ボルボS60 T-5(5AT)/V70 T-5(5AT)【海外試乗記】
優しい高性能車 2004.10.26 試乗記 ボルボS60 T-5(5AT)/V70 T-5(5AT) 安全性を追求し続けることで有名なボルボ。2005年モデルには、コンセプトカー「SCC」の技術を採用するなどの新機軸が盛り込まれ、またエンジン、足まわりがグレードアップされた。自動車ジャーナリストの笹目二朗が、最新の「S60」「V70」2005年モデルに、ドイツはマインツで乗った。2005年モデルの新機軸
ボルボといえば、安全性をことさら熱心に追求することで知られている。安全性を高める新機軸を盛り込んだ実験車「SCC」で試みられた、カメラによる視認領域の拡大技術が、一部ながら2005年モデル「S60」「V70」で現実のものとなる。
新しい安全デバイスは「BLIS」と呼ばれ、ドアミラー下部に設けられたCCDカメラにより、ミラーの死角にある車両などを監視して警告ランプで知らせてくれる。車両の後方9.5m、幅3mの範囲で動的な物体を検知すると、室内側のミラー付近にあるランプが点滅。ドライバーは注意を促されて、ミラーでも確認するというわけだ。
車線変更だけでなく、斜めに合流するような場合にも有効だから、ヒヤッとする状況は確実にすくなくなるのではないか。もちろん誤作動もあるし、些細なことを指摘すればキリがないが、あれば便利だし、ボルボは他社に先んじてやりたかったのだろう。
ボルボの偉いところは、実用化しただけでヨシとせず、サイドウィンドウには撥水処理、ミラーには親水処理を施して、ミラーをしっかり見せる努力にも手を抜いていないことだ。なおこの撥水/親水処理は、「S80」や「XC90」にも採用される。
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大排気量NAユニットのよう
今回ドイツ・マインツ周辺で試乗できたのは、ボルボの主力車種であるS60/V70のハイパフォーマンス版「T-5」だ。
2005年モデルのエンジンは、排気量が2.3リッターから2.4リッターになり、パワーは10psアップの260psに、トルクは2.0kgmアップの35.7kgmとなる。
発生回転数も低くなっており、1800rpmで最大トルクの87%に当たる、31.1kgmが確保される。つまりトルクコンバーターのストール回転を待つまでもなく、発進はスッと遅滞なく行われるのだ。その後の加速もターボエンジンを意識することなく、自然給気の大排気量エンジンのように伸びていく。もはや“ターボ・ラグ”などという言葉は、ボルボの場合には死語と化してしまった。
ボルボS60/V70は、ドイツ車などのライバルが3リッターだ5リッターだと排気量に頼っているのを尻目に、たった2.4リッターで同程度の仕事をこなす。これもただターボを付加すればいい、というわけではない。連綿と時間をかけてチューンされてきた積年のノウハウが活かされており、いまやターボの悪癖という部分はまったく見当たらないまでに改良されている。
熟成が進む「FOUR-C」
サスペンション関係では、「S60R」「V70R」で好結果を得て「S80」にも装備された「FOUR-C」が拡大採用される。
FOUR-Cは、オーリンズ社のオリフィスを制御することで減衰力を可変する技術を使い、量産メーカーのモンロー社が製作、電子制御部分をチューニング担当のボルボが開発したもので、いわゆる電子制御のアクティブダンパーだ。この手のものは発想は同じだが、チューニングでまったく成否が分かれるから、電子制御だからといって皆同じではない。
一度試みたことのあるメーカーもいまはやっていない例もあることから、やはり、じっくり時間をかけて熟成していく努力が大切だ。
ボルボのコレは第2世代に進化している。ご多聞に洩れず、センターパネルのスイッチで、「コンフォート」と「スポーツ」のレンジを切り換えられるが、100km/h程度までなら乗り心地はどちらでもほとんど同じ。
スポーツモードは、ジムカーナのように速い大舵角を与えたとき、ロールなどストロークをきっちり抑えるタイプだから、ワインディングを飛ばすときなど、主に操縦性を求めるシチュエーションで切り換えると効果はある。
コンフォートのままでもオリフィスが固定されるわけではないから、操舵速度を適切に選んでステアリングホイールを切るならば、大入力を与えても、いつでも大きく破綻することなく収めてくれる。2つのモードは、単に乗り味の違いを確認するためのタイプとは異なるのだ。
内外装の小変更もあるが、基本的に「ボルボらしいボルボ」という印象に変わりはない。しかし、動力性能は高性能車のレベルに達し、経済性は小排気量車に近く、積もうと思えば広いカーゴルームがあり、乗り心地はサルーン並。欲すればスポーツカードライビングも受け付ける、という欲張った要求を高次元で満たす。ボルボとはつくづく不思議なクルマだと思う。さらに、人に優しい雰囲気という、ほかには真似のできないユニークなキャラクターも備えるのであるから。
(文=笹目二朗/写真=ボルボカーズジャパン/2004年10月)

笹目 二朗
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