トヨタ・ラクティスX“Lパッケージ”(FF/CVT)/G“Lパノラマパッケージ”(FF/CVT)【試乗速報】
“濃い味”か“淡泊”か 2005.10.13 試乗記 トヨタ・ラクティスX“Lパッケージ”(FF/CVT)/G“Lパノラマパッケージ”(FF/CVT) ……179万7600円/226万9050円 新型ヴィッツプラットフォームをベースにつくられた、新コンセプトの2BOXカー「ラクティス」。利便性に加え、走りやスタイリッシュなデザインを与えたという新型に乗った。広いだけじゃない
「ファンカーゴ」の後継モデルが「ラクティス」。トヨタラインナップにおける位置づけはその通りなのだが、クルマのコンセプトはすこし異なる。
いかにもハイトワゴンらしいデザイン、乗っても“道具感”があり、それが魅力的だった(と思う)ファンカーゴと異なり、ラクティスは“スペースユーティリティ”を犠牲にせず“走り”にもこだわったというモデルだ。開発中、エンジニアの間で「Active Space Liner」と呼ばれていた車種が「Runner with Activity and Space」に進化(?)し、その頭文字をとってラクティスになったとか。ラクティス・トリビア。
コンパクトカーという枠で室内空間を広く採ると、ボディ形状は箱形に近づくのは理屈。ラクティスは広さや利便性を損なわず、スタイリッシュなクルマに仕上げ、さらに走りにこだわったという。具体的には、床面を下げて室内高を稼ぎ、Aピラーの付け根をボディ前方に配して室内長を確保。全高は60mm低いが室内高は75mm高く、室内容積はファンカーゴより大きい。
さらに、全車にCVTを採用するなどして走りにもこだわった。商品企画の方によると、近年は大きなクルマからコンパクトカーへ、2台所有を1台に集約するなど“ダウンサイザー”が増えているという。これまでの便利さはそのまま、ユーザーを惹きつけるバリューやプレミアムを与えた、ということだろう。
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すべてが上質になった
ドライビングを意識した内外装デザインや、充実した装備品も特徴である。メーター類はセンターメーターではなく、ドライバー正面に設置。シート形状はサイドサポートがちょっと張り出して乗用車らしく、運転席はリフターが備わる。のみならず、1.5リッターモデルはステアリングホイールチルト機構に加え、前後調節のテレスコピック機構が標準で備わるのだ。国産コンパクトクラスでは、かなり珍しい奢りっぷりである。多くのミニバンや2BOXは、ペダル位置でシートを調節するとステアリングホイールが遠くなりがちなので、ありがたい装備だと思う。
トランスミッションは全車CVT、1.5リッターはパドルシフト付き7段変速機構が備わる……とアタマに置いて、1.3リッターモデルで走り出す。もっとも素に近いモデルだが、予想以上によく走る。カメラマンと二人乗り+撮影機材を積んでいたが、上り坂も十分な速度を保って上ってくれた。
足腰がシッカリして、乗り心地も上質である。ファンカーゴにくらべて、特にフロントシートの厚みが増したこともあり、長距離移動がラクになったのではないか。けっして背が低いクルマではないがコーナリング時に不安もなく、適度なペースなら予想以上にキビキビ曲がることにも感心した。細くて大きい175/60R16インチの専用タイヤを装着し、最小回転半径は4.9m。小回りが利くので撮影中のUターンもラクだ。
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楽しいパノラミックパッケージ
次に乗った1.5リッターモデルは、ラクティス自慢のひとつであるグラスルーフ「パノラミックパッケージ」を装着。プジョー307SWや日産ラフェスタ、ホンダ・エアウェイブなどグラスルーフは一部で流行しているが、ラクティスはルーフ面積の約7割をガラスが占め、ルーフガラス天井占有率はトップクラスと胸を張る。
その言葉どおり、前席、後席とも明るいインテリアと景色を味わうことができた。リアシートは広さは十分あるのだが、前席と着座位置が近いのか、前席シートバック&ヘッドレストに視界がさえぎられる。後席を多用する人に、パノラマパッケージはありがたみがありそう。もちろん、二人乗りでも楽しい。
ただ、1.5リッターエンジンはちょっとうるさい。特に低回転域で低音が耳につき、リポーターは気になった。高回転にもっていけばイイのだが、排気量なりに力強いので速度もそれなりに高まってしまう。トルクに余裕があるのはイイけれど、ラクティスには1.3リッターで十分ではないか……というのが正直な感想である。残念ながら、1.3リッターにテレスコピックとパノラミックパッケージの設定はないけれど……。
既存の利便性はそのままに“スポーティ”“豪華”などの付加価値をつけたラクティス。ファンカーゴの“カーゴ”はそのまま、道具っぽさを払拭したニューモデルは、コンセプトに沿ったクルマになっていると感じた。
一方、ファンカーゴが持っていた“濃い味”が薄まったクルマではないかしら? とも思った。ファンカーゴがデビューした1999年8月からの累計販売台数は、一ヶ月あたりに換算すると約5500台にもなるという。ラクティスはコレに迫ることができるのか? ちょっと気になる。
(文=webCGオオサワ/写真=清水健太/2005年10月)

大澤 俊博
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