第100回:和ダンスと洋ダンスの違い?VW製“ブランドミニバン”ゴルフ トゥーラン
2004.03.05 小沢コージの勢いまかせ!第100回:和ダンスと洋ダンスの違い?VW製“ブランドミニバン”ゴルフ トゥーラン
![]() |
![]() |
![]() |
■いまさら……と思ったら
フォルクスワーゲンのコンパクトミニバン「ゴルフトゥーラン」(以下トゥーラン)に乗ってきました。VWのミニバンは、「シャラン」ってのがあったけど、全長4635mm、幅1810mmだから、オデッセイ(同4765×1800mm)クラス。日本に導入されていない「マルチバン」(同4890×1905mm)になると、それよりもデカい。つまり、あんまり大量に売れないクラス。しかし、トゥーランは「ゴルフV」ベースのニューモデル。日本車でいえば「ホンダ・ストリーム」(シビックベース)や「トヨタ・ウィッシュ」(プレミオ/アリオン)と肩を並べる、売れ線モデルなのだ。
でもね、正直俺は「ダメかもなぁ〜」って思ってたのよ。VWに限らずドイツ車の場合、ミニバンに力を入れ始めたのが遅いじゃない。昔から「デリバリーバン」みたいなのはあったけど、アレはハッキリいって商用&マニア用だし。
一方、日本は、1994年10月に初代「ホンダ・オデッセイ」が登場。ミニバンがブレイクして以来、トヨタ、日産、三菱、マツダがミニバン開発にしのぎを削り、先日はある意味「めちゃくちゃ先イっちゃってる」3代目オデッセイが出た。次期型「ステップワゴン」は4列シート(!?)を採用するウワサもある。「VWがいまさら……」って思ってたのよ。
そしたらね、結構いいんだわコレが。
■ヨコとタテのパッケージング
見た目は、正直いって冴えません。ゴルフを丸くちょっとデカくしたようにも見えるし、ポロがそのままデカくなったようでもある。インパクト薄し。
でもね、乗るとVWらしい高品質感でイッパイだった。インパネは質の高そうな樹脂使ってるし、タテツケもビシっとしてる。
なにより、パッケージングがいい。国産ミニバンと明らかにコンセプトが違うのが、このパッケージングだと思う。日本車が荷物を「ヨコに広げて収納」するのに対し、トゥーランの場合「タテに並べて収納」するっていうの? 和ダンスと洋ダンスぐらいノリが違うのだ。
人間も同様、たとえば2列目シートは、明らかに1列目より座面が一段高くて足元が深いので、体を起こしぎみに座る。1列目も体を起こすタイプなんだけど、それだけじゃない。オオゲサにいうと、インパネまでがそそり立つように高いのだ。
それだけ聞くと「窮屈?」って思うかもしれないけど、ちょっと違って、独特の安心感がある。シートのできがよく、背中からオシリ、太ももまで、硬めのスポンジでビシッと包み込み、なんちゅーか、背筋が伸びるような座り心地なのだ。残念ながら3列目は、全長4390mmと短いこともあって狭いけど、シートは同様にキモチよいものだった。
■非常にナチュラル
それからね、走りなんだけど、空間のつくり方からもわかるように、明らかに重心が高いワケ。なのに、それをヘンに隠さないのだ。
日本車の場合、ミニバンなのに走りはスポーツカー並みだったり、ポジションが意外なほどスポーティだったりするんだけど、そういう小技はほとんどない。
これを「努力不足」と見るか「正々堂々としてる」と捉えるかは人それぞれ。だけど、俺はこの「荷物グルマなんだから大きくていいじゃないか!」って考え方は、なかなかキモチいいと思ったな。ムリがなくて。
それに、荷物グルマとはいっても、トゥーランは新型ゴルフVの最新プラットフォームが使われる。だから、重心が高いのにコーナリング時のロールは自然で、ステアリングフィールも乗り心地も、加速感もとってもイイ。非常にナチュラルなクルマなのだ。
繰り返すけど「インパクト」はあまりありません。だけど質の高さ、ほかとは違うインテリジェンスが感じられる、VWブランドらしいミニバンだと思う。家族持ちのVWファン、ドイツ車ファンの方。一度乗ってみることをオススメしますよ。
(文と写真=小沢コージ/2004年3月)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
第454回:ヤマダ電機にIKEAも顔負けのクルマ屋? ノルかソルかの新商法「ガリバーWOW!TOWN」 2012.8.27 中古車買い取りのガリバーが新ビジネス「WOW!TOWN」を開始。これは“クルマ選びのテーマパーク”だ!
-
第453回:今後のメルセデスはますますデザインに走る!? 「CLSシューティングブレーク」発表会&新型「Aクラス」欧州試乗! 2012.7.27 小沢コージが、最新のメルセデス・ベンツである「CLSシューティングブレーク」と新型「Aクラス」をチェック! その見どころは?
-
第452回:これじゃメルセデスには追いつけないぜ! “無意識インプレッション”のススメ 2012.6.22 自動車開発のカギを握る、テストドライブ。それが限られた道路環境で行われている日本の現状に、小沢コージが物申す!?
-
第451回:日本も学べる(?)中国自動車事情 新婚さん、“すてきなカーライフに”いらっしゃ〜い!? 2012.6.11 自動車熱が高まる中国には「新婚夫婦を対象にした自動車メディア」があるのだとか……? 現地で話を聞いてきた、小沢コージのリポート。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。