アウディA6オールロードクワトロ4.2 FSI(4WD/6AT)【ブリーフテスト】
アウディA6オールロードクワトロ4.2 FSI(4WD/6AT) 2006.12.01 試乗記 ……1006万円 総合評価……★★ 好調アウディの上級ワゴン「オールロードクワトロ」に乗り、古株テスターは言った。「技術の粋を集めたクルマが、必ずしもいいクルマではない」と。
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楚々としたアウディがいい
このところ出せばヒットの状態が続いたアウディだからこそ、ここはひとつキッチリと言っておきたい。
手持ちの得意技を総動員して大向こうを唸らせようとする戦略は企業として当然の選択かもしれないが、クルマはやはり結果が第一。その意味でこれは少々やりすぎ(メカ/装備満載)か、あるいは逆にやらなさすぎ(消化不足)と言わざるを得ない。
「オールロード」の言葉は魅力的だが、単に屋上屋を架せばよいというものではないからだ。
アウディの成功は技術的な成功でもある。フルタイム4WDの先駆者として磨き上げてきたクワトロシステムをはじめとして、パワーと燃費の両立を図ったFSI直噴システムや、走行中の車高を自動調整によるハイト維持、もしくは手動による選択が可能なアダプティブエアサスペンションなどがそれで、「A6オールロードクワトロ」には当然のごとくそれらのすべてが惜しげもなく奢られる。ノーマルA6との違いは同じアダプティブサスでもラフロード走行を目的とした“オールロードモード”が追加されたことだ。
だが、個々の要素技術は素晴しくても、それらを積み上げた結果が同じだとは限らないのがクルマづくりの難しくも面白いところ。老婆心ながら最近やや「イケイケドンドン」気味なアウディを密かに懸念する所以である。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「オールロードクワトロ」は「A6」のワゴン版「アバント」がベース。一言でいえばロードクリアランスを増し(155mmに)、車高調整機能を高めてSUV的な性格を持たせ、同時にそれに相応しい独自のアピアランスを与えたものだ。
ポジショニングとしてはA6のさらに上を行くトップモデルとして位置づけられているから、仕様・装備の点でも標準/オプション問わずシリーズに用意されるものならほとんど「ないものはない」状態。オールロードクワトロとしてはこれが2代目となる。
もともとA6はモデルチェンジでかなり大型化していたが、これは4935mmの全長こそ変わらないものの、全幅はオーバーフェンダーの装着によって1860mmと5mm増し、車高の上昇によって全高も1490mmと15mm高まっている。
タイヤのサイドウォールはそのオーバーフェンダーに対してもぎりぎりで、そのため狭い駐車場の取り回しなどでは数字以上に幅が広く感じられる。
車重はモデルによって異なるが、テスト車の場合は1950kgとほとんど2トン近い(ただし、V8同士では不変)。手っ取り早く言えば、でかい、重い、高い(980万円)の揃い踏みで、これだけ聞いているとなんだか昔のアメ車みたいだ。
(グレード概要)
日本仕様のエンジンラインナップは、255psのV6 3.2リッターと350psのV8 4.2リッターから成り、ノーマル系に用意される「慎ましい」2.4リッターはない。このあたりにもこのクルマに対するアウディの考え方が如実に表れている。
ギアボックスはいずれもパドルシフト付きのティプトロニック6ATで、V8は今回ノーマルA6用ともども最新スペックに移行した。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
ダッシュボード/コンソールは見た目が饒舌すぎてややスッキリ感に欠けるものの、それだけありとあらゆるものが備わっており、豪華な証拠。
オーディオやカーナビゲーション/TVはもとより、アダプティブサスをはじめとする各種機能の設定まで同一のモニター画面で行える「MMI(マルチ・メディア・インターフェイス)」は、この種のものとして比較的使い勝手も悪くない。
シート調整をはじめとするコントロールが「オールパワー」なのはいうまでもないが、カギさえ身に着けていればドアハンドルを触っただけで開き、ボタンを押すだけでエンジンが掛かる(“アドバンスドキーシステム”)のは最新の上級日本車並みだ。
4.2FSIのMMIにはリバースに入れると後方が映し出されるリアビューカメラが最初から付いている。パーキングブレーキはスイッチによるエレクトロ・メカニカル式だが、作動がやや遅く、もどかしいこともある。
(前席)……★★★★
腰から下をたっぷりと取り、視界を損なわずに適度な囲まれ感で安心を与えるボディづくりはアウディ共通の美点。スペースそのものもさすがにこのサイズともなると充分だ。
車両価格が1000万円を超えたのは新たな装備の追加ではなく、主として趣味的な部分でのエクストラコストといってよいが、その中で、もともと本革張りではあったが形状だけを変えたスポーツシートは正解だ。本格的なSUVに比べれば問題にならないほど軽度とはいえ、僅かに腰高感が残るこのクルマにはやはりしっかりしたサポート感が求められるからだ。
(後席)……★★★
基本的にドライバーズカーであり、分厚く贅沢なそのシートバックにもいくらかスペースを割かれてはいるが、それでも2845mmの長大なホイールベースは後席にも充分に快適な居住空間を提供している。まずまず文句のない広さだ。
ただし、後述するように前席同様、乗り心地そのものは結構荒さが目立つから、少なくともショーファードリブンカー的なデッドスムーズさを求めると期待外れに終わる。
(荷室)……★★★★★
このクルマで一番の感動がここにある。A6アバント同様だが、ラゲッジルームは単にフラットで広いだけでなく実用的なアイデアに溢れ、きわめて使い勝手が良い。ワゴンの鑑と言いたい出来だ。
なかでも任意の位置で固定でき、取り外すことも可能なネット/バー/ベルトの3種によるフィックスキットは秀逸の一言。おまけに、このクルマにはオプションで自動的に昇降するオートマチックテールゲートが付いていた。
床板をはぐると本来スペアタイヤ用とおぼしき丸い大きな空間が出現、さらにその下には緊急時に使用するタイヤ充填材とそのための電動ポンプが隠れている。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
直4/V6のそれでは活気あるパワーと小気味よいサウンドで大人しいアウディのイメージを一変させたFSIだが、「高級な機械」を運命づけられているこのV8では突出したキャラクターを抑えようとしてか、さして欠点がないかわりにワクワクするような楽しさもなくなってしまったのが惜しい。
リミットの6800rpmまで淀みなく回ることは回るものの、ここ一発という時の盛り上がり感が薄く、実際には充分以上に速いのにさして有り難みを感じないのだ。
Dレンジ/100km/hは1800rpmとハイギアリングで静かだが、エンジン音そのものはさほどでもなく、たまたま「レクサスLS460」から直接乗り換えたら、ゴロゴロとした音色が耳についた。
燃費も排気量相応に大食らいだ。パドルシフトはあればあったで便利だが、通例と同じくワインディングロードでよりもむしろ高速巡航での加減速に重宝する程度。
(乗り心地+ハンドリング)……★★
率直に言って、ここでの少なからぬ失望が大勢を決した。クルマはやはり走ってナンボの世界だからである。
なかでもフロアからの微振動が絶えない乗り心地はまったく高級車らしくなかった。少なくとも以前乗った「A6アバント3.2FSI」では見られなかったから、もしかしたら個体差か装着タイヤとの相性に起因するものかもしれないが、その一方で、重量増による相対的なボディ剛性低下やラフロード走行を視野に入れたサスペンションセッティングによる違い、あるいは大径極太タイヤによるバネ下重量の増加も可能性としては考えられる。
しかも、これは“コンフォートモード”を選べるアダプティブサスを以てしても単に揺動の周期がゆったりするだけで、根本から解消されるわけではないのである。
操舵力と速さ(ロック・トゥ・ロック2.5回転)の両立を図った速度感応式サーボトロニックステアリングも低速では軽すぎていささか心許ない。アダプティブサスは“オートマチックモード”やコンフォートに比べて車高が15mm下がる“ダイナミックモード”が選べ、コーナリングではターンインがシャープになってノーマル仕様に近い感覚になるものの、だからといってここに固定したのでは本末転倒だろう。
(写真=荒川正幸)
【テストデータ】
報告者:道田宣和(別冊CG編集室)
テスト日:2006年10月3〜6日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2006年型
テスト車の走行距離:2498.5km
タイヤ:(前)245/45R18 100Y(後)同じ(Good Year Excellence)
オプション装備:スポーツパッケージ(アルカンタラ&本革シート+フロントスポーツシート+マルチファンクション&ティプトロニックパドルシフト付き本革巻き3スポークスポーツステアリングホイール/5万円)/オートマチックテールゲート(9万2400円)/18インチ5アームエアロデザインアルミホイール(12万円)
形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(2):高速道路(5):山岳路(3)
テスト距離:445.5km
使用燃料:80.5リッター
参考燃費:5.5km/リッター

道田 宣和
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