BMW 735iM-Sport【ブリーフテスト】
BMW 735i M-Sport(5AT) 2001.06.01 試乗記 ……855.0万円 総合評価……★★★★★ヒラヒラと舞う巨体
全長約5mの堂々たるサイズは、「権威」と「分別臭さ」の象徴。メルセデスのSクラスにせよトヨタ・セルシオにせよ、現代のラクシュリーサルーンがよく走り曲がるのはもはや常識だが、それでも基本はあくまでエグゼキュティブのための移動手段、ドライバー自身が運転を愉しむことは少ないし、また慎むよう要求されてもいる。
ところがBMW(と線はやや細いがジャガー)は例外だ。7シリーズともなるとライバル同様フォーマルユースも多いはずだが、一旦ステアリングを握ると知らず知らずのうちに運転を愉しんでいる自分を発見する。なかでもドライバーズカーの典型がこのM-Sport。ライバルに勝るとも劣らぬホスピタリティとアメニティを備えながら、小型軽量スポーツカー顔負けの軽快さとドライビングプレジャーに溢れているのは、嬉しい驚きだった。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
そろそろモデルチェンジが噂されるBMWの旗艦。だが、モデルスパンが長めで年々熟成が進むヨーロッパ車では、往々にして新型よりむしろ一世代前の後期モデルに人気が集まることが多い。ラインナップは下から735i(3.5リッターV8 235ps/800.0万円)、740i(4.4リッターV8 286ps/940.0万円)、750iL(5.4リッターV12 326ps/1250.0万円)の3種。ほかに別格としてL7リムジン(5.4リッターV12 326ps/1450.0万円)がある。iLのLはロングホイールベース(2930mm→3070mm)の意で、全長も140mm延びて5125mmとなる。因みに、L7の全長は5375mm。スポーティバージョンのM-Sportは735iと740iに用意され、前者は35.0万円高の835.0万円、後者はベースモデル自体が装備豊富なため、15.0万円高の955.0万円に収まっている。
(グレード概要)
あくまでM-Sportであり、“M7”ではない。したがってエンジンは一切手付かず。ただし車高が10mm低まるM-Sportサスペンションをはじめとして、「前後とも235/60R16+7.5J」から「前235/50R18+8J」「後255/45R18+9.5J」へと大幅にロープロファイル&ワイド化するタイア/ホイール等々、走りの機能に関する違いは少なくない。さらに独自デザインのステアリングホイールや電動調整式スポーツシート、ヒートシーターなど装備品の追加も多く、実質的にかなりのバーゲンでもある。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
いわゆる「何でもあり」の状態。シートやステアリングホイール、ミラーはオールパワー&メモリー付きでイージーそのものだ。それでいてどことなく控えめな印象がするのは好感が持てる。センターコンソールにはオンボードコンピューターとTV、カーナビ、ハンズフリー電話が一体となった大型モニターが設置され、リアウィンドウには電動ローラーブラインドが備わるといった具合。ただしカーナビはVICS対応/DVDの最新式にもかかわらず、反応が遅かったり必要な情報が得られなかったりで、事実上役に立たないことがあった。
(前席)……★★★★
これだけのサイズがあれば当たり前とも言えるが、実際足下は広く、シートのスライド量、横への広がりにもかなりの余裕を感じる。それでいてステアリングが切れ、存外小まわりが効くため、狭い路地へも自信をもって入り込むことができるのが意外。
(後席)……★★★★
iLでなくてもスペースは充分以上。RWD(後輪駆動)の不利はない。シートは大型で、センターアームレストを引き出し脚を組めば、エグゼキュティブサルーンならではのくつろぎを実感する。ベルトのショルダー側アンカーは伝統にのっとりセンター寄りに位置する。
(荷室)…★★★★
VDA規格500リッター入りのトランクは奥行きが圧倒的。小柄な人間なら縦に寝られるのではと思われるほど。もちろん床はフラットでバンパー高から開き、使い勝手も良い。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
シリーズ「最小」の3.5リッターでも充分。というより、よく回るという意味ではシリーズ中随一かもしれない。事実、かなりのペースが可能。リミットは6000rpmだが低いギアでは瞬間的に回り切る。回転は全域にわたってスムーズで淀みがない。V8ユニットは年々「いい音」になり、トップエンドでは一種アルピナ的な快音を響かせる。「ステップトロニック」付き5段ATは操作感抜群。Dレンジから「渡り廊下」を渡って左に寄せた瞬間スポーツモードに切り替わり、そこでのシーケンシャルシフト(+/−)が気持ちいい。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
意外だったのは「MでありMでないこと」。つまり、きわめて洗練されたマナーでスポーツカー並みのハンドリングを見せつける一方、乗り心地は少しも硬くなく、高級サルーンに相応しい快適さを保っているのだ。ロースタンスとロングホイールベース、ワイドトレッド、前52:後48の優れた重量配分とでコーナリングフォームはきわめて安定しているが、それでいて鈍重さとは無縁。ステアリングは3.8回転もして一見スローだが飛ばすとクイックになり、キックバックを断ちながら充分なインフォメーションを伝えてくる。ある種の「芸術」と呼びたい出来だ。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者: 二玄社別冊単行本編集室 道田宣和
テスト日: 2001年5月18日から21日
テスト車の形態: 広報車
テスト車の年式: 2001年型
テスト車の走行距離: 881km
タイヤ: (前)235/50R18 97Y/(後)255/45ZR18 99Y(Michelin Pilot Sport)
オプション装備: 電動スライディングルーフ=20万円
テスト形態: ロードインプレッション
走行状態: 市街地(5.5):高速道路(4.5)
テスト距離: 442.4km
使用燃料: 85.0リッター
参考燃費: 4.5km/リッター

道田 宣和
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