トヨタ・アルファードV MS(5AT)/AX“Lエディション”(4AT)【試乗記】
盤石は揺るがず 2005.07.12 試乗記 トヨタ・アルファードV MS(5AT)/AX“Lエディション”(4AT) ……444万9900円/353万7450円 3度目のマイナーチェンジを受けた、ラージクラスミニバンの王者「トヨタ・アルファード」。自動車ジャーナリストの島下泰久は、その盤石ぶりに感心する。3度目のマイナーチェンジ
Lクラスミニバン界において、かつては先代に当たる「トヨタ・グランビア」が「日産エルグランド」に圧倒された。「アルファード」へのフルモデルチェンジを期に、新型エルグランドと発表日までほぼ横並びとするなど、デビュー当初から並々ならぬ闘志を燃やしていたこのがこのクルマ。その結果はといえば、宿命のガチンコ対決を見事に制し、今やLクラスミニバンのトップブランドとしてすっかり定着したと言っていい。そのアルファードが、登場3年目のマイナーチェンジを敢行した。
変更箇所はマイナーチェンジの王道である内外装の意匠変更が中心である。外観では特に、もともと押し出しの強かったフロントマスクが、さらなるインパクトをプラスしたのが目をひく。そこまで主張しなくても……とも思うけれど、この手のミニバンにユーザーが望むのは、まさにこうした部分なのだろう。
装備面で注目するのは、全車にディスチャージヘッドランプが標準装着されたこと。上級グレードにはステアリングに連動して照射角を変化させる「インテリジェントAFS」も装備される。また、なぜかハイブリッドにだけだが、サイドモニターが用意されたのも、その大きなボディサイズからすれば朗報である。
3リッターに5AT搭載
一方、インテリアも各部の意匠に手が入れられた。ナビゲーションシステムが8インチ大型モニターを採用し、通信速度を高め、渋滞予測やオンデマンドカーオーディオなど機能を増強した最新の「G-BOOK ALPHA」に対応するHDDタイプへと進化したのも注目に値する。これは今後、トヨタの各モデルに採用される予定だ。
そして、ついでにというわけではないが、クルマとしての基本部分にも進化の手が入れられている。なかでも大きなものは、3リッターV6モデルへの5段ATの採用だ。従来の4段ATに対して1速が約20%低くなったことで、出足は明らかに向上。中間加速も小気味良さを増す一方、逆に5速が従来の4速より約16%ハイギアード化されたことから、高速域での静粛性も高まっているようだ。10・15モード燃費の数値に変化はないが、もちろん高速燃費だって向上しているはずである。
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見えないトコロも磨きをかけた
フットワークにも磨きがかかっていた。乗り心地のしっとり感が増した一方で、旋回時にグラッと傾くことがなくなり、動きが穏やかになった。サスペンションのリファインを重点的に行なった効果が出ている。こうした変更で、その走りは楽しい! とまでは言わないものの確実に心地良さを増していた。
一方、2.4リッターはスペックには変化はないものの、平成17年基準排出ガス75%低減レベルと平成22年度燃費基準+5%の達成で、いわゆる4つ星を獲得。グリーン税制の対象車となった。ちなみに3リッターは1つ星である。
2.4リッターエンジンは直列4気筒で、ATも4段のまま。V型6気筒+5段ATのエルグランド2.5リッターにスペックでは負けるが、走りっぷりは特段ヒケを取ることはない。エンジン音は静かとは言えないものの不快な音質ではないし、トルクバンドが広く、またトヨタ車らしくシフトショックも小さいから4ATでも決定的な不満はみあたらない。むしろエルグランドより車重が200kg近く軽いぶん、キビキビ活発とすら思えるほどだ。10・15モードで9.7km/リッターの燃費も、この体躯を考えれば立派。総合的なバランスでは、この2.4リッターを選ぶのも大いにアリではないかと改めて思った。
エルグランドに加えて「ホンダ・エリシオン」も登場するなどライバルの追い上げは激しい。しかし奇をてらわずソツのない内外装の作り込みに、しっかり磨き上げられた走りっぷりを、ニーズにバッチリ応える迫力の顔つきでくるんだアルファードの人気は、まだしばらくの間は磐石と見てよさそうである。
(文=島下泰久/写真=郡大二郎/2005年7月)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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