メルセデス・ベンツ C280 4マティック ステーションワゴン アバンギャルド(4WD/5AT)【短評(後編)】
“コンパクト”の価値(後編) 2005.11.09 試乗記 メルセデス・ベンツ C280 4マティック ステーションワゴン アバンギャルド(4WD/5AT) ……654万8850円 グレードアップされた新エンジンの実力は? 別冊CG編集室の道田宣和が試乗した。前編に引き続き、その走りと乗り心地を後編で語る。実力アップの新エンジン
C240に代わって別格のC55AMGを除くトップモデルに躍り出たC280はネーミングから想像されるのと異なり、実は3リッターの排気量を持つ。ボンネットを開けるとカムカバーの中央になにやらメカっぽい風情のアルミフィンが顔を覗かせ、一見メルセデス得意のコンプレッサー仕様を思わせるが、これは単なる電子部品の冷却用。新設計のV6はあくまで排気量の大きさを利した自然吸気型である。
231ps/6000rpm、30.6mkg/3500〜4000rpmのパワー、トルクはその発生回転数からも想像されるように、低回転域でのフレキシビリティに富むと同時に中・高回転も苦手としない万能タイプである。したがって、シリーズきってのヘビー級であるにもかかわらず動力性能は充分以上で、平坦路はもちろんのことワインディングロードでも結構なペースをキープして駆け抜けることができる。エンジン音は従来型に比べてかなり洗練されているが、回すとわずかにV6特有のベーッと湿った唸りが残っている。
安心して楽しめるワゴン
惜しむらくは今回のマイナーチェンジでシリーズの多くが最新型の7ATに移行した中、ここまでは手が回らなかったか、“4MATIC”(4WD)だけが5ATに留まったこと。5段でもメーター読みの100km/hがDレンジで2300rpmとことさらローギアードなわけではなく、スロットル開度/踏み込み速度を感知して1速発進と2速発進を使い分けるATのでき自体に不満があるわけでもないが、いったんあのスムーズさを知ってしまうとぜひこちらにもと思うのは無理からぬところだろう。都内を出発して箱根まで往復した燃費の平均は6.7km/リッターだった。
乗り心地と操縦性もおそらくCクラスとしてはトップレベルにあるはずだ。持ち前のしなやかさとストロークの長さにドッシリとした重量感が加わり、さらにそれに呼応するだけの容量を持ったダンパーが煽りを効果的に抑えている。ハーシュが少ないのも特筆される。以前の4MATICと異なり前後のトルク配分はともかく、ほぼ常時四輪が路面を掻いていると実感させる駆動システムは前205/55R16 91V、後225/50R16 92V(コンチネンタル・スポーツコンタクト2)と2種のサイズを使い分けたタイヤとあいまって、イニシャル弱アンダーの絶妙なコーナリングを披露する。ワゴンとしては相当に楽しめるクチだが、その割にESPの介在は少なく、結果的に一度もスイッチをオフにしないで走ったほどだ。
それでも全体にスポーティというより、安全と安心に重点を置いていると感じさせるところがメルセデスのメルセデスたる所以である。ステアリングフィールがまた秀逸。ふだんは泰然自若としていて特にシャープとも思われないが、それでいてちゃんと微舵が効き、かつ自然な感じで自ら収束する。このクルマで「ジコる」のはかなり難しいはずである。
(文=道田宣和(別冊CG編集室)/写真=荒川正幸/2005年11月)
・メルセデス・ベンツ C280 4マティック ステーションワゴン アバンギャルド(4WD/5AT)【短評(前編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000017186.html

道田 宣和
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