トヨタ・クラウン3.0ロイヤルサルーンi-Four Uパッケージ(4WD)【ブリーフテスト】
トヨタ・クラウン3.0ロイヤルサルーンi-Four Uパッケージ(4WD) 2004.04.11 試乗記 ……571万9350円 総合評価……★★★★ 4年ぶりのフルモデルチェンジで12代目となった「クラウン」。豪華装備の上級グレードに、別冊CG編集部の道田宣和が試乗した。オヤジを変えねば
メルセデスやBMWの跳梁跋扈は目に余る(特に都会では)、なにしろ美味しいところを全部持ってっちゃうんだから、と天下のトヨタが考えたかどうか。とにかく通算12代目となる新型「クラウン」はこれまでにない大きな変化を遂げた。すくなくともクルマの基本である「走る・曲がる・止まる」に関しては、思わず「これがクラウンか!」と叫びたくなるほどの大進歩なのである。
キャッチフレーズは“ZERO CROWN”。すべての設計を一旦白紙に戻し、ゼロからやり直したからだという。そこで思い出すのが初代「セルシオ」で謳われた“源流対策”なる言葉だ。一般に「ネガを潰す」には対症療法と根治治療のふたつがあるが、源流対策はもちろん後者。たとえばエンジン騒音の低減は後付けの遮音材でごまかしたりするのではなく、エンジンそのものを、その音源にまで遡って徹底的に静粛化する。それには既存のエンジンより新設計のほうがやりやすいに決まっている。歴代クラウンの設計者はセルシオの成功を横目で見ながら、この日が来るのを切歯扼腕の思いで待っていたことだろう。
それでもやっぱりクラウンはクラウン、セルシオとは違う種類のクルマだった。依然残る寸法や排気量の差もさることながら、主たる違いは乗り手を念頭に置いた雰囲気づくりとテイストにある。米欧をはじめ世界中で売られる「レクサス」ことセルシオに対して、クラウンはあくまで国内が中心。これだけ変貌を遂げてなお、伝統的なユーザーであるオヤジたちのポマード臭のようなものが漂っていた。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
かつては「セドリック/グロリア」とともに“国産フルサイズ”と称されたクラウンだが、周囲のクルマがすっかり大型化したいま、新型はさほど押し出しが利くようには見えない。その理由がCd=0.27を誇る空力ボディの丸さにあるのは明らかだが、これまで「高級車は四角」が当たり前だったデザインポリシーを180度転換させたのもまた、全長4840×全幅1780×全高1470(4WD=1485)mmと旧型より20mm長く、15mm幅広く、15mm高いサイズ的な余裕であることは間違いない。その割に車重が1550kgからと比較的軽いのは、各種軽量素材の積極的な採用による。そのうえで伝統の格子グリルを配し、クラウンであることを強く主張しているのが、シリーズのなかでも“保守本流”を自任し、スポーツ系の「アスリート」とは好対照を成す「ロイヤルサルーン」だ。
メカニズムは文字どおりすべてが新しい。エンジンは従来の直6に代えてGR型と呼ばれるDOHCガソリン直噴V6 2.5リッターと同3リッターが用意され、前者は5段の、後者は6段のオートマチックと組み合わされる。FR(後輪駆動)が基本だが、後者では平常時の前後トルク配分が30:70の湿式多板式フルタイム4WDを選ぶこともできる。パワー、トルクはそれぞれ215ps/6400rpm、26.5mkg/3800rpmと256ps/6200rpm、32mkg/3600rpm、旧型より確実な向上を示している。
サスペンションは全輪コイルに担われた前ダブルウィッシュボーン、後マルチリンク。モノチューブ式ダンパーの採用が目新しい。パワーステアリングのアシストは電動式。いまや高級車に安全装備は不可欠とあって、VSC(ビークル・スタビリティ・コントロール)やEBD(電子制動力配分制御)付きABSなどが全車標準となっている。
(グレード概要)
テスト車は「3.0ロイヤルサルーンi-Four Uパッケージ」といい、下は2.5ロイヤルエクストラの330万7500円から揃う、新型クラウンシリーズの頂点に立つモデルだ。Uパッケージは456万7500円の(標準型)「3.0ロイヤルサルーンi-Four」に、「40:20:40分割式」リアパワーシートをはじめ、リアオートエアコン、排ガス検知式内外気自動切り替えシステム、マイナスイオン発生装置、AFS(ヘッドランプコントロールシステム)などの豪華快適装備を付加したものだ。そのぶん価格は高く、523万9500円もする。さらに、テスト車には近赤外線を利用した先進の夜間視覚補助装置「ナイトビュー」(31万5000円高)ほかが付き、総額は571万9350円にのぼった。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
最近は新型車に初めて乗るとき、それもすこし急ぎのときは、たとえエアコンやカーナビ、オーディオなどがどうなっていようとも、とりあえずは無視、まずはパーキングブレーキを解除し、走る機能についてだけ確認しておくクセがついた。そうでもなければ覚えることが多すぎてなかなか走り出せないからだ。装備満載の高級車ともなればなおさらで、このクルマの場合もまさにそうだった。
人間はそんな、いわば平常心を失いがちな状況のなかで優しい声をかけてくれたりすると、気持ちがコロッと傾いてしまうもの。その点、クラウンはドアがスッと開いて(任意の角度で)スッと止まるから、隣のクルマを気にすることなく落ち着いて乗り降りできるのがまずもって助かる。優しいといえば、くっきりと明快な照度コントロール付きオプティトロンメーターや、視野が広く、歪みもすくないドアミラーも気に入った。巧妙な仕掛けで2段階に開くセンターコンソールの蓋がまるで油を引いたように動きがスムーズなのも気持ちがいい。ZERO CROWN最大の目的は「高齢化したオーナー層の引き下げ」にあるとされるが、一見平凡でも使用頻度の高いこうしたディテールのよし悪しは真の高級感につながるはずで、それが守られたのは卓見というべきか、賞賛に値する。当然、老若問わず歓迎されるはずだ。
数ある“エレキ”のなかでは高精細DVDボイスナビとスマートエントリーシステムが好印象を残した。なにしろ前者は100km/hで走行中も、最大縮尺の25mスケールがそのまま表示される高性能ぶりだし、後者は夜間クルマに近づいただけでドアミラー下部に組み込まれたライトが乗り込む前から足下を照らし、便利このうえないからだ。ナイトビューは初めて目にしたときは思わず「おおっ」と感嘆の声を上げさせたが、肝腎のスクリーンが小さく、効果のほどを充分には確認できなかった。
ブレーキ制御付きレーダークルーズコントロール(オプション)は、一定の車間を保って機械が自動的に加速/減速/巡航する様子が見ていてとても面白い。50km/h以下になると機能そのものが解除される(つまりブレーキもかからなくなる)から、高速道路以外での使用は控えたほうが無難である。
(前席)……★★★
さすがにこのクラスだと狭くて困るということは断じてないが、だからといってことさら伸びのびした感じも受けない。いや、むしろこの日はたまたまセルシオと一緒だった不運もあるのだろう、絶対的なスペースの違いもさることながら、特に前席では多少の圧迫感を覚えたのも事実である。思うに、比較的位置が高くて胸に迫ったダッシュボードと、空力のためか上に行くにしたがって窄まったサイドからルーフにかけての形状(タンブルフォーム)がそうした印象を強めているに違いない。こうなると開放感のためにオプションの電動ムーンルーフが欲しいところである。
それにしても、いわゆる“趣味”の部分に関してだけは相変わらずだ。ほとんど茶色としか見えない“ブラッキッシュレッドマイカ”のボディカラーに組み合わされたテスト車の内装色は、シートがアイボリー、木目調パネルがライトブラウンとあるが、“ジャカード織り”のシートはその厚ぼったくも平板なつくりがいかにも年寄り好み、木目調パネルは“ライト”というには色合いがきつすぎて、好悪の情がハッキリと別れるに違いない。
(後席)……★★★★
タンブルフォームのきつさを感じるのは後席も同じだが、主としてレッグルームが広いぶん、また目の前を遮るダッシュボードがないぶん、前席よりはかなりゆったりした気分が味わえる。テスト車はこれにバックレストが中折れタイプの電動リクライニングと凝った空調、電動リア(ウィンドウ)サンシェード、リアドアサンシェード(手動)ほかが加わり、広さとともに秘匿性や抜群の快適性も手に入れていた。要はショーファードリブンカーとしても充分な資格があるということだ。もっとも、セルシオならさらに広いのだが。
(荷室)……★★★
いまどきトランクは、特にこのクラスのクルマではさほど重要視されていないのか(けっしてそんなことはないはずだが)、カタログには1葉の写真、1行の記述たりとも載っていないのが不思議と言えば不思議である。それはともかく、総じて使い勝手は悪くない。開口部の仕切りが低くてアクセスはいいし、フロアはフラットで荷物固定のためのネットも付いている。ただし、リアエアコンの存在が原因か、奥行きは案外大したことがなく、容量そのものはごく平均的。ちなみにコストのためか、このグレードとFRのトップモデル、3.0ロイヤルサルーンGだけがスペアタイアにレギュラーサイズを積み、それ以下はすべてテンパーとなる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
最近、常々疑問に思っていたことが北海道の知り合いの言葉で氷解した。日本車は軽自動車を含めて4WD全盛だが、それにしてもなぜこのクラスにまで必要なのか理解できないでいたのだ。どうやら積雪地でミラーバーンのために坂を上れないことがあるらしい。「地域の名士」がひとり置いてけぼりではサマにならないわけだ。
そんな目で見るとこのクルマ、必要に迫られての4WD化だが、にもかかわらずそれにともなうデメリットがまるで感じられず、本来の快適性や性能がそっくりそのまま確保されているのがエライ。FRモデルとの重量差は60kg程度、率にして4%弱の増加にすぎず、もともと充分なパフォーマンスにはほとんど影響ない。実際、無音に近いアイドリングからD/6速=1950rpmの100km/hまで粛々としたクルージングが楽しめる。一方、いざスロットルを深く踏み込むと、まるで小型高性能エンジンのように6400rpmのリミットまで一気にシュワーッと吹け上がって豪快な加速を披露する。旧式なスタッガードゲート(ジグザグ)を持つ2.5リッターの5段型と違って、シーケンシャルモード付きの6段オートマチックは操作性に優れ、積極的なマニュアルチェンジにもピッタリだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
昔のクラウンを知る者にとって一番の驚きはステアリングである。かつては、異常なほど軽くて、曖昧で、遊びがあり、むしろそのこと自体を善しとするメーカー側の姿勢さえ感じられたことからすれば、新型はまさに革命的というべきだ。ZERO CROWNのステアリングはすべてその逆。適度な重さとしっかりした操舵感があり、シュアでナチュラルなのがいい。ロック・トゥ・ロック3.4回転の速さもこのクルマにはちょうどいい。しかも、パワーアシストが、いままであまりできのいい代物に出会ったためしがない、電動式というのだからちょっと意外だった。
自然と言えば、ワインディングロードを飛ばした際の(そう、喜ぶべきことにいまや山道を愉しめるレベルなのだ!)挙動そのものもそうだった。VSCに支えられたグリップに不安はなく、ロールは終始浅めに抑えられ、ストロークがたっぷりでボトミングを喫することもなく、コーナーに自信を持って飛び込めるのだ。ダンピングが良好なのも誉められていい。
乗り心地はしっかりしているが、それよりは硬めという印象の方が強い。なかでも目地や段差では、タイヤ踏面の硬さからか、それともブッシュやダンパーなどサスペンションそのものの硬さからか、乗り越える際にタンタンと音をともなったハーシュが感じられる。同時に、そのときフロアを通して若干の振動が伝わるのもいささか高級車らしくない。要は、まるでヨーロッパ流の足まわりになったということだ。この大変化を前にして、保守的なユーザーがどう反応するか、興味のあるところだ。
(写真=清水健太)
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【テストデータ】
報告者:道田宣和(別冊CG編集室)
テスト日:2004年2月13日〜16日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2004年型
テスト車の走行距離:3132km
タイヤ:(前)215/60R16 95H(後)同じ(いずれも、トーヨーPROXES)
オプション装備:音声ガイダンス機能付きカラーバックガイドモニター&クリアランスソナー(9万1350円)/ヘッドアップディスプレイ付きナイトビュー(31万5000円)/ブレーキ制御付きレーダークルーズコントロール(7万3500円)
形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(5):高速道路(3)山岳路(2)
テスト距離:525km
使用燃料:78.0リッター
参考燃費:6.7km/リッター

道田 宣和
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