フォルクスワーゲン・ジェッタ 2.0 FSI(6MT)【海外試乗記】
狙い通りの仕上がり 2005.09.15 試乗記 フォルクスワーゲン・ジェッタ 2.0 FSI(6MT) ゴルフの3BOX版「ジェッタ」が、ゴルフVベースで生まれ変わった。日本では「ボーラ」と呼ばれていたが、今回から全世界で、晴れて(?)ジェッタになった新型にドイツで乗る。その印象は?不思議な感じ
試乗会のスタート地点となったベルリン・テーゲル空港の駐車場。スロープを上ってくるゴルフをボーっと眺めながら、ふと我に返る。そして気づいた。そのクルマはゴルフじゃなくて、ジェッタだった。
ヘッドライトのデザインは同じ、ボンネットも同じ。フロントグリルはゴルフGTIと同じ形だが、クロームメッキで飾られている。ちょっと風変わりなゴルフGTI……実物を目の当たりにした第一印象はそんな感じだった。
いうまでもなく、ジェッタはゴルフがベースの4ドアセダンである。先代にあたるのがボーラ、先々代はヴェントだったが、もともとはジェッタで、北米ではずっとジェッタだった。そして今回やっとジェッタという世界統一名称で、ヨーロッパや日本でも売られることになった。
いままでで一番カッコいい
メッキ部分の目立つフロントマスクがいまひとつ好きになれないし、日本のナンバープレートを付けたらさらにメッキ部分が増えて「どうなってしまうんだろう?」とひとり心配する私だが、まあ、もし買うことになったらグリルをボディ同色に塗るとして……というのはさておき、サイドやリアの眺めは歴代ジェッタのなかで一番まとまっているのではないかと思う。
その成り立ち上、ホイールベースはゴルフと同じ2578mmだが、後付けされたトランクと少し低くなったルーフライン、そして、伸びた全長にあわせて多少ふっくらとしたフェンダーのおかげで、顔を見なけりゃ元ゴルフとはわからない自然なフォルムが魅力的だ。
一方、インストゥルメントパネルはそのまんまゴルフだった。試乗会の前日、ゴルフに乗って成田に向かった私としては、運転席からの眺めに新鮮みがなく、少し戸惑ったほどである。
リアシートに座ると、このサイズのFFセダンとしては標準以上のレッグスペースが確保されている。すなわちふつうに座れば十分な広さで、無理をすれば足が組めるくらいの余裕がある。ヘッドルームも、身長168cmの私ならまったく窮屈さを感じない。聞けばゴルフと同じシートクッションを使っているが、ルーフが低いのでクッションの取り付け位置を若干下げているとか。
自慢のトランクは旧型=ボーラにも増して広い。奥行きはボーラより102mm伸びて1160mmとなり、さらに高さや幅も十分確保されているのだ。もちろん、リアシートを倒すことができるから長尺物も無理なく積める。正直、持て余すほど大きいのだ。
スポーツセダンと呼びたい
当然のことながらパワートレインはゴルフに準じるが、そのうち日本仕様に搭載されそうなのは、2リッター直列4気筒の直噴ガソリン(FSI)とそのターボ版(T-FSI)の2タイプ。組み合わされるトランスミッションは、前者がトルコン式の6AT、後者がいわゆる2ペダルMTのDSG(6段)である。
残念ながら今回の試乗会にはこれらの組み合わせは用意されなかったが、2リッターFSIと6MTの組み合わせなら試すことができた。このエンジンは、基本的にはすでに日本のゴルフやトゥーランに搭載されている2リッターと同じもので、最高出力150PS/6000rpm、最大トルク20.4kgm/3500rpmのスペックも同一である。
データから想像できるように、圧倒的なパワーこそないものの、実際に使ってみると、低回転域から十分なトルクを発し、常用域の2000〜3000rpmのレスポンスに優れ、まわせば3500rpmを超えてからもスムーズに回転を上げていくという不満のない性能を誇っている。マニュアルトランスミッションと組み合わされたためか、現行ゴルフよりも多少エンジンからのノイズが大きく思えたが、一方、トップエンドの伸びや実用域でのレスポンスには改善が見られる。
一方、フロントがマクファーソンストラット、リアは4リンク式のサスペンションを採用するジェッタの乗り味は、軽快さと快適性を両立したゴルフの性格を受け継いでいるが、多少、ゴルフよりもスポーティに味付けられている。最低でも205/55R16サイズのタイヤを装着するが、乗り心地は快適に保たれたまま、アウトバーン巡航時のフラット感や、コーナリング時の安定感が向上した印象だ。後席の乗り心地も快適で、これなら長時間後ろに陣取ってもいいなぁと思った。
ただし、スポーツラインというバージョンに採用されるローダウンスポーツサスペンションは、アウトバーンを飛ばすにはいいが、一般道では路面の荒れをダイレクトに伝えてしまうから、もし日本で買うなら、それなりの覚悟がいるだろう。
旧型にあたるボーラが“ちょっと贅沢”を求めたのに対し、このジェッタはスポーティな方向へ路線を変え、その目論みどおりにクルマは仕上がっている。新型パサートが大型化したいま、気楽に乗れるVWのセダンという意味からも、このジェッタに期待である。なお、日本への導入は2006年の春頃ということだ。
(文=生方聡/写真=フォルクスワーゲン グループ ジャパン/2005年9月)
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生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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