第211回:「BMW 3シリーズ」&「VWゴルフGTI」試乗で思う…“いいクルマ”ってなんだろう?
2005.05.16 小沢コージの勢いまかせ!第211回:「BMW 3シリーズ」&「VWゴルフGTI」試乗で思う…“いいクルマ”ってなんだろう?
■すごくイイけど……素朴な疑問
行ってきましたBMWのニュー「3シリーズ」&「フォルクスワーゲン・ゴルフGTI」試乗会。って実は、「シトロエンC4」と同じ日だったんですけど。
つくづくいいクルマだと思ったなぁ。特に3シリーズ。普通のクルマ好きなら、たいていはコレで大満足なんじゃないでしょうか。ちょっと刺激的だけど「5シリーズ」より無難なスタイリング、高くなったインテリアの質感と清潔感、広くなったリアシート、そしてますます良くなったスポーツカー顔負けの走り。
全体的に3シリーズならではの味が研ぎ澄まされてて、それでいて320iに限れば値段は安くなってる。今さらBMWに過度でうざいミーハーイメージを感じる人は少ないだろうし、まさにボディがデカくなった以外はほぼ文句なし。きっと売れちゃうんでしょう。
でもね。矛盾するようだけども、ふと、「みんなコレになんの疑問も抱かず400万円払うのかなぁ」「これならトヨタ・マークXで十分、って思う人いないのかぁ」などと素朴な疑問も湧いてきてしまいました。というのもゴージャスさとか、クイックさとか、そういうわかりやすいハデさって、相変わらず皆無なんだもん。なんつーか、一本2万円以上するブランドワイン飲んでて、ふと「美味いんだけどコレ、一杯5000円かぁ」と考え込んでしまった瞬間に似てます。
■けっこうフツー
ってなわけで冷静に見てみましょう。スタイリングは、今回こそエッジの効いた肉感的な“クリス・バングル路線”になったけど、基本は無難で端正なスポーティセダンフォルム。「超カッコいい〜!」ってほどでもない。キドニーグリルにしても特別凝った造形ではなく、ジミっちゃジミです。インテリアもクオリティは高いが決して豪華ではない。特にドア内張りなんて、その辺のテーブルクロスとどう違う? って言われても「燃えにくいんじゃない」ぐらいしか俺には言葉がありませんな。
走りだって普通にゆっくり走ったら、そう刺激的でもない。ステアリングは重過ぎるくらいに重く、クイックでは全然ありません。逆に過剰にシッカリしてるとも言えるけど。
エンジンにしても音は刺激的だけど、破格によく回るとか、パワフルなわけでもない。これならホンダのスポーツユニットのほうがよっぽどわかりやすいでしょう。
拡大
|
拡大
|
拡大
|
■いいクルマ、ブランド、わかりやすさ……
上記のように、冷静に分析すればするほど「真剣に走るとキモチいいんです!」ぐらいしか言えないのだ、3シリーズ。っていうか実はコレ、TBSラジオで3シリーズについて語ったときのセリフなんだけどね。つまり、まさにキャッチフレーズ通りの「駆けぬける歓び」。BMWの良さとは、飛ばしたときの良さに尽きるのよ。ロールスロイスのような様式とか豪華さとか、ポルシェのような個性とか、ベンツのようなわかりやすいブランドイメージはない。突き詰めれば突き詰めるほどマニアックであり、真のブランドといえましょう。
逆に「フォルクスワーゲン・ゴルフGTI」は、フツーのクルマのスペシャルモデルということもあって、結構わかりやすい。フロントグリルはガバっと大きな口を開けた獣のようだし、シートは見た目にもホールドの良さそうなバケットタイプ。エンジンはBMWのバルブトロニック4気筒より確実に軽く吹け、ターボチャージャーも手伝ってわかりやすくパワフル。ステアリングフィールは確実に3シリーズの方がリニアだけど、GTIのノーズの軽さもなかなかのもの。つまり、スポーティで実用性のあるクルマという商品の訴求力は、「ゴルフGTIのほうが強そう」ってことです。
でもね、3シリーズは売れるでしょう。今回も年間通してたぶん1万台は突破するだろうし、ヘタすると記録的なセールスになるかもしれない。
だからつくづくクルマとか食べ物って“信頼”と“味”なんだよね。いつも変わらず、安心できるうまい味に関しては、多少高かろうがお金を出す。「継続は力なり」とはよく言われることだけど、まさしくそれがブランドであり、とらやの羊羹とか、ルイ・ヴィトンの製品が売れ続ける理由とまったく同じ。
それと併せて、日本人もクルマの走り味に対するクチが肥えてきたのかなぁなんて。多少わかりにくくても、本当に美味しいものとはなにかがわかってきたというか。自分のような若輩者がいうのもなんですけど……。
そこんところは、いつか読者の方々と話し合ってみたいものです。
ってなわけでどっちもいいクルマなんで、よろしくお願いいたします。
(文と写真=小沢コージ/2005年5月)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
第454回:ヤマダ電機にIKEAも顔負けのクルマ屋? ノルかソルかの新商法「ガリバーWOW!TOWN」 2012.8.27 中古車買い取りのガリバーが新ビジネス「WOW!TOWN」を開始。これは“クルマ選びのテーマパーク”だ!
-
第453回:今後のメルセデスはますますデザインに走る!? 「CLSシューティングブレーク」発表会&新型「Aクラス」欧州試乗! 2012.7.27 小沢コージが、最新のメルセデス・ベンツである「CLSシューティングブレーク」と新型「Aクラス」をチェック! その見どころは?
-
第452回:これじゃメルセデスには追いつけないぜ! “無意識インプレッション”のススメ 2012.6.22 自動車開発のカギを握る、テストドライブ。それが限られた道路環境で行われている日本の現状に、小沢コージが物申す!?
-
第451回:日本も学べる(?)中国自動車事情 新婚さん、“すてきなカーライフに”いらっしゃ〜い!? 2012.6.11 自動車熱が高まる中国には「新婚夫婦を対象にした自動車メディア」があるのだとか……? 現地で話を聞いてきた、小沢コージのリポート。
-
NEW
第290回:商用バンで砂漠を行く親子が向かうのは天国か地獄か 『シラート』
2026.6.4読んでますカー、観てますカー失踪した娘を探して親子はモロッコの砂漠へ。砂漠で開催されていたレイブパーティーが最高潮に達した頃、軍隊がやってきて中止させられる。親子が乗るFFの商用バンは次のパーティー会場にたどり着けるのか……。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(前編)
2026.6.4あの多田哲哉の自動車放談ひさびさに日本市場に戻ってきた、ホンダを代表するSUV「CR-V」。最新世代の仕上がりを、トヨタの車両開発者だった多田哲哉さんはどう評価する? まずは、ワインディングロードを走らせた第一印象から。 -
NEW
第964回:フィアットグッズのコレクターから学ぶ人生訓
2026.6.4マッキナ あらモーダ!イタリア在住の大矢アキオが、トリノで著名なフィアットグッズのコレクターを取材。若き日の苦労を経て大成した人物が語る、人生で大切なものとは? フィアットやイタリアの歴史を物語る、貴重なコレクションの数々とともに紹介する。 -
NEW
気づけばすでに4モデル スバルのBEV戦略と水平対向エンジンの未来を考える
2026.6.4デイリーコラム「ソルテラ」に続き、「トレイルシーカー」「アンチャーテッド」「ゲッタウェイ」と、いつの間にか4モデルが顔をそろえたスバルのBEV。伝統的な水平対向エンジンやシンメトリカルAWDはこの先どうなるのか? スバルの未来戦略を探る。 -
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】
2026.6.3試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。 -
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感
2026.6.3デイリーコラム「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。