スズキ・エスクード2.0XG(4WD/4AT)【ブリーフテスト】
スズキ・エスクード2.0XG(4WD/4AT) 2005.12.03 試乗記 ……220万5000円 総合評価……★★★★ 2005年5月、スズキの街乗りヨンク「エスクード」が3代目に進化した。続々登場するライバル車のなかでも、新型エスクードには選びたくなる独自の世界があるという。選びたくなる理由がある
2004年11月に登場した2代目「スズキ・スイフト」は、それまでのスズキの小型乗用車と比べると、デザインも走りも、あきらかに変わった。もちろんいいほうに。今年5月に登場した3代目「エスクード」も、同じ流れの上にあるクルマという印象を受けた。
シンプルでクリーンなデザインは、数あるライバルのなかでも、もっとも洗練されている。インテリアは広く使いやすいだけでなく、質感も上がっている。走りは、ラダーフレームを捨て、モノコックボディを導入したことで土臭さが消えた。4WDシステムがパートタイム式からフルタイム式になったこともあって、オンロードでの乗り心地とハンドリングを、ともに飛躍的にアップさせている。どれもスイフトの進化と共通するものだ。
そのうえで、デザインには初代のエッセンスを各所にフィードバックしたり、パワートレインは縦置きのままとして前後の重量配分をほぼ50:50にしたり、4WDはセンターデフロックやローレンジを引き続き備えることで悪路走破性にこだわるなど、エスクードとしてのアイデンティティを確立していこうという意志を感じる。
気になるところを挙げるとすれば、グローバルカーゆえのサイズだろうか。全長は4390?とライバルに比べると短いぐらいだが、全幅は1810?もある。たしかに狭い道では、その数字を実感することもある。でもそれ以外は、これといって気になるところはなかった。
このクラスのSUVはけっこうな激戦だ。「三菱アウトランダー」がデビューし、「トヨタRAV4」もモデルチェンジした。しかしエスクードには、積極的に選びたくなる理由がある。縦置きパワートレインや本格的4WDシステムが、独自の走りの世界を作り出しているからだ。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1988年5月に初代「エスクード」を発売。“街乗りヨンク”を打ち出しつつも、「ラダーフレーム」「パートタイム4WDシステム」など正統派クロカンのスペックも持ち合わせていた。1997年のフルモデルチェンジを経て、現行の3代目は2005年5月に発表。「ビルトインラダーフレーム構造」と呼ばれるモノコックシャシーやフルタイム4WD、四輪独立懸架サスペンションなど新機軸を盛り込み、一歩コンベンショナルな方向へとシフトした。ボディは全幅1810mmの立派な3ナンバーサイズとなり、5ドア5人乗りのみ。エンジンは2リッター直4と2.7リッターV6の2本立て。
(グレード概要)
2リッターはベーシックな「2.0XE」と上級「2.0XG」2種があり、どちらも4段オートマチックと、5段のマニュアルトランスミッションがラインナップされる。V6モデルと違い、ESPは採用されていない。テスト車の「2.0XG」は「XE」に比して、17インチアルミホイール&タイヤやハロゲンフォグランプ、本革巻きステアリングホイールなどが追加装備される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
インパネの造形そのものはオーソドクスだが、ブラックをベースにシルバーのアクセントを用いたコーディネイトはクールだ。質感もいままでのエスクードと比べると、かなりレベルアップしている。スイッチはほとんどがセンターパネルに集まっているのでわかりやすい。このセンターパネル、初代からの伝統である縦置きパワートレインを受け継いだために、横置きのライバルと比べると幅が広めだが、ボディ幅に余裕があるので、窮屈には感じなかった。
(前席)……★★★★
ラダーフレームが消滅し、モノコックボディになったことで、フロアは低くなった。シートの高さは絶妙で、乗り降りは数あるSUVのなかでもかなりしやすい。ドライビングポジションは旧型よりも足をやや下方に伸ばす、ゆったりした姿勢になった。フロントウインドーの傾きが強すぎないので、顔まわりの余裕もある。シートはサイズが大きめで、クッションの厚み感もあり、なかなか快適。サイドサポートは控えめだが、表皮の素材がすべりにくいファブリックなので、コーナーで体がすべることはなかった。
(後席)……★★★
着座位置はフロントより高め。折り畳みを考えたためか、座面の傾きがほとんどないのは残念だが、背もたれはリクライニングできるので、理想に近い角度に設定できる。フロント同様サイズは大きめで、座り心地は硬すぎず、快適だ。スペースはこのクラスでトップレベルで、身長170?の自分が前後に座ると、ひざの前には20?近くものスペースが残る。
(荷室)……★★★★
リアゲートは横開き式。スペアタイヤをマウントしているために、開閉は重めだ。スマートなエクステリアデザインに見合った、インナーマウント仕様の設定もほしいところだ。ただしスペアタイヤが床下にないぶん、フロアは低く、サスペンションの出っ張りも小さい。リアシートの折り畳みは6:4分割で、シートバックを前に倒したあと全体を前に跳ね上げる。畳んだときにフロアをもっとも低くできる方式だ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
試乗した2リッターでも、車両重量は1.5tを越える。そのわりには加速は不満ない。上り坂ではアクセル全開になるものの、平坦地では右足に余裕を残して走れる。音はとりたてて騒々しくも、不快でもない。3000〜4000rpmでこもり気味になるものの、それを越えると澄んできて、レッドゾーンまできれいに回り切ってくれる。
ATセレクターはジグザグ式のゲートを持っており、マニュアルシフトもしやすい。このセレクターをはじめ、ペダルやステアリングといった操作系はどれも適度な重さと剛性感を備えており、エスクードを上質なクルマに感じさせてくれる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
乗り心地は、タイヤの重さや硬さは伝わってくるものの、それ以外は細かい上下動から大きなショックまでを、うまく丸め込んでくれる。セダンやワゴンと比べるとおおらかさが残っているが、モノコックボディになったことで、フィーリングはかなり乗用車的になった。
オンロードでのハンドリングは、前後の重量配分がほぼ50:50であるという事実を実感する。前後のグリップバランスがとれていて、ペースを上げても前輪はなかなか悲鳴を上げず、切ったとおりに曲がっていく。ロールが抑えられているのもありがたい。ブレーキも信頼できる効きを示してくれた。
オフロードでは、四輪独立懸架になったサスペンションのストロークは限られるものの、フルタイム式をベースにセンターデフロックやローレンジも選べる本格的な4WDシステムが、このクラスのSUVとしてはハイレベルの走破性をもたらしてくれる。ボディやシャシーの剛性感もじゅうぶんだった。欲をいえば、V6に標準装備されているESPをこちらにも選択可能にしてほしい。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:森口将之
テスト日:2005年9月13日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2005年式
テスト車の走行距離:5880km
タイヤ:(前) 225/65R17(後)同じ(いずれもブリヂストン DUELER H/T)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(5):山岳路(2)
テスト距離:328.8km
使用燃料:43.5リッター
参考燃費:7.6km/リッター

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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