アウディA3スポーツバック2.0TFSI (2ペダル6MT)【海外試乗記】
ほどほどと上質 2004.09.08 試乗記 アウディA3スポーツバック2.0TFSI (2ペダル6MT) 「アウディA3」の5ドアバージョンが、「スポーツバック」のサブネームを得て登場した。南仏で乗ったジャーナリストの金子浩久が報告する。直噴とターボの相性
「アウディA3」の5ドア版は、特別に「スポーツバック」と呼ばれる。そのココロは、「クーペを思わせるスポーティなエレガンスと5ドアモデルの多様性をあわせもち、最先端テクノロジーとアウディ特有のダイナミズムで武装する」。アウディは、そう謳っている。「先代A3の5ドアとは違うんだよ〜」と、ちょっとジマンしたい構えなのだ。
それもそのはずで、「A3スポーツバック」には、「TFSI」と称するガソリン直噴ターボエンジンが搭載されている。クルマのキャラクターについては後述するとして、この2リッターTFSIエンジンについて報告すると、実にトルキーでドライバビリティに優れたものだった。
一般的に、ターボエンジンは圧縮比を上げるのが難しく、特に低回転域でのレスポンスが鈍くなる傾向がある。アイドリングからある程度の回転域までは、スロットルペダルを踏み込んだ際の反応が、鈍感になってしまう。
だが、ターボによって過給するにしても、ガソリンをシリンダー内部に直接噴射すれば、シリンダー内の温度を抑え、圧縮比を上げることができる。圧縮比を上げれば、低回転域でもスロットルレスポンスを損なわずに済む。いいこと尽くめの連鎖で、ガソリン直噴とターボ過給は相性がいい。
スポーツバックの存在理由
そうした謳い文句は、実際に乗ってもその通りで、2000弱から5000rpmの実用的な回転域で太いトルクを発生する。扱いやすくて、スポーティなエンジンだ。ただ、欲をいえば、高回転域まで回したときの、内燃機関特有の気持ちよさが備わっていたらもっといい。ちなみに、この2リッターTFSIエンジンは今秋発表予定の「フォルクスワーゲン・ゴルフGTI」にも搭載されることになっている。
組み合わされるトランスミッションは「DSG」。2枚のクラッチを持ち、次のギアをあらかじめ用意してシフトに備えるギアボックスで、2004年上半期現在、世界に数多く存在するATモードを備えたマニュアルトランスミッションのなかで、ずば抜けた存在だ。変速がスムーズで、速さに優れ、おまけに「S」モードでのスポーティな演出が楽しめる。
そうしたDSGの優秀さは、もちろん、A3スポーツバックでもすこしも損なわれておらず、TFSIエンジンとの組み合わせによって、実に洗練された印象を残す。アウディが標榜している「最先端テクノロジーとダイナミズム」が見事に結実している。ATモードで流して走ってよし、積極的にパドルをシフトしてもまた楽しい。
乗り心地とハンドリングについては、A3と共通するものだ。すべての動きがスムーズかつナチュラルで、気に障るようなところがどこにもない。やや強めのダンピングがサスペンションに与えられているが、突き上げなどが不快に感じられる類のものではなく、姿勢変化のすくなさに寄与している。
A3スポーツバックは3ドア版に比べてボディ全長を83mm延長し、そのうち68mmがリアオーバーハングぶん。運転して、その延長分を意識させられることもない。
この「5ドア化を強く意識させられない」ところに、実はスポーツバックの存在理由が潜んでいるのではないか。運転すれば3ドアとほぼ変わらぬ印象を得ることができるし、エンジンに限っていえば3ドア以上だ。走りっぷりは小さく短い3ドア版に優るとも劣らず、ドア2枚とラゲッジスペースが追加されて、そのぶんちょっと便利になったように思える。
絶妙?中途半端?
そう書くといいことばかりのように聞こえるが、その限りではない。A3スポーツバックが、「A4」や「A6」に設定されているアバントのような“A3アバント”ではない点に答えがある。A3スポーツバックのプロダクトマーケティング責任者アンドレアス・ディーツも認めていたように、A3スポーツバックはステーションワゴンではないのだ。
ラゲッジ容量は3ドアの350リッター(最大時1100リッター)に対して、370リッター(1120リッター)とわずか20リッターしか増量されていない。おまけに、後席は分割可倒式になっているとはいえ、ダブルフォールディングできない。つまり、座面が持ち上がらず、背面もかなりの角度を残すところまでしか倒れない。これでは状況と用途にあわせた使い方が限られてしまうだろう。
もっとも、そこがアバントではない所以であって、アバントほどの積載量を求めないカップルや子供の小さな夫婦などには好適なのかもしれない。いくらヨーロッパといえども、誰もが毎週のようにアウトドアスポーツを楽しんでいるわけではないだろうし、日曜大工用の大荷物ばかりを運んでいることもないだろうから。
だから、ちょうどこのくらいのサイズと仕立てのクルマを“絶妙”と歓迎する人もいれば、“中途半端で使いものにならない”と一顧だにしない人もいるだろう。“ニッチ”とは、文字通り万人向けではない。
一方で、「スバル・インプレッサ」やかつての「マツダ・ファミリアスポーツワゴン」のように、わが日本の自動車メーカーは“5ドアハッチバック以上”“ステーションワゴン未満”のクルマをつくることにかけては一日の長がある。それらのクルマと、A3スポーツバックとの違いは、TFSIエンジン、クワトロシステム、DSGなどの“高級ドライビング装備”と上質仕立てにある。
クルマに、何を、どの程度求めるかによって選択肢は変わってくるが、A3スポーツバックは、ほどほどのサイズで上質な走りっぷりを求めている人にはピッタリの1台だ。じきに発表される「BMW 1シリーズ」とライバル同士になることが今から予想される。
(文=金子浩久/写真=アウディジャパン/2004年9月)

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