ルノー・メガーヌツーリングワゴン2.0(4AT)【短評(後編)】
人との対話(後編) 2004.07.13 試乗記 ルノー・メガーヌツーリングワゴン2.0(4AT) ……281.4万円 「実用車としては優良児」と「メガーヌツーリングワゴン」を評した『webCG』エグゼクティブディレクター大川悠。しかし、どうしても気になるところが……。最大の弱点が古くさいAT
「メガーヌツーリングワゴン1.6」の「走る性能」に関しては、『webCG』アオキ・エディターは比較的冷淡だった(http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000015333.html)が、実はリポーターもそれに同意する。そして、その理由を、ちょっと推測する。
EPS(電動パワーステアリング)と4段ATのプログラム、それが1.6で指摘された弱点である。
EPSに関しては、たしかに最初は不自然さを感じるかもしれない。特に最近日本車がこの面では相当よくなっているから、これと比較すると、特に乗り始めは違和感を感じるだろう。でも、FWD(前輪駆動)特有のトルクステアを油圧ではなくて電気的プログラムでどう対応するか、いま、ルノーが懸命に努力していることが、文字通り手のひらで感じることができる。
最初はちょっと反応が人工的に感じられるが、たぶん1時間も乗っていれば慣れる。微小域でのフィールはともかく、1日乗っていたら、これはこれでいいと思った。というのも、こういう技術は、各メーカーともに短時間で解決できるからだ。
4ATの問題は、もうすこし大きい。これはいまでも、ヨーロッパの主要ファミリーカーメーカーすべてにとっての課題である。端的に言うなら、いままでMTで充分と思っていたけど、「これからはオートマなしじゃだめだろうかな?」というレベルがまだ多い。
ルノーはだいぶ前から電子制御ATなどで腐心してきたが、まだ日本車とはかなり差がついている。たぶん、いまのメガーヌの最弱点が4ATだろう。
リポーターは過去のルノー系ATにかなり経験があるし、10年前に比べるなら驚異的によくなったことは認めるが、でも、このメガーヌではもうすこし頑張って欲しかった。本当は5ATが欲しい。それが無理なら、すくなくともトルク特性が異なる1.6とはギアリングを変えるべきだったと思う。
2.0の場合、ややロアーギアードになる。100km/hでトップ3000rpm、日本の高速道路の事実上の巡航速度たる120km/hでは3200rpmになる。
2リッターエンジンとの組み合わせでは、もちろんトルク的にはとてもいい場所をついているが、音も振動もかなり大きい。ルノーが1960年代から受け継いでいるような、特有の中波数領域の音を立てながら100−120km/hで巡航しているときには、もう一速上が欲しくなる。
足まわりは、中低速で意外と路面の雑音を拾ったり、多少反発力を感じさせるが、100km/hを超えると途端にフラットでナチュラルになる。そのうえステアリングの直進性もよくなって、まさに地平の果てを目指すクルーザー的な世界が生まれる。だからこそ、もうすこし低いレブで走りたいのである。
デザイナーよりも大切なテスター
予想より長くなってしまった。
メガーヌでルノーは、「触覚領域を大切にした」と謳う。実際にその領域こそ自動車設計の最後の部分として期待していた。
でもメガーヌにおいては、“デザイナーが考える触覚”だけしかなかった。スイッチやドアハンドルの内側、ステアリングに付いたコントローラーの接触領域はかなり研究している。
その反面、とても残念だったのは、もっとクルマ自体の機械制御に関わる触覚領域が未開拓だったことだ。前述のEPSやATにもあらわれているが、人間と機械との感覚をどう結びつけるか、ここをあまり深く追求していない。
過剰に鋭敏なくせに、ATのためもあって、足裏でのエンジンの応答が不自然に感じるスロットルペダル、初期に妙に食いつきたがるブレーキ、そして最初の切り始めが弾性で跳ね返されるステアリング、実際に動かすとラフなATシフト。これら、本当に機械とのコミュニケートをはかる多くの面で、人との対話が成立しにくかった。
乱暴にいってしまえば、いいデザイナーはいても、ドライバーの感覚を代弁する優れたテストドライバーの意見があまり入っていないように感じた。
基本アーキテクチュアはとても正しいクルマである。ただ、もうすこし煮詰めるなら、本当のいい実用車になると思う。
(文=webCG大川悠/写真=峰昌宏/2004年7月)
【関連リンク】
ルノー・メガーヌワゴン2.0(4AT)【短評(前編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000015468.html

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
-
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】 2026.6.2 かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】 2026.5.28 前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。
-
NEW
第290回:商用バンで砂漠を行く親子が向かうのは天国か地獄か 『シラート』
2026.6.4読んでますカー、観てますカー失踪した娘を探して親子はモロッコの砂漠へ。砂漠で開催されていたレイブパーティーが最高潮に達した頃、軍隊がやってきて中止させられる。親子が乗るFFの商用バンは次のパーティー会場にたどり着けるのか……。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(前編)
2026.6.4あの多田哲哉の自動車放談ひさびさに日本市場に戻ってきた、ホンダを代表するSUV「CR-V」。最新世代の仕上がりを、トヨタの車両開発者だった多田哲哉さんはどう評価する? まずは、ワインディングロードを走らせた第一印象から。 -
NEW
第964回:フィアットグッズのコレクターから学ぶ人生訓
2026.6.4マッキナ あらモーダ!イタリア在住の大矢アキオが、トリノで著名なフィアットグッズのコレクターを取材。若き日の苦労を経て大成した人物が語る、人生で大切なものとは? フィアットやイタリアの歴史を物語る、貴重なコレクションの数々とともに紹介する。 -
NEW
気づけばすでに4モデル スバルのBEV戦略と水平対向エンジンの未来を考える
2026.6.4デイリーコラム「ソルテラ」に続き、「トレイルシーカー」「アンチャーテッド」「ゲッタウェイ」と、いつの間にか4モデルが顔をそろえたスバルのBEV。伝統的な水平対向エンジンやシンメトリカルAWDはこの先どうなるのか? スバルの未来戦略を探る。 -
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】
2026.6.3試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。 -
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感
2026.6.3デイリーコラム「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。























