トヨタ・クラウン3.0ロイヤルサルーンG(FR/6AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・クラウン3.0ロイヤルサルーンG(FR/6AT) 2005.12.16 試乗記 ……621万7050円 総合評価……★★★ 2005年10月4日、トヨタ「クラウン」シリーズがマイナーチェンジされた。装備が充実した、最上級グレード「ロイヤルサルーンG」に試乗した。 |
畳とタンスはいつまでも
その世界で歴史があり、トップに君臨し続けるものを「××界のクラウン」と評することがある。もちろん由来は「トヨタ・クラウン」のはずだ。実際にセダン不況と騒がれる中でも、2004年4月〜2005年3月の販売実績では、この価格帯にして年間10万台以上を売るという堂々の5位。クラウンはいまだ「トップオブセダン」なのである。
レクサスブランド誕生に伴い、(マジェスタを含む)「トヨタ・クラウン」は、ラインナップの頂点に返り咲いた。最上級「マジェスタ」を筆頭に「アスリート」「ロイヤル」の3役は、役割をうまく分担して、トヨタブランドを引っ張っている。群雄割拠の高級スポーティセダン市場に「アスリート」が挑み、その傍らでノンビリと独自路線を進んでいると思われるのが「ロイヤル」だ。ベージュに木目内装というインテリアの試乗車は、畳とタンスを備えた「日本の居間」を思い起こさせる。「モダンリビング」などかけらもない、昔ながら味わいだ。レクサスにお株を奪われたような「おもてなし」という言葉も、いまだにアクセサリーとして存在するレースのシートカバーを付けることにより、わかりやすくうったえてくれる。こんな愛すべきロイヤルは、販売台数を見るとアスリートのおよそ2倍も売れていることがわかる。そのポジションは健在だ。
トラディショナルな見た目とは裏腹に、安全性、走行性能、環境への配慮などは進化した。まるで、近代建築の中に和風の居間を設け「スローライフ」を楽しむような感覚。「ロイヤル」は息抜きができるクルマだ。ノンビリ走るのも悪くないなと思わせるクルマも珍しい。もう少し乗り心地がよければ、長く乗りたいなと思うのだが。
拡大 |
拡大 |
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2003年12月にフルモデルチェンジした12代目「クラウン」は「ZERO CROWN」をキャッチフレーズに、プラットフォームやエンジン、トランスミッションなど、主要コンポーネントを一新。「静から躍動への変革」を掲げて、走行性能の向上や、スポーティなスタイリングが与えられた。ラインナップは、「ロイヤル」シリーズと、スポーティな「アスリート」の2種類。
2005年10月のマイナーチェンジでは、内外装の化粧直しに加え、従来のエンジンラインナップ(3リッターと2.5リッター)に、アスリート用として3.5リッターV6が追加された。同時に2.5リッターモデルはトランスミッションが6段へあらためられた。さらに車内への不正侵入を感知するオートアラームも標準装備となり、セキュリティも強化。
(グレード概要)
スポーティな「アスリート」に対してコンフォート指向の「ロイヤル」は、ベーシックな「ロイヤルエクストラ」と、上級「ロイヤルサルーン」があり、それぞれにFRと4WDモデルを用意する。最上級グレード「ロイヤルサルーンG」には、快適装備や安全装備などが充実。すなわちリア分割パワーシートやサンシェード、プリクラッシュセーフティシステムなどが備わる。50km/h以上で有効な車線逸脱防止のLKA(レーンキーピングアシスト)や、腕時計がキー代わりになる「キーインテグレーテッドウォッチ」などにくわえ、G-BOOKアルファの専用DCM付きHDDナビを装着することにより緊急時にオペレーターが対応してくれる「ヘルプネット」も、マイナーチェンジの際にオプションとして追加された。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
新たに備わったG-BOOKアルファの操作を含め、ボタン類の配置は適切。ウィンドシールド上に投影されるHUD(ヘッドアップディスプレイ)は、好みの表示位置が選べ、見やすい。通常は速度表示されるが、その直下にあるスピードメーターは元々視認が容易。それよりカーナビと連動して、交差点近くになると進行方向を示してくれるのがありがたい。オプションのキーインテグレーテッドウォッチは便利でおもしろい提案だと思うが、お気に入りの腕時計にするには、デザインバリエーションが欲しい。
(前席)……★★
身長176cmのリポーターには、シートの座面長が短く、ホールド性も乏しく感じた。さらに多少柔らかめの感触で、長時間の運転では疲れを伴った。センターアームレストの中は3段に細かく分かれる物置きが備わるが、一段一段の深さが無く、CDなどが縦に入らない。入れられる物は限定されるだろう。
(後席)……★★★★
後席は天国だ。アームレスト内のスイッチで、リアオートエアコン、リクライニング、シートヒーター、オーディオなどが操作できる。アームレスト後方には、缶ジュース5本が入るというクールボックスがあり、後席住人が独り占めできる。上を見上げると後席用の独立したルームランプが備わる。そのおかげでルーフには目障りな物が無く、視界が良いという恩恵つき。後席用のカーテンエアバッグも標準装備される。
(荷室)……★★★★
トランクスルーなどの機能はないが、そもそもの容量は大きい。奥行きがあまりない分、荷物の取り出しもしやすくなる。試乗車はリアオートエアコン装着車なので、その分の張り出しがあり、およそ426リッター。上級サルーンの指標となる、10インチゴルフバックの収納については4セットが可能という。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
通常は2500rpm以下でギアチェンジしてしまうため、静粛性が高い。100km/h巡航時の回転数は1800rpm(6速)。基本的に変速が早いプログラミングでしずしずと走るが、ひとたびアクセルペダルを踏み込むと、2000rpmから最大トルクの90%を発揮するという力強い加速感が得られる。それだけでなく、筒内直接噴射のストイキD-4エンジンは、3リッタークラスとしては燃費も良い。燃費を意識しない走行をした試乗時にも、10.9km/リッターを記録した。4500rpmあたりからようやく気になり始めるエンジン音は変なばらつきはなく、振動も少ないため快適。
(乗り心地+ハンドリング)……★★
乗り心地は期待していたほどではない。町乗りレベルでは快適に感じる足まわりも、速度を上げるとともに細かい路面の凹凸を鋭く拾い始める。ふんわりとしたボディの動きの中に、ゴツゴツとした感触があり、ダンパーとスプリングのマッチングがよろしくないと考えられる。
ステアリングのロックトゥロックは3.5回転とスローだが、山道などでの回頭性は高く、ノーズが気持ちよく切れ込んでいく。「ZERO CROWN」で採用されたマルチリンクのリアサスペンションは、コーナリングでしっかりとふんばってくれる美点を持つ。
(写真=河野敦樹)
|
【テストデータ】
報告者:本諏訪裕幸
テスト日:2005年11月8〜9日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2005年式
テスト車の走行距離:1514km
タイヤ:(前)215/60R16(後)同じ(いずれもトーヨーPROXES J33)
オプション装備:クリアランスソナー(4万2000円)/ナイトビュー(ヘッドアップディスプレイ付)(31万5000円)/レーダークルーズコントロール(ブレーキ制御付)(7万3500円)/レーンキーピングアシスト(28万3500円)/本革シート(シートヒーター付)(18万9000円)/HDDナビゲーションシステム<クラウン“マークレビンソン”プレミアムサウンドシステム、インダッシュ6連奏DVD/CDチェンジャー、MD、AM/FMラジオ、TV、サウンドライブラリ、5.1ch対応14スピーカー他>(29万5050円)
走行状態:市街地(3):高速道路(5):山岳路(2)
テスト距離:560.5km
使用燃料:51.5リッター
参考燃費:10.9km/リッター

本諏訪 裕幸
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
トヨタGR GT/GR GT3
2025.12.5画像・写真2025年12月5日、TOYOTA GAZOO Racingが開発を進める新型スーパースポーツモデル「GR GT」と、同モデルをベースとする競技用マシン「GR GT3」が世界初公開された。発表会場における展示車両の外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。































