させなくとも有効な加速が手に入る。当然シフトショックもなくスムーズな加速感は高級。マニュアル操作で7段階の変速も楽しめるが、シフトレバーはゲートが横方向に広くポジションを確認しにくく、前進後退を繰り返してUターンするような場合に難。エンジン騒音は室内では静かだが外で聞いていると結構勇ましい。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
乗り心地はSUVに期待する以上でも以下でもない並。重心高の高さと相対的に短いホールベースによるピッチングモーメントのせいで、それなりの姿勢変化がある。平坦な良路でも完全にフラットではなく上下動を伴うが、堅さは少なくボディ全体で吸収される。従って不快な感じはそれほどしない。電動パワーステアリングも操舵感を大きくスポイルしない範囲にチューンされているが、やや慣性モーメントは大きめ。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2006年1月18日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2005年型
テスト車の走行距離:3213km
タイヤ:(前)235/55R18 99H(後)同じ(いずれも ブリヂストン DUELER H/T 687)
オプション装備:チルト&スライド電動ムーンルーフ(9万4500円)/前席SRSサイドエアバッグ&SRSカーテンシールドエアバッグ(6万3000円)/HDDナビゲーションシステム<オーディオ>RAV4ライブサウンドシステム(27万5100円)/スマートエントリー(運転席・助手席・バックドア/アンサーバック機能付)&スタートシステム(4万6200円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(6):高速道路(4)
テスト距離:274km
使用燃料:26リッター
参考燃費:10.5km/リッター

笹目 二朗
-
アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター(FR/8AT)【試乗記】 2025.12.13 「アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター」はマイナーチェンジで4リッターV8エンジンのパワーとトルクが大幅に引き上げられた。これをリア2輪で操るある種の危うさこそが、人々を引き付けてやまないのだろう。初冬のワインディングロードでの印象を報告する。
-
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】 2025.12.12 「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。
-
BYDシーライオン6(FF)【試乗記】 2025.12.10 中国のBYDが日本に向けて放つ第5の矢はプラグインハイブリッド車の「シーライオン6」だ。満タン・満充電からの航続距離は1200kmとされており、BYDは「スーパーハイブリッドSUV」と呼称する。もちろん既存の4モデルと同様に法外(!?)な値づけだ。果たしてその仕上がりやいかに?
-
フェラーリ12チリンドリ(FR/8AT)【試乗記】 2025.12.9 フェラーリのフラッグシップモデルが刷新。フロントに伝統のV12ユニットを積むニューマシンは、ずばり「12チリンドリ」、つまり12気筒を名乗る。最高出力830PSを生み出すその能力(のごく一部)を日本の公道で味わってみた。
-
アウディS6スポーツバックe-tron(4WD)【試乗記】 2025.12.8 アウディの最新電気自動車「A6 e-tron」シリーズのなかでも、サルーンボディーの高性能モデルである「S6スポーツバックe-tron」に試乗。ベーシックな「A6スポーツバックe-tron」とのちがいを、両車を試した佐野弘宗が報告する。
-
NEW
車両開発者は日本カー・オブ・ザ・イヤーをどう意識している?
2025.12.16あの多田哲哉のクルマQ&Aその年の最優秀車を決める日本カー・オブ・ザ・イヤー。同賞を、メーカーの車両開発者はどのように意識しているのだろうか? トヨタでさまざまなクルマの開発をとりまとめてきた多田哲哉さんに、話を聞いた。 -
NEW
スバル・クロストレック ツーリング ウィルダネスエディション(4WD/CVT)【試乗記】
2025.12.16試乗記これは、“本気仕様”の日本導入を前にした、観測気球なのか? スバルが数量限定・期間限定で販売した「クロストレック ウィルダネスエディション」に試乗。その強烈なアピアランスと、存外にスマートな走りをリポートする。 -
GRとレクサスから同時発表! なぜトヨタは今、スーパースポーツモデルをつくるのか?
2025.12.15デイリーコラム2027年の発売に先駆けて、スーパースポーツ「GR GT」「GR GT3」「レクサスLFAコンセプト」を同時発表したトヨタ。なぜこのタイミングでこれらの高性能車を開発するのか? その事情や背景を考察する。 -
第325回:カーマニアの闇鍋
2025.12.15カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。ベースとなった「トヨタ・ランドクルーザー“250”」の倍の価格となる「レクサスGX550“オーバートレイル+”」に試乗。なぜそんなにも高いのか。どうしてそれがバカ売れするのか。夜の首都高をドライブしながら考えてみた。 -
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション/ルークスX【試乗記】
2025.12.15試乗記フルモデルチェンジで4代目に進化した日産の軽自動車「ルークス」に試乗。「かどまる四角」をモチーフとしたエクステリアデザインや、リビングルームのような心地よさをうたうインテリアの仕上がり、そして姉妹車「三菱デリカミニ」との違いを確かめた。 -
ホンダ・プレリュード(前編)
2025.12.14思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「ホンダ・プレリュード」に試乗。ホンダ党にとっては待ち望んだビッグネームの復活であり、長い休眠期間を経て最新のテクノロジーを満載したスポーツクーペへと進化している。山野のジャッジやいかに!?






























