アウディA6オールロードクワトロ4.2 FSI(4WD/6AT)/3.2 FSI(4WD/6AT)【試乗記】
公道で無敵の存在 2006.09.16 試乗記 アウディA6オールロードクワトロ4.2 FSI(4WD/6AT)/3.2 FSI(4WD/6AT) ……992.0万円/865.0万円 「アウディA6」ベースのクロスオーバーモデル「オールロードクワトロ」がフルモデルチェンジ。シングルフレームのフロントマスクと直噴エンジンを採用するなどして、新世代に移行した。「すべての道」を走破する性能に感心しつつも、その高価格に顔をゆがめながら、リポーターはこのクルマの価値を探る。
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第二世代オールロードは約1000万円
26年前の1980年、クワトロコンセプトによってオンロード4WDのパイオニアになったアウディは、次はオン、オフの双方において最上のドライビングダイナミクスを演じることができるクルマに挑戦した。それが具体化されたのが2000年に登場した「オールロードクワトロ」である。「A6」系をベースにしたこれは、オンロード中心の4WDワゴンと、オフロードを主体にしたSUVの間にあって、双方の能力を最大限に両立させたクルマだ。いわば文字通りの公道での万能車、陸の王者というわけだ。
今回の第二世代オールロードは、2年前にA6がシングルフレームグリルを持った新世代に移行したのに伴って正常進化したモデル。メーカーでは依然として世界にライバルが存在しない、ユニークかつ孤高な位置に立つクルマとしてアピールし、具体的には「A6アバント」と、昨秋ヨーロッパでデビューしたSUV「Q7」との間に位置すると説明する。実際にはA6アバントをベースに、ボディ細部をモディファイし、オフロードにも対応できる足まわりを組み付けたクルマである。
A6アバント・クワトロと同様に3.2のV6FSIに加えて4.2V8もFSIユニットとなった。価格はV6が790.0万円、V8は980.0万円と高価だが、考えてみるならA6クワトロ自体がそれぞれ736.0万円、954.0万円と、そもそもがかなりの金額になっている。従って絶対的な価格への評価はともかく、顧客には納得してもらえるだろうというのがアウディの考えだろう。
素晴らしい機械は尊敬に値する
4.2と3.2の双方に乗った印象をまとめるなら、基本的には先代と同じだった。すごくよくできた機械であるとともに、尊敬に値するクルマだと感じた。確かにこれ1台あれば、世界中どこでも普通の場面なら無敵の存在になり得ると思ったのだ。
だが同時に、A4アバントのクワトロ2台分の価値があるかは、やはり疑問だった。日本での現実的な使用状況を考えるなら、オールロードといえども、できることはA4とそんなには変わらないのである。しかも聞けば、オールロードクワトロのオーナーは日本では大半が都会に棲息し、90%以上がオフロードを経験していないのだ。
このクルマの最大の価値は、名前のとおりに道を選ばずに走れるということ以上に、驚くほどの機械的洗練性をもってそれを成し遂げ得ることにある。全体を貫くリファインメントと完成度の高さ、それによってドライバーが直接に感じる快適性と絶大な安心感、それが1000万円近く払って得られるものだろう。
多くのプレスは、挙動が軽いとしてV6のほうを評価すると思うが、個人的にはこのクルマならV8を選びたいと思った。V6はそのエンジン性能曲線ではわからないトルクの落ち込みが感じられるという分析的な面もあるが、どんな領域でも期待以上のレスポンスが引き出せるV8ならではの、文字通りストレスフリーなドライブ感覚が気に入ったからだ。
それにこのV8は基本的にとてもスポーティで、5000rpm以上の高回転域ではまた違った世界を見せてくれる。6段ティプトロニックの応答もまた気持ちがよく、相当に肥大化したボディは2トン近くもあるというのに、それがふた周りも小さいかのように扱える。
最適な駆動力配分が生み出す安心感
車高を主体としたサスペンションモードが5つから選べるのはオールロードの売り物である。地上高が200mmにまで上がる「リフト」と、速度に応じて195mmから155mmの間で3段階に変化する「オールロード」は、オフロードもふくまれた場合のモードで、試乗会場に近い箱根では「コンフォート」と「オートマチック」、そして「ダイナミック」の3モードを試した。コンフォートは地上高が標準の155mmのまま、一方一番低くなるダイナミックは140mm、これに対してオートマチックは120km/hまでは155mmで、これ以上の速度になると140mmに落とし、反対に70km/h以下に速度が落ちると155mmに復帰する。
基本的にはこのオートモードを選んでおけばいいが、試乗中は様々なモードを試した。さすがにダイナミックに切り替えると、タイヤハウスの隙間がなくなるほど下がった状態になる。確かにクルマの挙動は機敏になるが、それでもサスペンションのトラベルを巧く使うかのように適度に残されたロールと、きちんとしたダンピングによって快適性は保たれる。加えて、常に前後に最適な駆動力が配分されていることを体感しながら走るときに、他のクルマでは求め得ない絶対の安心感と、高速移動に対する絶大な信頼性が生まれてくる。
たしかにオールロードは、普通の公道では無敵な存在に感じた。リポーターは巨大なSUVを生理的に好まないが、このクルマに1000万円近くの価値を認める人の気持ちはそれなりに理解できた。
(文=大川悠/写真=荒川正幸/2006年9月)

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
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