メルセデスベンツC240 4マティック ステーションワゴン(5AT)【ブリーフテスト】
メルセデスベンツC240 4マティック ステーションワゴン(5AT) 2004.03.13 試乗記 ……585.0万円 総合評価……★★★★ アウディやBMWのスタイリッシュなワゴンと対抗すべく、“荷車”色の強いEワゴンと比較して、相対的に小洒落たスタイルをまとうメルセデスのCワゴン。4WDを得て、万能度が増したC240 4マティックに、『webCG』エグゼクティブディレクターの大川 悠が乗った。迷っているクルマだから真剣になる
自分が実際に買おうかと悩んでいるクルマの試乗は、やはり熱が入る。今回はいつもにも増して、かなり真剣になって観察していた。クルマはメルセデスCクラスのワゴンである。正式にはC240ワゴンの4マティックだ。
実はリポーターが個人的に購入を考えているのは、同じCのワゴンでも普通の240か200である。さらに言えば、セダンでもいいかとさえ思っている。
たしかにワゴンの4マティックは、オールラウンダーとしてとても魅力的だが、かなり高価だし、日本仕様は左ハンドルしか用意されていない。左ハンドル嫌い(日本で乗るのにこんなにばかげたことはない)は、それだけで避けたくなる。
それはともかく、久しぶりにじっくりとCのワゴンに乗り、そのよさも悪さも冷静に判断できた。やはりメルセデス、なかでもCワゴンというのは、適度なサイズで真面目に実用性に配慮したクルマという当たり前の事実を確認した。特にワゴンとしての荷室の使い方がとても考え抜かれていることに感心した。リポーター自身は、約3年近く先代型Eのワゴンと過ごしたことがあるが、このクルマで気になっていたワゴンとしての使い勝手の問題は、現在のCでは見事に解決されているのを知った。
同時にメルセデス、特に今のCクラスというクルマの真実もまた確認した。はっきり言うなら、感心はしても心に強く訴えてくれるような魅力はない。これはメルセデスを語るときの常套句だけど、やはり今回もそう感じた。これなら、もう10年落ちになるけれど、ほとんど距離は走っていない今の旧型C200でいいかとさえ考え直してしまう。
だが、余計な神経も手間も暇も使うことなく、1台のクルマと長く過ごしたいと願ったとき、やはり質実に徹したメルセデスは捨てがたいのも事実である。
ただ一つだけ気になったのは、とてもよくできた実用車だが、最近のメルセデスの一面で、どうも世間のつまらぬ競争に巻き込まれ、市場にこびを売っているような感じもするということだ。道具としての徹底度や機能の純粋な追求においては、ひょっとしたら先代のCの方が頑張っていたのではないか、今のCに今後また10年乗り続けられるだろうかと、多少複雑な思いとともに試乗を終えた。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1982年に当時のミディアム(現Eクラス)よりもっと下の市場を狙ってデビューした190がCクラスの母体。最初は「小ベンツ」などと揶揄されたが、良質な中型車として世界的にヒットした。その後、93年にフルチェンジしてCクラスの名称が与えられ、2000年春には全面変更を受けて現行ボディとなる。このボディのワゴンは2001年春に登場。
とかくメルセデスは新型がでるたびに先代モデルのユーザーからの批判が強いもので、Cとなった直後は、マーケティング優先のためにメルセデス固有の品質が落ちたなどといわれたものだ。それでも年々細部が詰められたし、ヨーロッパのみならず日本でも大きな市場を開拓している。現行モデルでも初期にはいくつかの批判も聞かれたが、これまたメルセデスの常でほとんど毎年、目に見えないところで変更、改善を受けている。
ラインナップはセダンとステーションワゴン。1.8リッター4気筒DOHCスーパーチャージャー付き143psの180コンプレッサーをベースに、同じエンジンを163psにした200コンプレッサー、2.6リッターV6SOHCの240、これの4WDたる4マティック、3.2リッターの320まで各モデルがある。
機構的には現代の中型乗用車としてはきわめて古典的。古くさいというのではなくて、コンベンショナルなレイアウトを最新技術できちんと積み上げるというメルセデス流のコンセプトを踏襲している。
(グレード概要)
最近のメルセデスの傾向で、必ずしもグレード名と排気量が一致しないが、240の4マティックもそのV6は2.6リッター。170psと24.5kgmを出して、ティップ付き5ATに加え、このモデルだけは4WDシステムと組み合わされる。サスペンションは前ストラット、後ろマルチリンクで、先進のエレクトロニック・スタビリティ・プログラムは4輪コントロール式。装備は240系から豪華になるが、機構的には4気筒とそれほど変わらない。日本仕様はこのモデルに限って左ハンドルしかないが、4WDゆえに機構を変えるのが面倒なのと、たぶん絶対台数が少ないためだろう。価格は585.0万円だが、サンルーフや本革内装のオプションを付けると625.0万円となる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
メルセデス・ユーザーの多くは新しいメルセデスを語るときに、その前のモデルと比較し、多少の抵抗というか偏見とともに語りたがるものだ。実はリポーターも旧型に乗っているので、これは否定できない。とくに個人的に馴染めないのは最近のダッシュボードレイアウトやデザイン。従来の方が理路整然としてきちんとした文法に従っていたと思う。最近のメルセデスは特にスイッチ、コントロール類などが変化している。端的にいうと空調やエアコン、ドアミラーなどのコントロールやスイッチ類が煩雑になったのはまだしも、全体的に小さくなり、操作ロジックも変化した。でもそれもきっと慣れの問題で、オーナーになれば関係ないのだろう。仕上げ水準は前のモデルよりはよくなった。
(前席)……★★★
シートそのもののデキは相変わらずいい。だが、問題もある。身体が小さい人(このクルマのユーザーに多い女性など)にはシートクッションがやや長すぎる。これは先代のEでもそうだった。上級メルセデスのようにクッション部分が前後移動できればいいが、そうではないと人によっては無意識のうちに腰が浮きがちになる。もう一つ残念なのは低められたエンジンフードのために前の両端がドライバーから視認できなくなったこと。四隅が掴みやすいことと回転半径が小さいという、メルセデスの最大の利点の片方を失ったのは残念だ。そういえばカッコいいとは言えないポールを立てているCクラスを最近随分見かけるが、それも理解できる。日本でのユーザーのことを考えると★は3つになる。
(後席)……★★
セダンなら★は最低でも3つになったろうが、ワゴンはやはり2つである。理由はバックレストが平板で堅いから、長距離にお年寄りを乗せるのは気が引けるということ。折り畳み式ワゴンゆえの難点だが、同じワゴンでももっと快適なシートを実現しているクルマはある。シートクッションもやや短い。
(荷室)……★★★★
70年代のミディアム以来メルセデスはワゴンづくりには慣れている。以前はTの名前だったが、今はステーションワゴンの名前で、C、Eでは主力モデルになっている。Cとしては2代目になるこのクルマでも、これまでの経験をもとに各部が相当きめ細かく設計されている。
やや下がったルーフラインによって、旧型よりは荷室の上のスペースは多少犠牲にされたが、通常の用途には充分なスペースが確保されているし、細かな使い勝手は向上した。まず床がリアバンパーレベルまでフラットになっている。たしか旧型は床面が数cm下がっており、重いものの出し入れにはちょっと不便だった。しかもそれを見越してオプションで床をちょっと上げてフラットにするパネルが用意されていたはずだ。
トノーカバーはしっかりしたものが、巧妙に作られたスライドレールに沿ってワンタッチで格納される。また荷室壁左右のフラップ(片方は工具や救急セット入れ。もう一方は空洞だが、レールランプの交換に便利)もスイッチ一つで開閉する。
もちろんリアシートのクッションを前に倒し、バックレストを畳めば広くフラットな空間ができるが、このときいちいちリアヘッドレストもワンタッチで畳むから、これを外す必要も、外したヘッドレストをその辺にころがしておく不便さもないのがいい。さらにメルセデスのよき伝統で、このときにトノーカバーケースも一緒に畳める。実はクルマによってはこのケースだけ残ってしまい、いちいち外さなければならないことがあるが、これが意外と重いのである。ともかくよく考えられた荷室であり、すべての操作は慣れるとそれほど力を要さないのがいい。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
このV6は周知のとおり年々よくなっている。最初はややトルクが細い印象もあったが、現在ではとてもバランスがとれたユニットになった。メルセデスの常でビンビンまわるエンジンではないが、できのいい5ATにも助けられて実用的にはとてもいい。よく観察すると3000から3500回転の間で一瞬トルクが落ち込むことがあるが、普通に使っている分には気にならないだろう。また2WDに比べると、上り坂でやや重い感じもする。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
エンジンがバランス第一ならハンドリングも徹底した安定志向である。特に4マティックの場合、何の神経も遣わずに直進し、きちんと回る。4WDシステムは前40/後ろ60の配分だが、感覚はとてもナチュラルだ。最初はメルセデス特有のステアリングの重さに気になる。特に最近のクルマとしては低速でかなり重いが、それなりに理由があって、高速では重さと、直進付近での多少のダルさ(遊びではない)があいまって、心理的にも大きな安定感を与える。
コンチネンタルのスポーツコンタクト2は多少のロードノイズを伴うが、細かな路面変化には意外と強い。比較的車重が重いこともあって乗り心地はかなりゆったりしているし、全体的にフラットだ。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:大川悠
テスト日:2004年1月28日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:--km
タイヤ:(前)205/55R16 91H (後)同じ(いずれも、Continental Sport Contact2)
オプション装備: --
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1):高速道路(6):山岳路(3)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
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