トヨタ・カローラフィールダーS(5MT)【ブリーフテスト】
トヨタ・カローラフィールダーS(5MT) 2004.08.30 試乗記 ……213万9900円 総合評価……★★★ 「カローラ」シリーズを、セダンと並んで支える「フィールダー」ことカローラワゴン。中堅グレードの「S」に、自動車部門編集局長の阪和明が乗った。素の魅力の持ち主
実用性能の高いコンパクトサイズのステーションワゴンである。使い勝手はすこぶるよく、万人が安心して付き合えるパートナーと言ったらいいだろうか。ベースとなった「カローラ」もそうだが、普段使う道具と捉えると過不足ない。さすがトヨタのつくったクルマである。細かい部分の仕上げは申し分なく、まあ、価格に見合った商品に仕立てられている。
ただし、「乗って面白い」とか「走らせて楽しい」といったクルマとは、まったく違う。むしろベーシックカーとしてどう使うかで、このクルマに対する評価や満足度は分かれるかもしれない。毎日の移動手段として「使い倒す」のが「カローラフィールダー」には似合っていそう。素の魅力の持ち主ということだ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2000年8月28日に発表された9代目「カローラ」。セダン、ワゴン「フィールダー」、ハッチバック「ランクス」、ミニバン「スパシオ」のファミリーで、販売台数日本一を維持すべく、日々戦っている。
ワゴンのエンジンラインナップは、1.5リッター(110ps)、1.8リッターは、中低速トルク重視の132ps版と、高回転型の190ps版(出力は、いずれもFF、AT車)。FF(前輪駆動)のほか、4WDも用意される。
2004年4月27日にマイナーチェンジを受け、顔つきが豪華に、エンジンの環境性能も向上した。
(グレード概要)
フィールダーは、ベーシックな「X」、標準仕様の「X“Gエディション”」、ちょっと豪華な「S」、そして6段MT搭載のスポーティ版「Zエアロツアラー」がラインナップされる。テスト車「S」は、ややおとなしい136ps/6000rpmと17.4kgm/4200rpmの「1ZZ-GE」エンジンを搭載するモデル。「X」と比較した場合、カラードマッドガードやディスチャージヘッドランプが標準装備され、エアコンがオートになり、ステアリングホイールやシフトノブが本革巻きになるのが主な違い。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
妙な飾りがないのはいいが、インストゥルメントパネルのデザインは野暮ったい。これではステーションワゴンというよりバンだ。メーターにしてもそれは同じで、視認性は高いものの、緑、赤、白の目立つ照明はいただけない。機能的にはまったく不満はないけれど。
前席のエアバッグ、ブレーキのABS、ディスチャージヘッドランプ、オートエアコン、パワーウィンドウ、折り畳み式電動ドアミラーなどなど、必要不可欠な装備はほぼ揃う。これらに加え、テスト車にはブラインドコーナーモニターやカーテンシールドエアバッグ、DVDボイスナビ付きワイドマルチAVステーションといった総額38万円余のオプションが盛り込まれており、まさに至れり尽くせりだ。
(前席)……★★★
スエード調トリコット地のシートはかなりソフトな座り心地。しかし、それはコシのない柔らかさだ。形状にもこだわりがないので、スポーティに走らせたい人には物足りないだろうが、実用車と割り切ればなんとか許せる。ドライビングポジションは悪くない。天井と頭との隙間にも不満を感じない。
小物入れが豊富なのは日常使ううえで重宝する。ドアポケット、センターコンソールなどなど、すっと手の届くところに物が置けるのがよい。グローブボックスの容量も充分だ。
(後席)……★★★
シートクッションの張りが強すぎること、バックレストの傾きがやや強めなこと(これは個人の好みの問題かもしれない)を除けば、概して後席の居住性は良好である。クルマの全長が4400mmであることを考慮すれば、膝まわりの空間はまずまずだ。ヘッドルームにも余裕がある。狭いと感じることはないだろう。格納式のセンターアームレストが備わっているのも嬉しい。
(荷室)……★★★★
リアシートを使用する状態でもトランクは広めだ。大人4人が乗っても、それに見合った荷物の収納には苦労しそうもない。もちろん、ダブルフォールディング・タイプのシートを畳むことにより、広くフラットな荷室があらわれる。床面の仕上げのよさや、床下収納への配慮も申し分ない。不用になったとき、トノーカバー(ラゲッジカバー)のベース部分をすっぽり床下にしまえるなど、トヨタの親切心が伝わってくる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★
136ps/6000rpmのスペックを見ると期待してしまうが、エンジンの回り方はそれほどスムーズでなく、回してもパワーの盛り上がりはすくない。3500回転あたりから機械的な音が耳障りになるのもいただけない。もっとも、街なかで使うには充分なだけのトルクを生むユニットだ。
テスト車のトランスミッションはいまどき珍しい5段マニュアルである。MT自体けっして嫌いではないけれど、完成度はあまり高いとはいえない。シフトレバーのコクコクとした感触と前後方向の動きの大きさは、実用車の域を出るものではない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
総じて乗り心地はソフトだ。突起や段差を通過するときの路面からの突き上げはうまく処理されている。柔らかめのサスペンションセッティングのなせる技だが、高速巡航ではいささかフラット感に欠ける場面もなくはない。ハンドリングもそこそこのレベルで、積極的に飛ばしたくなるクルマとはいえないが、これまた実用の道具とみれば腹は立たない。スポーティに走りたいのなら、足まわりの異なる「Zエアロツアラー」を選んだほうがいい。
(写真=清水健太/2004年8月)
【テストデータ】
報告者:二玄社自動車部門編集局長 阪和明
テスト日:2004年5月26日-5月28日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2004年型
テスト車の走行距離:502km
タイヤ:(前)185/70R14 88S(後)同じ
オプション装備:ブラインドコーナーモニター&音声ガイダンス機能付きバックガイドモニター(5万9850円)/SRSサイドエアバッグ&SRSカーテンシールドエアバッグ(5万7750円)/G-BOOK対応DVDボイスナビゲーション付きワイドマルチAVステーション(CD/MD一体型ラジオ&6スピーカー)&ガラスプリントTVアンテナ(26万8800円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(7):高速道路(3)
テスト距離:173.9km
使用燃料:13リッター
参考燃費:13.4km/リッター

阪 和明
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