BMW318ti(5MT)【ブリーフテスト】
BMW318ti(5MT) 2002.01.22 試乗記 総合評価……★★★★ ……320.0万円赤い糸で結ばれるヨロコビ
「ビンッ」と弾かれるような独特のフィールをもつBMWのマニュアルトランスミッションが、新しいコンパクトモデルでも味わえるようになった。新開発2リッター直4ツインカム「N42」ユニットを搭載した3ドアハッチ「BMW318ti」がそれ。車両本体価格は、4ドアサルーンの318iより55.0万円も安い313.0万円。とはいえ、単なる“安物”でないことを、前後左右とも新しいモチーフを取り入れたスタイリングで主張する。
新型インライン4は、143psと20.4kgmを発生、シリンダーへの混合気流入量を吸気バルブのリフト量でコントロールすることで抜群のスロットルレスポンスを得る。5速直結のクロースレシオをもつ(ファイナルは3.385)マニュアルシフトを繰ってビーエムのエンジンをフルスケール回せば、静粛性が高まったコンパクトモデルにおいてもバイエルンの朗らかな歌声が飛び込んできて、耳に心地よい。右足の薬指と車速が赤い糸で結ばれたかのヨロコビがある。踏力に比例して、キレイに車速が上がっていく。
しっとりとしたフラットな乗り心地、後輪駆動ゆえの上品な操舵感をもち、いざとなればいわゆるスポーツドライビングも可能だ。マニュアルモデルには左ハンドルしか用意されないので、料金所で面倒だし、車線変更でも気をつかうが、最大の問題点はガードレールギリギリにクルマを停めたときにある。前席背もたれを倒すためのレバーがやたら大きく飛び出ているので、ドアとの狭い隙間から外に出ようとするたび服がひっかかる。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
BMW2002年モデルからラインナップに加わったニューti。サルーンより約20cm短い4.3mの全長をもつ3ドアハッチだ。先々代のシャシーを用いた初代と異なり、今回は現行3シリーズのプラットフォームを使う。本国には2.5リッター直6モデルもあるが、日本に入るのは1.8と2リッターの直4エンジン搭載車のみ。従来のようにスロットルバタフライではなく、吸気バルブによってシリンダーへの混合気流入量を制御するハイテク“メカ”ユニットである。このシステムは、「バリアブルバルブ」と「エレクトロニクス」を合わせて「バルブトロニック」と名付けられた。トランスミッションは、5段AT(右ハンドル)のほか、2リッターモデルには5段MT(左ハンドル)が用意される。
(グレード概要)
2リッターを積む318tiは、AT、MT間でハンドルの位置が違うほか、装備面での差はない。1.8リッターモデル「316ti」と比較すると、タイヤサイズがひとまわり大きい「205/55R16」となり、フロントフォグランプが装備される。また、ステアリングホイールやシフターが革巻きとなるのも相違点。DVDナビゲーションシステム、電動ガラスサンルーフ、レザー内装など、オプション装備は豊富だ。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
センターコンソールが運転席側を向いた、相変わらずドライバーオリエンテッドなインパネまわり。318のステアリングホイールは革巻き。3本スポークの「スポーツステアリングホイール」や、各種ボタンが付いた「マルチファンクション」仕様もオプショナル装備としてラインナップされる。テスト車のインテリアカラーは、ブラック。つや消し黒の樹脂製インパネと「マットグラファイト」と呼ばれるパネルの組み合わせはいささか地味だ、と感じるお客様のために、tiシリーズには、全3種類の内装色、5種類のパネルが用意される。
(前席)……★★★
手動ながら、前後スライド、背もたれの角度はもちろん、座面高も変更できるフロントシート。“プレミアム”を謳うには、座り心地が少々平板で、シート地の質感もいまひとつ。とはいえ、コーナリング時には控えめなサイドサポートが働いて、腰付近で上体を支えてくれるのは、さすがビーエム。シートは、セミバケットタイプの「スポーツシート」もオプションで選べる。シート地は、「ファブリック」「革とのコンビ」「革」ほか、アルカンタラやベルベットを使った「ヤングライン」もある。
(後席)……★★★
まずシートの硬さに驚くリアシート。後席に座るときに立ち上げるヘッドレストは、普段は後方視界をほとんど損なわないのがいい。足もと、頭部まわりの空間はじゅうぶん取られる。大人用として使える。ただし、中央席はFR車ゆえのセンタートンネルがジャマなうえ、ヘッドレストが備わらず、かつシートベルトも2点式なので、大事な人は乗せない方がいい。シートバックは分割可倒式。左右にISOFIX対応チャイルドシート用のアンカーあり。
(荷室)……★★
床面最大幅120cm、奥行き77cm、パーセルシェルフまでの高さ50cm。サルーンより20cmほど全長が切りつめられたのが正直に表われたラゲッジルーム。左右ホイールハウスの張り出しが気になる。向かって左の壁には、15cmの深さをもった2段の小物入れあり。後席バックレストを倒せば、145cmほどの奥行きを確保できる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
従来のスロットルバタフライの役割を、吸気バルブのリフト量制御で果たす「バルブトロニック」を搭載した「N42」型ユニット。吸気効率およびスロットルレスポンスの良さがウリだ。ビーエム自慢の可変バルブタイミング機構「ダブルVANOS」および2リッターエンジンには「DISA」こと4500rpmで切り替わる可変吸気システムが組み合わされ、全域にわたるフラットトルク化が図られた。静かでスムーズだが、退屈にはなっていない。5段MTは、やや薄れたエンジンの存在感を取り戻すツールともなる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
3シリーズサルーンゆずりのフラットライド。ナチュラルな操舵感とあわせ、「プレミアムコンパクト」の名に恥じない品のいい乗り心地だ。ハンドリングもいい。しっとりとしたフィールを残しながら、シャシーがステアリング操作によく追従する。MTならではのダイレクト感を活かしてちょっぴりリアをブレイク、“ウデ自慢”気分を味わうこともできる。もっとも、ひらり、ひらり、とした気楽な走りを望む向きには、オートマチックながら15インチタイヤを履く316tiの方がオススメだ。
(写真=林渓泉)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2001年12月27日から2002年1月7日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年登録(モデルイヤー2002年型)
テスト車の走行距離:3738km
タイヤ:(前)205/55R16 91V/(後)同じ(いずれもGoodYear Eagle Touring)
オプション装備:電動ガラスサンルーフ
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(5):山岳路(1)
テスト距離:535.4km
使用燃料:65.9リッター
参考燃費:8.1km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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