ホンダ・インスパイア アバンツァーレ(5AT)【ブリーフテスト】
ホンダ・インスパイア アバンツァーレ(5AT) 2004.03.16 試乗記 ……382.0万円 総合評価……★★★ 走行状況に合わせてV型6気筒の片バンクを停止し、省燃費を実現したホンダのサルーン「インスパイア」。ドライバー補助システム「HiDS」、プリクラッシュセーフティなど、数々のハイテクを搭載するトップグレード「アバンツァーレ」を、自動車ジャーナリストの生方聡がテストした。
|
もうすこし特徴を
「インスパイア アバンツァーレ」を特徴づけるのは、数々のハイテク装備だ。ミリ波レーダーを使って前走車の状態を把握しながら、自動的にスピードや車間距離をコントロールするクルーズコントロールや、車線をはみださないよう操舵を補助する機能「HiDS」(Hondaインテリジェント・ドライバーサポートシステム)が、イージーで安全なドライブをサポートする。さらに、V型6気筒エンジンながら、状況に応じて片バンクを停止し、3気筒エンジンに変身して燃料消費を抑える「可変シリンダーシステム」も、非常に興味深いところである。
一方、それ以外にセダンとして強く訴えかける部分が見えにくいのも事実。スポーティなエンジンとコンフォートなキャビンを備え、これといって欠点が見あたらないだけに、クルマ好きの心に訴えかける部分で、もうすこし特徴がほしい。特にセダン離れが進む日本市場では、なおさらである。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
初代は、1989年に「アコード」の派生車種「アコードインスパイア」として登場。現行モデルは、2003年にフルモデルチェンジした4代目である。先代は北米で生産されていたが、今回から国内で生産される。
インスパイアの特徴は、巡航時などにV6エンジンの片バンクを休止する「可変シリンダーシステム」や、ミリ波レーダーを使ったクルーズコントロールに代表される、ドライバー補助システム「HiDS」(Hondaインテリジェント・ドライバーサポートシステム)などのハイテク装備。これに加え、HiDSとは別系統で作動する、追突被害軽減機能の「CMS(追突軽減ブレーキ)」と「E-プリテンショナー」が、グレードによって装備される。
(グレード概要)
インスパイアのグレードは、装備の異なる3種類を設定。すべて、3リッターV6を積むFF、5AT仕様で、下から「30TE」(270.0万円)「30TL(295.0万円)「アバンツァーレ」(350.0万円)となる。
アバンツァーレは、インスパイアご自慢のハイテク装備を満載するトップグレード。高速走行時の車線維持を補助する「LKAS(レーンキープアシストシステム)」、フロントグリル内から発するミリ派レーダーによって、前走車との距離などから車速/車間を制御する「IHCC(インテリジェントハイウェイクルーズコントロール)」などを含む、HiDSを標準装備。前述の「CMS(追突軽減ブレーキ)」と「E-プリテンショナー」も備わる。
その他の快適装備も充実し、運転席8Way、助手席4Wayパワーシートやデュアルゾーンエアコン、8スピーカーのプレミアムサウンドシステムなどが付く。ABSとトラクションコントロール、横滑り防止システムを合わせた「VSA」や、全6個のエアバッグといった、安全装備もフル搭載だ。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
ドライバーを取り囲むようにウッド調パネルを配置したコクピットが、上品でモダンな印象を与えるインスパイア。テスト車は、ウッド調パネルより上の部分をグレー、下の部分をベージュとしたことで、明るく暖かみのある雰囲気をつくりあげている。メーターパネルには自光式のアナログメーターが並び、細かく刻まれた青い目盛りと鮮やかな赤の指針とのコントラストが美しい。
試乗したアバンツァーレは「HiDS」と、カード型のインテリジェントキーを備えた「Hondaスマートカードキーシステム」を標準で搭載する、まさに装備充実のモデルである。
(前席)……★★★★
トップグレードらしく、運転席は電動ランバーサポート付きのパワーシートが用意される。ステアリングホイールもチルトに加えてテレスコピックを備えるから、電動シートとあわせて、きめ細かいポジション調整が可能である。シートの座り心地は、表面はソフトなのに、座るとちゃんとコシがあって、乗員をしっかり支えてくれる印象だ。十分な長さを確保したシートバックも安心感を与えてくれる。
(後席)……★★★★
全長4805mm、ホイールベース2740mmの体躯をもつインスパイアだから、リアシートの余裕は十分。身長168cmの私が運転席でポジションを決め、リアシートにまわると、膝の前にこぶし3個分のスペースが確保されるほどだ。頭上の余裕も文句ない。座り心地は前席同様、ソフトなのにしっかり支えられている印象。しかし、やや硬めの乗り心地が災いして、荒れた路面では道路の凸凹が伝わってくる。
(荷室)……★★★★
前輪駆動のサルーンらしく、トランクスペースは十二分に確保される。ノーマル状態でも奥行きが1m強あり、幅は85〜140cm、高さは50cm程度と見るからに広い。さらに必要なら、トランクスルー機構を利用したり、リアシートを倒すことも可能。トランクリッドを支える部分がダブルリンク式でないのが、唯一残念なところだ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
インスパイアのトピックのひとつが、「可変シリンダーシステム」だ。エンジン負荷が低いときに、6気筒のうちの3気筒(のバルブ駆動)を休止させて、燃費を向上させる。実際に運転してみると、3気筒運転を示す「ECO」インジケーターが頻繁に点灯していたにもかかわらず、予備知識がなければ気づかないほど違和感はない。
もちろん、3リッターの大排気量だからトルクに物足りなさはなく、低回転から余裕がある。ただ、アクセルに対するエンジンのレスポンスがやや過敏で、電制スロットルの特性をもうすこしマイルドにしたほうがいいと思った。一方、高回転域では力強さもサウンドもスポーティの一言で、気持ちのいい加速を味わうことができる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
試乗車は、205/60R16サイズのミシュラン・パイロット・プライマシーを装着しており、路面へのアタリがやや硬い印象で、一般道では路面の不整を拾う。一方、サスペンションがストロークするような入力に対しては、しなやかな身のこなしを示し、むしろソフトに感じるほど。高速道路ではボディの小さな動きが絶えず、もうすこしフラット感がほしいところだ。
インスパイアに採用される電動パワーステアリングは、低速で軽すぎるように思えたが、高速道路を走るスピードでは舵のすわりがよく、シャープ過ぎないのがいい。ハンドリングはとくに鋭敏ではないが、ロールがよく抑えられているおかげで、安心してワインディングロードを飛ばすことができた。
(写真=清水健太)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2004年2月2日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年6月登録
テスト車の走行距離:1万8810km
タイヤ:(前)205/60R16 92V(後)同じ(いずれもミシュラン Pilot Primacy)
オプション装備:音声認識Honda・DVDナビゲーションシステム(インターナビ・プレミアムクラブ対応)(29.0万円)/木目調パネル(3.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(4):山岳路(3)
テスト距離:250.6km
使用燃料:33.2リッター
参考燃費:7.5km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
NEW
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。 -
NEW
第939回:さりげなさすぎる「フィアット124」は偉大だった
2025.12.4マッキナ あらモーダ!1966年から2012年までの長きにわたって生産された「フィアット124」。地味で四角いこのクルマは、いかにして世界中で親しまれる存在となったのか? イタリア在住の大矢アキオが、隠れた名車に宿る“エンジニアの良心”を語る。























