マセラティ・クアトロポルテ(2ペダル6MT)【試乗記】
“4ドアGT”を名乗るワケ 2004.08.16 試乗記 マセラティ・クアトロポルテ(2ペダル6MT) ……1373.6万円 “スーパー”な外観、妖艶なインテリア、400psオーバーのユニットによる駿足を持つ、マセラティの4ドアサルーン「クアトロポルテ」。走りに期待して試乗に臨んだ、自動車ジャーナリストの河村康彦だが……。君子危うきに……?
東名高速を走っていると、次々と前のクルマが進路を譲ってくれる。けっして車間を詰めてせっついたり、ましてやパッシングライトを点滅したワケではないのに、追い越し車線に出るとそんな状況が延々と続くのだ。
「いったい何でかなぁ?」と伴走車に乗り換え、後ろからやってくるこのクルマ「マセラティ・クアトロポルテ」の顔をミラーに映してみて、理由がすぐに納得できた。長いノーズの先端に巨大なグリルが低く構えた面構えは、なんというか“スーパーカー”のそれ。見たこともない凄そうなクルマをミラーに確認したドライバーが、“君子危うきに近寄らず”とばかり、思わず道を譲るのも当然だ。
ちょっとエッチなインテリア
一見“凄そうなクルマ”が本当にスゴいクルマであることを知るのは、きっとピニンファリーナ(に在籍する日本人デザイナー!)の手になるエクステリアよりも、むしろなんとも妖艶なインテリアに目をやったときだろう。いかにも厳選を重ねたことが素人目にもわかるレザーやウッドパネルがふんだんに用いられ、ちょっとエッチな(?)雰囲気を放つ。
クアトロポルテのインテリアは、「レザーカラーが10色にステッチが13種類、ルーフライニングが3種類にダッシュボードカラー10色……」などなど、都合400万通りにおよぶ組み合わせから、オーナーの嗜好によって選択が可能。事実上の“テーラーメード”仕上げが用意されるという。
ちなみに、後席センターコンソールには、ショファーのレッグスペースを稼ぐべく、フロントパッセンジャーシートをスライドできるスイッチが内蔵されていた。「ひょっとしてこれは究極のショファードリブンカーか!?」と考えたくなる。
一方、ステアリングポストに「マセラティ・デュオ・セレクト」(MDS)なる2ペダル6MTのシフトパドルが用意され、ドライバーズカーとしての顔も見せる。最高速度275km/h、0-100km/hを5.2秒でこなすという駿足を誇る、このクルマの特等席はいったいどこなのか? まぁそれは、一般庶民にはまったく関係のない問題であることだけは、間違いないが……。
捉えどころがムズカシイ
長いノーズの内部後方に“フロントミドシップ”マウントされた、魅惑的なサウンドを奏でる4.2リッターV8は、すでに「クーペ」や「スパイダー」に搭載されたエンジンを、中低速トルクを重視して軽くモディファイしたもの。最高出力400psという、ド級のユニットである。
2ペダル方式の6段マニュアルトランスミッションは、前後重量配分を均等にしてトラクション能力やハンドリング性能の向上を図るべく、ディファレンシャルギアと一体化してリアアクスル上にマウントする、凝った手法を採った。いわゆる「トランスアクスルレイアウト」だ。
当然ながら、走りのポテンシャルには期待が高まる。はずなのだが……、実際にはいまひとつ「コーナーを攻めたい!」という気になれなかった。それは、ボディの剛性感が思ったほど高くはなかったからだ。
横Gをさほど高めず、ボディに大きなストレスをかけない範囲では、フラットな姿勢で“フワッと走る”感覚がなかなかに心地よい。しかし、タイヤとサスペンションが踏ん張り、高Gを発してボディに大入力が入ると、途端にライントレース性が怪しくなる。クアトロポルテが“4ドアスポーツ”ではなく、“4ドアGT”を標榜するのは、こんな所に理由があるのかもしれない。
まぁ、全長はオーバー5m、重量が1.9トン近い4ドアスポーツがあったら、それはそれで恐ろしい気がするけれども。
そんなこんなで、正直なところ庶民そのもののぼくにとって、クアトロポルテはとらえどころが難しいクルマだった。クルマ自身がもし口をきけたとしたならば、きっと「ワタシのよさがアンタなんかにわかってたまるか!」と、のたまうに違いないのだろうが。
(文=河村康彦/写真=清水健太/2004年8月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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