フォルクスワーゲン・ボーラ(4AT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・ボーラ(4AT) 2004.04.13 試乗記 ……318万6750円 総合評価……★★★ 「ゴルフ」ベースの3ボックス「ボーラ」を、「乗ってみるといいクルマ」と評価する自動車ジャーナリストの生方聡。一方、少々歯がゆく感じるところも……。
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自動車界の“いいヒト”
世の中には、「いいヒトなんだけどね」というタイプがすくなくない。クルマの世界では、フォルクスワーゲン「ゴルフ」の3ボックス版「ボーラ」がそんなタイプだ。これといって突出した部分はなく、ちょっと地味な存在なのだが、乗ってみると実にいい。
実は私の会社で約2年間ボーラを所有していたが、サイズが適当なのと、快適性が高いおかげで、どんなに疲れていても運転が苦になることがなかった。社用車は2.3リッターV5エンジンを搭載する「ボーラV5」(341万2500円)だったが、今回試乗した2リッターモデルはさらに安楽で、日常の足として使うのはぴったりの存在である。それでいて、インテリアに安っぽさはないし、高速道路も矢のように走る、まさにVWらしい性格は、ドイツ車好きでなくとも満足のいくものだ。ただ、あまり“押し”が強くないぶん、なかなかそのよさをアピールできないのが残念。ホント、いいセダンなんだけどね。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「ゴルフ」のIとIIには「ジェッタ」、ゴルフIIIには「ヴェント」と、歴代のゴルフには3ボックスバージョンが用意された。ゴルフIVの3ボックスモデルが「ボーラ」である。ちなみに北米では、いまもジェッタと呼ばれる。
ドイツ本国では、3ボックスの他にワゴンボディの「ボーラヴァリアント」が用意されるが、日本に導入されるのはセダンのみ。FWDモデルとしては、ゴルフCLi/GLiと同じ2リッター直列4気筒SOHCエンジンを積む「ボーラ」と、2.3リッターV5SOHCエンジン搭載の「ボーラV5」、そして2.8リッターV6SOHCを積む4WDの「ボーラV6 4MOTION」がラインナップされる。
(グレード概要)
ボーラの2リッター直4SOHCエンジンは、116ps/5400rpmの最高出力と、17.5kgm/3200rpmの最大トルクを発生。トランスミッションは、マニュアルモードのない、コンベンショナルな4段ATが組み合わされる。シートはクロスシートが標準装備だが、ゴルフの上級に位置付けられるため、ステアリングホイールやシフトノブには、本革巻きが奢られる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
基本的にはゴルフと同じデザインのインテリアを採用するボーラ。メーターパネルには、大型の速度計と回転計、そして、平均燃費や走行時間などの各種情報を表示するマルチファンクションインジケーターが、見やすくシンプルにレイアウトされている。ライト点灯時に文字盤がブルーのイルミネーションで浮かび上がるのは、いまやフォルクスワーゲンのアイデンティティである。ボーラはゴルフのセダン版であるが、ゴルフよりも上に位置付けられていることから、2リッターモデルでも、本革巻きステアリングホイール/パーキングレバーグリップやウッドパネルが採用されたり、標準でオートエアコンが付くなど、装備の充実が図られている。試乗車に装着されるカーナビは、DVD方式の純正オプションで、マルチファンクションインジケーターに案内の矢印が表示されるのが便利だ。
(前席)……★★★★
明るいベージュのシートは、座り心地がよく、サイズも適当。ダイヤル式のリクライン調節は、細かいポジション設定が可能。さらに、チルトとテレスコピック調節を備えるステアリングコラムにおかげで、最適なポジションを取ることができる。日本車ではチルトだけでテレスコピック調節がないクルマが多いが、フォルクスワーゲンでは下位モデルの「ポロ」でもテレスコピックが採用されており、このあたりはぜひ見習ってほしいところだ。
(後席)……★★★
座り心地そのものは悪くなく、前席の下に爪先もすっぽり入り、膝の前にスペースが確保されるわりに、窮屈な印象のリアシート。爪先をもうすこし前に出せるとラクなのだが……。頭上のスペースも、ルーフが後方に伸びるハッチバックやワゴンに比べると狭い。乗り心地は、前席よりもリアタイヤから伝わるショックが大きく、クルマのキャラクターを考えるともうすこしマイルドな乗り味がほしい。中央の席にヘッドレストや3点式シートベルトが用意されないのも残念。
(荷室)……★★★★
セダンとはいえ、ハッチバック並みの使い勝手を誇るのがボーラの荷室だ。フォルクスワーゲンでは常識だが、トランクリッドがダブルリンクのヒンジで支えられるため、ヒンジが荷物に干渉しないし、リアシートにダブルフォールディング機能が備わるので、わりと大きな荷物でも飲み込んでしまうのがうれしい。そもそもリアシートを起こしていても奥行き100cm、畳めば160cm以上という大型トランクを使い切ることは、なかなか困難なのだ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
ゴルフやこのボーラに搭載される2リッターエンジンは、いまどきSOHCの2バルブで、最高出力116ps、最大トルク17.5kgmとカタログスペックも控えめな値。しかし、数字だけで判断できないのがVWの面白いところで、実際に運転してみると、このデータが信じられないほど低回転ではトルク豊かで扱いやすく、レスポンスにも優れる。しかも、デビュー当時に比べて格段に静粛性がアップし、実用エンジンとしては完成の域に達したと言っていいくらいの熟成度である。高回転までスムーズにまわるものの、パンチがないのが不満といえば不満か?
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
195/65R15タイヤと15インチアルミホイールが標準装着されるこの2リッターモデルは、さほど硬められていないサスペンションとあいまって、一般道から高速道路まで快適な乗り心地をもたらす。そのかわり、高速走行時のフラット感が多少足りないと思った。矢のような直進安定性は健在。ワインディングロードでは終始安定したアンダーステアを示し、初期のロールも大きめで、軽快な印象は薄いが、どんな場面でも安心してステアリングを握れるのがこのクルマの長所である。
(写真=清水健太)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2004年2月10日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年12月登録
テスト車の走行距離:2004km
タイヤ:(前)195/65R15 91V (後)同じ(いずれもミシュラン Pilot Primacy)
オプション装備:マルチメディアステーション/チルト機構付電動ガラススライディングルーフ[UVカット機能付](36万2250円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(4):山岳路(4)
テスト距離:356.0km
使用燃料:39.0リッター
参考燃費:9.1km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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