第103回:「コージのジュネーブショー通信」その1 これから変わるかもよ? VWグループ
2004.03.19 小沢コージの勢いまかせ!第103回:「コージのジュネーブショー通信」その1 これから変わるかもよ? VWグループ
■変わる(!?)VWグループ
すいません、かなーり遅くなりました、ジュネーブショー報告。べつに怠けてたんじゃアリマセン。出張で原稿たまってたので……、あしからず。
ジュネーブはいろいろ面白かったんだけど、印象的だったのは、フォルクスワーゲングループのおはなし。ショー開幕前夜に、VWグループ全体のプレスカンファレンスがあったんだけど、コレが今後のVWを暗示する催し物でありました。
VW グループが出展したクルマは、「アウディA6」「VWコンセプトC」「ランボルギーニ・ムルシエラゴロードスター」など、いろいろあったんだけど、それは後まわし。今回のキモはちと違う「デザイナー交代劇」について。といっても、単なるデザイナーのハナシではない。VWグループ(コンツェルンと向こうでは言ってました)を総括するデザイナーの交代なのだ。
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■鉄人と二枚目
今までは、Dr.ハートムート・ヴァルクスという人がやっていて、それがムーラット・ギューナックさんという人に代わったのだが、勝手な印象からいうと、その転換は凄く大きそう。
Dr.ヴァルクスさんは現在63歳。VWひと筋で、実に36年も勤めた実直そうな人。見た目はいかにも「ゲルマン人」って感じの職人タイプで、強引にカテゴライズしちゃうと「カール・ハインツ・ルムメニゲ」風。そ、元サッカードイツ代表の鉄人だ。
一方、新任のギューナックさんは、親しみやすそうな「マイケル・J・フォックス」風。背はちょっと低めだが、マジでサワヤカな二枚目だし、おまけに年齢も 46歳と若い。「この人がこれからVWグループをまとめていくのか〜」と、時代を感じさせるものがありました。さらに、直接話してわかったけど、メチャクチャ腰が低い「コミニュケーション上手」。ヴァルクスさんとは、恐らく違うであろうタイプである。
ヴァルクスさんは、カンファレンスの最後にこう言った。要約すると「私はピエヒさん(前VWグループ代表)、ピシェッツリーダーさん(現代表)と衝突しましたが、いいデザインを……」ってな具合。これまた勝手な想像ながら、まさにゲルマン・デザインを守ってきた人っぽいんだよね。あくまでも「質実剛健」「流行に流されない」デザインにこだわってきたのではないかと。利益を追求したい経営陣と衝突しながら……。
一方、新しいギューナックさんも「時代を超えたデザイン」を強調してたから、ヴァルクスさんと基本は変わらないと思う。のみならず、どんどん上手に「時代」を取り入れていくタイプなんじゃないでしょうか。各グループのバランスを絶妙に取りながらね。
■自動車トレンドも変わる!?
それが一番感じられたのが、今回出展された「コンセプトC」。明らかに「これがVW?」って部分があるのよ。去年の東京モーターショーにも出た「コンセプトR」もそうだったけど。
ギューナックさんは、「これからのVWは、もちろん今までの普遍的な価値を守りますが、さらに“エモーショナル”な要素を取り入れていきます」、それから「もっと内なるものを表現していく」と、後のインタビューで語った。まさにそうなんだと思う。ギューナックさんがVWに入ったのは1年前だというから、「ゴルフV」のデザインを直接手がけてはいないけど、今後のVW車に、とてつもなく大きな変化が訪れるかもしれない。
あとね、聞いて驚いたのがギューナックさんの経歴。メルセデスベンツとプジョーで働いてきた人で、しかも、手がけた作品が凄い。ベンツ時代は「マイバッハ」と「マクラーレンSLR」、プジョー時代は「206」「307」「607」なんだって! まさに現代を代表するヒーローデザイナー。サッカー界でたとえるなら、ジダンやロナウド、フィーゴに匹敵する“タレント”なのだ。ま、自ら線を引いたんだか、管理したのかは、わかんないけどね。
カーデザイナーもファッションやスポーツ界と同じで、全世界的に才能が動く時代になったんだと思う。もちろん、そのなかでも、ブランドアイデンティは守られるはずなんだけどさ。VWのような“巨人”のデザイナー交代劇を見て、クルマのトレンドは、今までのように「職人」ではなく、ますます「ファッション」に左右されるのではないか? そう思わされました。
(文=小沢コージ/2004年3月)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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