第39回:アウディA6
2019.07.03 カーデザイナー明照寺彰の直言 拡大 |
アウディ伝統のEセグメントモデル「A6」が、5代目にモデルチェンジ。新世代のシャシーやパワートレインの採用など、その“中身”が話題を呼んでいる新型だが、“外見”=デザインの出来栄えはどうなのか? 現役のカーデザイナー明照寺彰が斬る。
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行き着くとこまで来ちゃってません?
永福ランプ(以下、永福):アウディのデザインについては、以前「袋小路にはまっているんじゃないか?」って話をしましたが、明照寺さんは新しいA6をどう見ましたか?
明照寺彰(以下、明照寺):まず全体のプロポーションですけど、これはA6が代々継承しているシックスライトですね。A6は頑固にこれを守っているわけですが、「その範疇(はんちゅう)においてスポーティーなセダンとして正常進化したな」と思います。
永福:元が精緻すぎるので、それを崩す方向でしか変化を与えられていないようにも見えますが。
明照寺:もうちょっと基本的な話からしましょう。アウディの特徴は、ベーシックなシルエットを守りつつ、すごく隙がないところで、BMWやメルセデス・ベンツと比べても、そういう面で差別化ができていると思います。高級セダンの王道はFRプロポーションですけど、アウディは独自のものを構築してる。FFベースの4WDですから、プロポーションとしてはFRよりむしろこっちの方が大衆車的なんですけど、実際にはそうは感じさせないレベルに達していますよね。
永福:達しすぎちゃって、行き場がなくなってませんか?
ほった:……永福さん、アウディになんか恨みでもあるんですか?(笑)
永福:いや、高く評価してるからこそ厳しい目で見ちゃうんだよ。
明照寺:A6に関して言うと、例えば以前取り上げた「A8」に比べると、よりショルダーにブリスターフェンダーが乗っかる構成がはっきりしてるんですよ。こういうところには、よりダイナミックな印象を持ちましたよ。
永福:精緻さにマッチョさを加えた感じでしょうか。
明照寺:フロントフェンダーよりもリアフェンダー上部の造形感が、このクルマの見どころじゃないかと思います。
フロントマスクがどうも気になる
ほった:個人的には、ちょっと煩雑なイメージもあるんですが。
明照寺:確かに線は多いです。サイドウィンドウのすぐ下にも、すーっと線が入ってますよね。リアのほうはボリュームを出すことに成功しているので、いいんじゃないかと思いますが、フロントはというと、ボリューム感より線の多さが勝って見える。A8同様、やっぱり煩雑な感じがします。ただ、全体としてはA8より魅力的な造形に仕上がってると思いますよ。
永福:A8よりは思い切りがいい?
明照寺:そうですね。ただ、フロントマスクがなんだか気になります。フロントグリル付近のプロポーションが、ちょっと上向きに見えるんです。
永福:上向きというのは、いわゆるスラントノーズということですか?
明照寺:この連載でもメルセデスやボルボの例を紹介しましたが、いまはいろんなメーカーが逆スラントを指向しているじゃないですか、そんな中、アウディの顔は依然として上を向いてる。そこがイマドキのスポーティーな表現からは外れてるって感じるんですよ。ライバルはFRのフロントミドシップなので、フロントの“造形しろ”が多く、逆スラントにもしやすいんです。それがアウディはFFベースなので、やっぱり鼻先に中身が詰まってます。その分自由度がないのは確かなんで、ひょっとしたら「やりたくてもできない」のかもしれませんけど。
ほった:そういう部分もあるかもしれませんが、それ以前に、なんというか「顔がうるさい!」って感じはしませんか? 他の部分はすごくかっこいいんですけど。
明照寺:私も基本的にはかっこいいプロポーションだと思うんですよ。シンプルですしね。ただ、おっしゃる通りでフロントが煩雑なんです。特にディテールが。A8もそうですけど、グリルの輪郭のグラフィックがすごく強くて、立体の魅力が感じられない。メッキの横桟(よこざん)が平面的に見えているところなんかも気になります。
永福:グラフィックというのは、平面的に見える部分という意味ですね。
明照寺:そこがもったいないと思います。
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「変えなきゃ!」という強迫観念を感じる
明照寺:バンパー左右のインテークまわりなんかも、意外と複雑なことやっていて、それでいて質感が得られてない。最近のアウディでは、SUVの「Q8」や「Q5」は、プロポーションも顔も立体的で線も整理されていて、すごく強くて質感も高いんです。なのに、なぜセダン系、非SUV系がこういう煩雑な感じになってしまうのか、気になりますね。
永福:ひたすら精緻な美でステータスを上げてきたセダン系のアウディが、シングルフレームグリルで強さも獲得して、それも完璧に洗練させて完成形にしたところで、ついにやることがなくなって、やや小手先に走ってしまっているように見えるなぁ。
明照寺:ただ、最近本国で「A4」がマイナーチェンジしたじゃないですか。それでちょっと顔が整理されたんですよ。A6も今後に期待じゃないでしょうか。
ほった:まだ出たばっかりだけど(笑)。
明照寺:それぐらい、どうも“顔”だけがしっくりこないんです、新型A6は。結局顔って最後までこねくり回すところなので、それが最後に悪い方向に行ったのかな。
永福:やっぱり「何か変えないと!」っていうことじゃないでしょか。モデルチェンジしたのがわからないと困るという。
明照寺:そうでしょうね。先代に対しても、他メーカーに対しても。アウディの場合、ボディー全体がシンプルなので、顔でどれだけ先進感を出せるかというところが重要なんでしょう。……でも、やっぱりちょっと煩雑ですね。この間取り上げた「BMW 3シリーズ」もそうでしたけど、グリルの縁も淡泊で、立体の強さを感じないのはマイナスです。
これは、ちょっとどうなんだ?
ほった:ていうか、単純にグリルがデカすぎじゃないですか? 最近、クルマの顔のデザインが、どれもグリルに頼りすぎじゃないかと思うんですよ。レクサスとか、アウディとか。
永福:そして巨大化レースが止まらない。でも、いまグリルをちっちゃくするのは勇気いるだろうね。
明照寺:後は、フロントも含めて全体に加飾過多なのかなぁ。リアバンパーの、このマフラーっぽい部分も、実はふさがってるただの飾りだったりするんで。
永福:えっ、これ、ふさがってるんですか?
明照寺:ふさがってました。
永福:まったくのダミーですか? (写真を拡大して)あ、ホントだ。完全なダミーだ。これはイカンでしょう! これは許せない(笑)! 排気の噴出はクルマのひとつの命じゃないですか。それが完全にダミーというのはイカンなー。なによりアウディらしくない!
ほった:ダマすならダマすで、もっと上手にやってほしいですよね。こんな適当にやるくらいなら、マフラーの存在を隠すほうがはるかにいいのに。
明照寺:ちょっとどうなんだって思いますよね(笑)。でも、こうして後ろ姿を見てみると、A6はやっぱりリアのスタンスがすごくいいんですよ。アウディのセダンは、どれもリアはすごくいいんです。たたずまいが。
ほった:そういうたたずまいのよさを、おせっかいなディテールがスポイルしちゃってるっていうのが、今回の結論ですかね。
(文=永福ランプ<清水草一>)

明照寺 彰
さまざまな自動車のデザインにおいて辣腕を振るう、現役のカーデザイナー。理想のデザインのクルマは「ポルシェ911(901型)」。
永福ランプ(えいふく らんぷ)
大乗フェラーリ教の教祖にして、今日の自動車デザインに心を痛める憂国の士。その美を最も愛するクルマは「フェラーリ328」。
webCGほった(うぇぶしーじー ほった)
当連載の茶々入れ&編集担当。デザインに関してはとんと疎いが、とりあえず憧れのクルマは「シェルビー・コブラ デイトナクーペ」。
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