日産ラフェスタPLAYFUL(CVT/FF)/20S(CVT/4WD)【試乗記】
コンセプトに共感 2004.12.20 試乗記 日産ラフェスタPLAYFUL(CVT/FF)/20S(CVT/4WD) ……277万2100円/211万500円 スポーティな走りを訴求するライバルとは一線を画し、運転のしやすさ、明るい室内など、ピープルムーバーの本流に磨きをかけた「日産ラフェスタ」。自動車ジャーナリストの笹目二朗は、コンセプトどおりのクルマであることは評価するが……。
![]() |
![]() |
ピープルムーバーの本流
「ラフェスタ」は新車種として登場したが、初代「プレーリー」というユニークな車種を起源とし、「リバティ」「ティーノ」の後継役も兼ねる、ミニバンのなかでもピープルムーバーの本流だ。5ナンバーサイズのコンパクトなボディながら、3列シートにより7名定員を確保。全車にパノラミックルーフ(開閉しないガラスルーフ)や両側にスライドドアを配するなど、スタイリング面での特徴を持つ。
ラフェスタが使う「Cプラットフォーム」は、提携先のルノーでいえば「メガーヌ」、ミニバンなら「セニック」と共通ということになる。ただし、メガーヌの強固なボディを実現した二重フロア構造ではなく、日産で独自の補強を施した。FFモデルは、サスペンション形式こそメガーヌと同じだが、サブフレームやビームなどをクルマに合わせて変更している。4WDは、完全オリジナルのマルチリンク式である。
エンジンは新開発の「MR20DE」一種で137ps/5200rpm と20.4kgm/4400rpmを発生する。4WD仕様は同じ排気量でもチューンは異なり、129ps/19.1kgmとやや低いチューンとなる。トランスミッションはCVTのみだ。
ところで、このところ矢継ぎ早に新車種を投入して、活況を呈する日産車ながら、促成栽培の感も否めず、熟成の足りない部分も散見される。コンポーネントやユニットなどの単体は、一定レベルをクリアすれば一応納得するし、そこから先の細部の詰めには時間を必要とすることも想像できる。
しかし、クルマ全体として見た場合のバランス感覚というか、製品の仕上がりにはやや疑問が残る。乗り心地など、実用領域の最低レベルについては、バラつきの範囲を狭めてほしいところだ。初期品質の悪さは以前から日産の悪しき伝統であり、リピーターを減少せしめている原因は、そこにもあったはずだ。
というわけで、初期生産の広報車をもって全体を判断するのも酷ではあるが、ユーザーの立場も勘案して希望を託して見ていこう。
![]() |
![]() |
明るく開放的
ガラスルーフがこれだけ大きいと、開放感があり室内は明るい。サイドの三角窓周辺の処理も上々、ドアミラーによる死角もすくない。ノーズは身を乗り出せば見えるし、ワイパーブレードもすっきり納まって邪魔はなく、前方視界は良好だ。シートポジションも適切で乗降性も悪くない。“開放感のシフト”と運転のしやすさという、ラフェスタのセールスポイントが表現されている。
新しいエンジンは特別に感激するほどの存在ではないが、全域でおおむねスムーズ。改良ではなく新開発になるCVTは以前ほど騒音も気にならなくなったし、加速感も普通になった。
続いてベーシックグレード「20S」の4WDモデルに試乗した。4WDシステムは、油圧ポンプで後輪に駆動をオンデマンド配分する簡便型ながら、突然の雪やちょっとした砂浜を走る程度なら問題ない。砂利の浮いた舗装路でも無用なホイールスピンは起きなかった。
気になったのは、サイドブレーキの2度踏みリリース方式。トヨタ車の真似をすべきではない。サイドブレーキ本来の基本にたちかえって考えるべきだ。
煮詰めに甘さもあり
ただし、先に述べたように、試乗車の乗り心地があまり良くなかった。細い一般道を40〜60km/hくらいで走ると、ブルブルと上下振動が顕著なのである。最初に試乗した、オプション装備の16インチタイヤを履く「PLAYFUL」にその印象が強い。15インチを履いた「20S」(4WD)はやや解消されていたが、いずれにせよ毎日は乗りたくないレベルだ。
このクラスのミニバンは、ファミリーカーとして使うクルマであろうから、家族から文句の出ないレベルを確保すべきだ。半年待って改善されるとしたら、発売を遅らせるのがユーザーに対しての礼儀だと思う。
ラフェスタのコンセプトやスタイリングには共感するものはあるが、クルマ全体としてみた場合にまだまだ煮詰めの甘さを感じる。もっと良いクルマに仕上がる素地を秘めているだけに、もったいないと思う。
(文=笹目二朗/写真=峰昌宏/2004年12月)

笹目 二朗
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。