第105回:「コージのジュネーブショー通信」その2 アウディ和田師匠の金言(後編)
2004.03.22 小沢コージの勢いまかせ!第105回:「コージのジュネーブショー通信」その2 アウディ和田師匠の金言(後編)
■アウディのデザイン哲学
(前回からの続き)
小沢:でも、アウディのデザインは、以前からシンプルでしたよね。今回はどこが変わったんですか?
和田:ボディサイドを見ればよくわかる。柔らかいラインが下から上に持ち上げてあって、面がすこし、ちょっとタッチを意識した。いわば人間的なヒューマンラインになってる。
小沢:うーん……。俺には難しいけど「人間的」「暖かみ」って解釈するとわかるような気もする。ところであのダブルグリル、「フォルクスワーゲン・コンセプトC」のグリルと似てるってウワサがあるんですが。
和田:アレもまったく違うんだよ。A6のグリルには2つの意味があって、1つは“アウトウニオン(アウディの前身)のシンボル”、もう1つは「レスザンモア」って考えからきてる。いわば、アウディデザインの基本理念だよね。
小沢:聞いたことあります。
和田:英語では「Do noting more than doing too much」、「ありすぎるより、ないほうが素晴らしい」って考え。アウディは、グリルの下にもう1つの空気取り入れ口があったでしょう。新型はアレとグリルを繋げて、無駄なラインを省いてあるわけ。
一方、VWのデザインは、純スタンダードブランドが採用したトレンドでしょう。ヨーロッパのカーデザインが目指す、エモーショナルな方向の1つ。ある意味アウディの逆かな。アウディが「マイナス」、つまり減らす方向のデザインだとしたら、VWは「プラス」つまり増やすデザイン。そういう意味では、アウディはBMWとも対称的で、BMWのデザインは要素を増やしていく方向なのに、アウディは減らす方向。すごく比べられる存在だけどね。
小沢:うーむ、そうか。言葉にすると面白いな。
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■捨てるモノ、残るモノ
小沢:ただ、シンプルデザインで新しいものを生み出すのって、難しくないですか? 理屈でいけば行くほど、どれも同じものになっちゃうっていうか。
和田:うーん、まだわかってないな、そんなことはないんだよ。“自分にとってこれ以上減らせない状況”、それがシンプルといういうことであり、そうなったらなったで、案外次なる道が見えてくるものなんだ。
小沢:はぁ。
和田:たとえば、引越しひとつするにしても、モノを減らそうとしても「どうしても残るもの」ってあるでしょう。絶対に捨てられないモノが。
小沢:わかるなぁそれ。捨てられないものってあるし、離婚できない人っていますよね。
和田:でも、さらにその先があって、人生を変えたいのなら、すべてを捨てるしかない。もちろん一大決心がいるけどね。
小沢:「捨てる」かぁ。それがアウディの魅力であり、方法論なんですね。エラく哲学的。
ところで、新しいものを出す時、認められるか認められないかって、怖くないですか?
和田:それは「次」だね。デザインにせよ、なんにせよ、モノをつくり上げるには、まず自分の中で突き詰めないと。デザインなんてある種、宗教みたいなものだから、最終的には自分で信じられるか、信じられないかだけ。認められる認められないは、その次だよ。
小沢:……。うーん、和田さん。感動した。すんげぇ勉強になりますよ。「捨てた先に見えてくるもの」、そして「自分を信じる力」ね。
和田:ひとつ考えてみてください。
小沢:ところで、なんか報告ってありますか。
和田:「パイクスピーク クワトロ」生産決定! 時期はいえないけど。
小沢:それはおめでとうございます。マジ、期待してます。
ってな具合です。ねっ、ステキでしょ、和田さん。
その後、和田さんから補足メールがあって「デザインは宗教ではありません。“あるデザインを信じる”ということから、似た要素があるということです。むしろデザインはもっと思想的、哲学的なものだと思います。その辺のところうまく理解していただいて、コメントお願いしますね!」とのこと。みなさんも、そこんとこ誤解なきよう!
(文=小沢コージ/2004年3月)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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