トヨタ・プレミオ1.5F“Lパッケージ”(FF/4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・プレミオ1.5F“Lパッケージ”(FF/4AT) 2005.04.07 試乗記 ……214万2000円 総合評価……★★★ トヨタのミディアムセダン「プレミオ/アリオン」がマイナーチェンジされた。「プレミオ」1.5リッターモデルの上級グレードに、自動車ジャーナリストの島下泰久が乗った。
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もっと走りにこだわってほしい
セダン不振と言われるなかで、兄弟車である「アリオン」とあわせてコンスタントに月5000台以上のセールスをあげている「プレミオ」。その強さはトヨタの販売力というだけでは説明できない。やはりトヨタの得意技であるクラスの水準を超えた内外装のクオリティや、ソツのない走りの実力などをトータルで考えたうえでの“バリュー・フォー・マネー度”の高さが、安定した支持に繋がっているのだろう。
今回の試乗車は、2004年12月にマイナーチェンジを受けたモデルである。変更箇所は主に内外装で、つまり定評の部分に磨きをかけたということだ。だがその一方で、「また次も絶対プレミオにしよう!」と思わせるような魅力は希薄と言わざるを得ない。たとえば望むのは、内外装と同じように走りの質ももっと追求してほしいということ。一瞬にして目を奪うものではないだろうが、じわじわと伝わり、そして離れられなくなるような走りを実現してくれたら……。
そういうクルマではないと言われるかもしれない。しかし本当はこういう誰もが触れ得るクルマこそ、なおのこと走りにはこだわってほしい、こだわらなければならないと思うのだ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「コロナ」の跡を継ぐミディアムセダンとして、2001年12月にデビュー。販売系列が異なる「アリオン」とは兄弟車で、プレミオは落ち着いたイメージを持つ。
「ビスタ」と共用するプラットフォームに、5ナンバー枠に収まる4ドアセダンボディを架装。ミニバンを意識してか、オーソドクスな3BOXスタイルながら、リアシートは20度のリクライニング機構に加え、6:4分割可倒&フォールディング機構を備える。前席ヘッドレストをはずせば、フロントシートを後席座面とフラットにできるなど、ミニバン顔負けのシートアレンジが可能だ。
エンジンは、1.5リッター1NZ-FE型、1.8リッター1ZZ-FE型と、筒内直噴「D-4」2リッター1AZ-FSE型の3種類。トランスミッションは、2リッターがCVT、他のエンジンは4段ATと組み合わされる。FFのほか、1.8リッターモデルには4WDも用意される。
(グレード概要)
排気量によって小さい順に「F」「X」「G」と分けられ、1.5F“Lパッケージ”は、1.5リッターの上級グレード。“Lパッケージ”は、シート表皮がラクシャリー仕様になるほか、オプティトロンメーターやマルチインフォメーションディスプレイ、CD一体AM/FMマルチ電子チューナー付ラジオなどが標準装備となる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
プレミオにはアイボリーとダークグレーの2色の室内色が用意されており、1.5F Lパッケージでは、ボディカラーを問わず自由に選択することができる。今回の試乗車はアイボリーの内装。新型では、その色味が従来より明るくなり、高級感を高めている。左右のドアトリムにまで広がるライトブラウンの木目調パネルもきわめて本物らしく、上質な雰囲気。その木目調トリムより上側をダークグレーとしているのは、フロントウインドウへの映り込みを抑えるためだろう。配慮は実にキメ細やかだ。
「1.5F」にはオプション、テスト車の“Lパッケージ”は標準装備となる、トヨタ車ではお馴染みのオプティトロンメーターは、回転計のパネル内に「マルチインフォメーションディスプレイ」を追加した。普段は瞬間/平均の燃費をリアルタイムに表示できるほか、給油ウォーニング、各ドアの開状態などが、ここに表示される。
上質感、装備の充実度とも、さすがトヨタ車らしく上々。多くのユーザーに満足をもたらすに違いない。上級グレードとは違ってステアリングはウレタン製となるものの、価格帯を考えれば、そこまで求めるのは酷というものだろう。
(前席)……★★★★
今や3ナンバーサイズが主流の中型セダンのなかでは、とりたてて広いというわけではない。とはいえ、高めの着座位置がもたらす見晴らしの良さや、広がり感のあるインパネの造形などのおかげで、窮屈に感じることはまったくない。またこの前席シート、高さ調整機構がすべてのグレードに標準装備となるのは評価できる。ただし、クッションの厚みと張りは十分ながら、ホールド感は今一歩。もっと沈み込ませてでも、身体を包み込んでくれた方がいい。
テスト車はシート表皮やドアトリムが、アイボリーで統一されていた。汚れるというイメージが強いのか、日本車とくに布シートでは採用例はあまり多くないアイボリーだが、これだけで室内はグッと開放的になるし、上等な雰囲気はかえって汚さず大切に使う気にさせる気もするのではないだろうか。
(後席)……★★★
プレミオの後席は、漠然と頭の中にある“5ナンバーセダンならこれぐらい”というイメージをいい意味で裏切る広さを誇る。身長177cmの筆者がきちんとした姿勢で座っても、頭上にはまだまだ空間が残されているし、足元も余裕だ。
リクライニングが可能なシートバックもプレミオの後席の特徴だが、一番起こした状態でもまだ寝過ぎというのが実際のところ。また、シートベルトの取付部分はリクライニングに連動しないため、寝かしていくと身体にうまくベルトがかからないのは不安にさせる。
安全装備についてさらに言えば、運転席・助手席SRSサイドエアバッグとセットになる前後席SRSカーテンシールドエアバッグのオプションが、「2.0G」と「1.8X“EXパッケージ”でしか選択できないのは不満だ。こうした装備は全車に標準装備でもいいくらい。オプションでも、せめてすべてのグレードで選べるべきだろう。
(荷室)……★★★★
バンパーレベルから大きく開くラゲッジスペースは、タイヤハウスなどの張り出しが小さくフラットで、なかなか使い勝手が良さそう。またカタログを見ると、「リッドの内側にもトリムを採用して上質感を演出した」とある。こうした部分こそ“いいモノ感”を醸し出す重要なポイントなのはたしかだ。
かさ張る物や長尺物を積む際には、6:4分割式のリアシートを折り畳むこともできる。これはクッションを引き起こしてからシートバックを前倒しする、いわゆるダブルフォールディング式で、左右両側とも倒せば長さ1700mmのフラットなスペースを生み出すことができる。今や誰もがミニバンの利便性を知っている世のなか。セダンといえどもこれぐらいできなければ、見向きもしてもらえないということか。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
編集スタッフの言うことをろくに聞かずに走り出して、しばらくの間、すっかり試乗車のこと、1.8リッターモデルだと思い込んでいた。要するに、それぐらい力に余裕があるということである。すくなくとも1名乗車ならば、急な上り勾配を全開で駆け上がるといった場面でも、大きな不満は感じさせなかった。4段ATは一般的なストレートタイプのゲートとオーバードライブスイッチを備えるタイプだが、下手にシーケンシャル式などとするより、こちらの方がよほど操作しやすいと思う。
静粛性も非常に高い。走り出す前から静かなクルマだなと思っていたが、走りだしてからも、その印象が損なわれることはなく、上質な室内の雰囲気を壊すことがない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★
乗り心地は、(当たり前ではあるが)道が良ければ基本的には悪くない。ただし、大入力を受けた際などには、おおげさに車体が煽られる感がある。もっと懐深く、しなやかに受けとめて欲しい。ハンドリングは終始安定したアンダーステア傾向だが、タイヤがプアなせいか、下り高速コーナーなどでは腰砕け気味に姿勢を崩すこともあった。同じ状況ではブレーキも、すぐに強烈な匂いを発して効きが甘くなる。ハードな走りをするクルマではないかもしれないが、過酷な場面での余裕こそが、走らせていてそこはかとなく“いいクルマだな”と感じさせる要因なのも、また事実のはずだ。
軽めに設定されたパワーステアリングは、街なかなどでは取り回しを軽快にしてくれる。しかし、高速域ではもうすこし、どっしりとした落ち着きと手応え感があってもいいだろう。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:島下泰久
テスト日:2005年3月8日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2005年型
テスト車の走行距離:928km
タイヤ:(前)195/65R15 91S(後)同じ(いずれもブリヂストンA340
オプション装備:ディスチャージヘッドランプ+ウォッシャー付き連動間欠フロントワイパー(雨滴感知式)(5万7750円)/音声案内クリアランスソナー(4万2000円)/G-BOOK対応DVDボイスナビゲーション付きワイドマルチAVステーション+音声ガイダンス機能付きカラーバックガイドモニター+TVアンテナ(28万8750円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(2):山岳路(4)
テスト距離:260.7km
使用燃料:18.6リッター
参考燃費:14.0km/リッター

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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