トヨタ・クラウン ハイブリッド ロイヤルサルーンG(FR/CVT)
クラウンのよさの根源は…… 2013.05.09 試乗記 これまでのユーザーを驚かすフロントマスクと、ハイブリッドシステムの本格導入が注目される新型「クラウン」。このクルマが持つ根源的な魅力について、雨の箱根で考えた。ハンドリングは素晴らしい
「条件が悪いときほど、素性のよさが出るもんだなァ」と、ハンドルを握りながら感心していた。乗っているのは、「トヨタ・クラウン ハイブリッド ロイヤルサルーンG」。昨2012年末に発売された、14代目クラウンである。
窓の外はドシャぶり。屋根の上では、犬と猫が戯れていて……と、ちょっと詩的にテキストを続けたいけれど、実際にはそんなことはない。車内は静かだ。アップダウンの激しい山道の、あちらこちらで川ができている。
新しいクラウンの足まわりはしなやかで、路面の凹凸をキレイにならし、不快な突き上げを許さない。かつては、運転者と路面との間にゴムの薄膜を挟んだかのような、独特の痛痒(つうよう)感がクラウンの乗り味を醸し出していたこともあったが、先々代のゼロ・クラウンからだろうか、そうした特殊なドライブフィールはキレイさっぱり払拭(ふっしょく)された。最新クラウンの運転感覚は、重箱の隅をつつくような職業的な観察を別にすれば、ジャーマン・プレミアムのモデルと選ぶところはない。もちろん、クルマの性格上、総体的にソフトで、優しい乗り心地だが、“安楽一途(いちず)”のクラウンを知る身には、「意外にハード」と感じられた。
新型のハンドリングは、素晴らしいものだ。ステアリング操作に従って、素直に向きを変えていく。ハンドルを切ったときの感覚がいい。電動パワーステアリングのアシストも自然だ。なによりクルマ全体がスムーズに動くのがいい……と、賛辞を頭の中に次々とメモしつつ、「クラウンのよさの根源は……」と大上段に考えながら、「ボルボV40 T5 R-DESIGN」に乗り換えた。実は、ボルボのプレス試乗会に、クラウンでお邪魔していたのだ。
雨は激しさを増している。隣り合ったクルマに乗り換えるだけで、肩口がグッショリとぬれてしまった。213psのハイパワー・ボルボを駆って、山道を登り始めたとたん、「ああ、そうか!」と当たり前のことに気がついた。