日産エルグランドV(5AT)【ブリーフテスト】
日産エルグランドV(5AT) 2005.07.05 試乗記 ……385万2450円 総合評価……★★★ 2.5リッターエンジン搭載モデルの投入で、ようやく「トヨタ・アルファード」追撃の態勢を整えた「日産エルグランド」。自動車ジャーナリストの島下泰久が、実用車としての出来映えを検証する。
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「事件」を起こした2.5リッター
2005年4月、「日産エルグランド」の登録台数が宿敵「トヨタ・アルファード」を初めて上まわるという“事件”が起きた。アルファードがモデルチェンジ間近だったということもあるが、なにより効いたのは昨年12月にエルグランドに追加された2.5リッターモデルの人気が高まっていることだ。アルファードは2002年5月の登場当初から3リッターV6のほかに、より廉価な2.4リッター直4モデルも設定しており、3.5リッターV6のみだったエルグランドは苦戦に陥っていた。よって登場は“遅過ぎた”とも言えるのだが、ともあれ遅まきながらの巻き返しに見事成功したというわけである。
実際その走りっぷりは、力強さは充分だし静粛性も直4のライバルを明らかに上まわるなど悪くない。助手席側にすらオートスライドドアが標準装備されないのは物足りないが、それもオプションで選ぶことはできる。しかし、まさに試乗車がそうだったのだが、そうやってオプションを足していくと、装備が充実した3.5リッターモデルとの30万円ほどの価格差はすぐに帳消しになってしまう。
クルマ単体の出来映えは良いが、そういう観点で見ると、額面上はともかく実際の買い得感は今ひとつなのが残念である。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
国産最上級ミニバンの代表的な存在で、デビューは1997年。2002年5月に2世代目に生まれ変わった。その新型は“見るからにエルグランドとわかる圧倒的な存在感がある外観スタイル(ニュースリリース)”を狙ったそうで、やはり初代同様に“大きな顔”だ。ボディ寸法は全長4795×全幅1795×全高1920mm(ハイウェイスターは4835×1800×1910mm)と、従来型と比べ全長を55mm延ばし、全高を20mm低めた。新パッケージングはフラットで低いフロアを得、ルーフ幅を拡げ、実質的な室内長/室内幅/室内高/シート間寸法を拡げたことで、キャビン空間に一層のゆとりが生まれたという。さらに加えて両側スライドドア(4ドアもあり)、後方へいくほど着座位置が高くなるシアターレイアウト、2列目のマルチセンターシートなどを採用。乗車定員は3列シートの8人が基本で、7人乗りもある。
2004年12月、いちばんのライバル「トヨタ・アルファード」(3リッターV6&2.4リッター直4)への対抗策として、2.5リッターV6 「VQ25DE」ユニット(186ps/6000rpm、23.7kgm/3200rpm)搭載モデルを追加した。トランスミッションは3.5リッター同様、5段オートマチックである。
(グレード概要)
2.5リッターモデルには「V」と「ハイウェイスター」があり、それぞれFRと4WDが設定される。組み合わされるトランスミッションは、3.5リッターモデルと同じく5AT。2.5Vでは、標準ではインテリジェントキーや助手席側リモコンオートスライドドアが省かれ、ホイールも鉄製となる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
特徴的なデザインのインストゥルメントパネルは、メーターフードがないためスッキリとした印象。前方視界を遮られることなく、実に開放感がある。また、そこから一体感ある造形とされたナビのモニターは、角度調節が自由にできないのが不満とはいえ画面は大きく、視認性は上々だ。
一方、このデザインを優先したためかセンターコンソールに集中することとなったナビ/オーディオ/エアコンの各スイッチ類は使いやすいとは言えない。一見期待できそうにも思えるナビを含めて、無数のスイッチが何の意味もなく並ぶだけでは、直接目線をそこに移動させなければ操作できないのは当然。ドライバーにリラックスして運転に集中してもらうために、論理的な配置を検討する必要があるだろう。
(前席)……★★★★
そもそも着座位置が高い上に、件のパソコンをモチーフにしたという、すっきりしたインストゥルメントパネルのおかげで前方視界を遮るものがないため、ドライバーズシートからの眺めは、実に開放感がある。とはいえ、これだけのサイズになると取りまわし性には不安を抱くところだが、側方、後方とも思いのほか視界は悪くなかった。しかし家族何人かで運転することになるならば、オプションのバックビューモニター、サイドブラインドモニターはあるにこしたことはないだろう。シート自体は大きなサイズでたっぷりしたクッションを持っており、短時間の運転で快適なのは想像通りだったが、意外や高速道路込み3時間、距離にして180kmほどの中距離ドライブでも不当に疲れたり不満を感じることはなかった。
(2列目)……★★★★★
エルグランドの特等席はセカンドシートである。シートはたっぷりとしたサイズと包み込むような形状で掛け心地に優れる上に、足元も余裕たっぷり。しかもシートスライド量は60cm近くにも及ぶため、望むなら更に広大な空間を生み出すこともできる。ちなみにこのセカンドシート、名目上は3人掛けだが、マルチセンターシートと呼ばれる中央席は、座面が盛り上がりヘッドレストも備わらないなどアームレスト兼小物入れとして使うことが前提のようである。頻繁に3人掛けする必要があるならば、2.5Lに新たに設定された6:4分割式のベンチシートを選ぶほうがいいだろう。
(3列目)……★★★★
サードシートも同様に3人掛け可能だが、快適に過ごせるのは2人掛けまで。といっても2列目同様、こちらも頭上、足元スペースとも十二分に広い。またセカンドシートより着座位置が高く設定されているため、狭いところに押し込められているような感じを抱かずにすむのは嬉しいところだ。
(荷室)……★★★★
8名乗車時にはさすがにラゲッジスペースはミニマム。しかし大きなスライド量を持つサードシートを前に出せば、充分使いでのあるスペースを生み出すことができる。もし、それでも足りなければ、サードシートを左右ともに跳ね上げれば、ゴルフバッグをなんと6セットも積むことができるのだ。ただし、大きなシートを跳ね上げるのは男性でもひと仕事。また6セット積めるといっても、この状態では最大5名乗車である。
ラゲッジ右側のサイドとフロア下に収納ボックス、フロアには4箇所のラゲッジフックも標準装備。大きく開くリアゲートは開口部も低く、総じて使い勝手は平均点以上と言える。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
2.5Lエンジンのスペックは最高出力186ps、最大トルク23.7mkgで、3.5リッターモデルに較べると54ps、12.3mkg劣る。数字の差は大きいが、実際のところこれが望外によく走ってくれた。
もちろん、3.5Lのようにアクセルに軽く足を乗せただけでドンとトルクが沸き出すことはないが、おかげでかえって走りはスムーズ。中高回転型の特性ゆえに意識的に踏み込んでやる必要はあるが、そうすれば速度域問わず、2名乗車くらいまでなら2トン近いボディを悠々と流れに乗せることができる。無論、ギア比を低めた5段ATの採用も効いているはずだ。
ただし、車重がほとんど変わらないせいもあって10.15モード燃費は3.5Lとほぼ一緒。こちらはレギュラーガス仕様とはいえ、2.5Lを選ぶ意味は薄いと言わざるを得ない。一方、ライバルとの比較では、V型6気筒らしく加速時でもエンジンが滑らかさを保つのはアピールポイントとなるだろう。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
デビュー当初からエルグランドのサスペンションはひたすらソフトな設定とされているが、この2.5Lでもその基本は変わっていない。たしかに当たりは柔らかいが、常に上屋がユサユサと揺れているような感覚は、すくなくとも洗練されているとは言い難い。それでも高速巡航時など、コーナーでもいきなりロールが深まったり、あるいはそこから急に伸び上がってフラついたりということはなくなり、きちんと素直に走ってくれるようになった。
操舵力軽めのステアリングが、もうすこしリニアな反応としっかりした手応え感を返してくれれば……とは思わなくもないが、ゆったりのんびり走るには、これはこれで悪くない。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:島下泰久
テスト日:2005年4月19日から24日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2005年型
テスト車の走行距離:--
タイヤ:(前)215/65R16 98S(後)同じ
オプション装備:アクティブAFS(5万2500円)/16インチアルミロードホイール(7万3500円)/電動カーテン+リモコンオートスライドドア(助手席側&運転席側)+インテリジェントキー(22万500円)/カーウィングス対応ツインモニターTV/DVDナビゲーションシステム+ステアリングスイッチ+5.1chサラウンド/カーシアターシステム+後席マルチリモコン+電源コンセント+バックビューモニター+サイドブラインド(62万8950円)/特別塗装色(4万2000円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(7):高速道路(3)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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