ジャガーXタイプ2.5 V6 SEエステート(5AT)【短評(後編)】
最良のXタイプ(後編) 2004.07.29 試乗記 ジャガーXタイプ2.5 V6 SEエステート(5AT) ……568.1万円 日本でもリリースされた「ジャガーXタイプエステート」。Xタイプ“初期型”セダンを日常のアシとする『webCG』エグゼクティブディレクター、大川悠が箱根で乗って……。かなり勉強している
「ジャガーXタイプエステート」。ワゴンボディのデザイン上の狙いは、「スポーティブネス」よりも、まずは「大きな荷室を確保すること」と「ジャガー的なエレガンスを保つこと」だったという。
たしかに実際の荷室寸法は、シートアレンジ次第で445〜1415リッターになり、ジャガーは、メルセデスの「Cクラスワゴン」、「BMW 3シリーズツーリング」「アウディA4アバント」など、ライバルのどれよりも広いと主張する。それに、同じフォードグループ内の「レンジローバー」などと同様、テールゲートとリアウィンドウが個別に開閉できるというメリットも持つ。しかも荷室内部の仕上げや装備はかなり勉強している。
不満の残るリアシート
でもいいことだけではない。そうでなくても快適とはいえないリアシートは、特にバックレストが硬くなり、大事な客を乗せにくくなった。周知のようにこのクルマは、「フォード・モンデオ」と共通のプラットフォームを持つが、極端にいうとジャガーの場合、ホイールベースに対して、キャビン全体をやや後方にもってきたように思える。
そのためか、ドライバー足下のトーボードがやけに奥深い一方、リアシート位置に対してリアドアが後ろになり、結果としてセンターピラーからリアシート前端までの距離が非常に短くなる。しかもリアドアの開く角度が比較的限られていることもあって、リアへの乗り降りは非常にしにくい。
もともとそういうリアシートのバックレストがまた硬くなってしまったというわけで(それはメルセデスでもアウディでも同じだが)、Xタイプのリアルームは、さらに快適性を失った。
もうひとつ、これは比較的上質になった革内装のためもあるが、リアシートの折り畳みが割合重いし、特に完全に畳んだとき、ブラインドのケースの取り外しが一仕事になる。
3年待ってから
腰から上がジャガー設計の2.5リッターV6は、例によってかなり勇ましい音とともにスポーティに吹く。JATCOの5ATは、Jゲートのタッチも含めて、以前よりだいぶ改善されたとはいえ、まだ多少鈍いところがある。が、これも年を追ってよくなっていくだろう。
『webCG』スタッフによれば、箱根などで飛ばしていると、2リッターの方が軽快で楽しいという。それはとても理解できる。でも、Xの価値は4WDにあることを、「2.5 SE」セダンの初期型と2年半以上暮らしているリポーターは信じている。
そしてこのエステートのできからしても、セダン版の2.5 SEも相当によくなっていることがうかがい知れる。やはりジャガーは、3年待ってから買った方が良さそうだ。
(文=webCG大川悠/写真=荒川正幸・ジャガージャパン/2004年7月)
ジャガーXタイプ2.5 V6 SEエステート(5AT)(前編)
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000015530.html

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
NEW
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。 -
NEW
トヨタ車はすべて“この顔”に!? 新定番「ハンマーヘッドデザイン」を考える
2025.10.20デイリーコラム“ハンマーヘッド”と呼ばれる特徴的なフロントデザインのトヨタ車が増えている。どうしてこのカタチが選ばれたのか? いずれはトヨタの全車種がこの顔になってしまうのか? 衝撃を受けた識者が、新たな定番デザインについて語る! -
NEW
BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ(FR/8AT)【試乗記】
2025.10.20試乗記「BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ」と聞いて「ほほう」と思われた方はかなりのカーマニアに違いない。その正体は「5シリーズ セダン」のロングホイールベースモデル。ニッチなこと極まりない商品なのだ。期待と不安の両方を胸にドライブした。