ボルボS40 2.4i(5AT)/S40 T5(5AT)【海外試乗記】
名門の子息 2004.02.24 試乗記 ボルボS40 2.4i(5AT)/S40 T5(5AT) ……330.0万円/410.0万円(国内販売価格) ハデさはないが、安全性や居住性、快適性を追求し続けてきたボルボ。新型「S40」に試乗した自動車ジャーナリストの笹目二朗が、ニューモデルの印象を語る。正義の味方
ボルボの新型「S40」は、ノーズの斜線を見ればすぐボルボだとわかる。一見すると、ボルボネスを踏襲したオーソドックスなデザインだ。しかし、よ〜く観察すれば、非凡で新しいデザイン世代への試みがひしひしと伝わってくる。
丸い鼻先がなかなか“イマ風”なノーズ部は思いきり短く、さらにAピラーを後退させたフロントまわりはダイナミック。ピラーを寝かせすぎないため圧迫感はなく、フロントスクリーン下端に生じるガラスの歪みも気にならない。スカットルを低くして、室内からボンネットを見わたせるのもイイ。
乗員の居住区たるキャビンを大きくとり、クーペ風にルーフを流しながらも、テールにノッチをつけて3BOXを形づくる。まさに温故知新、正統派セダンの高級感をかもしながら、実質を重んじ、さらに可愛らしさも同居するデザインだ。新世代の先鋒として、“正義の味方”ボルボの面目躍如、といった感じがする。
拡大
|
拡大
|
一昔前ならハイスペック
走らせても、外観から受ける好印象は変わらない。2640mmの長いホイールベースと、短い前後オーバーハングにより、ピッチ方向の無駄な動きもなく姿勢はフラット。拡大されたトレッドにより、コーナーではよく踏ん張ってロールに対抗する。バネ/スタビライザーを硬めるより、トレッドを拡大するほうがロール剛性の確保には効果的で、ボルボはその手法をわきまえている。無用にアシを硬めないため、良好な乗り心地と素直な操縦安定性を両立させることができるのだ。
丸く隅切りされたノーズは実質的な回転半径を小さくし、狭い場所での取りまわしもいい。「S60」以上に広々と感じる明るい室内ながら、動きが活発で敏捷なせいか、動体寸法が実際以上に小さく感じられた。
個性的な直列5気筒エンジンのトルク特性も、ボディを小さく感じさせることに貢献している。上級グレード「T5」のターボパワーは、息の長い加速が大排気量車の速度感を演出。NA(自然吸気)エンジンを積む「2.4i」は、文字通り自然な感覚で、アクセルペダルを踏み込めばクルマが即応する。いずれも、一昔前ならハイスペックな高性能車で通る動力性能だ。アイシン製5段ATは適切なステップアップ比をもち、シフトショックはすくなく、効率よく加速させる。
ボルボらしいボルボ
思いつきや個人の閃き、果ては、ひとマネでつくられた(!?)のとは違い、長い経験や歴史に支えられて進化してきたものには、ひとつひとつに必然性が感じられ、納得させられる部分が多い。モデルチェンジですべてが変わったように見えても、積み重ねられたノウハウは受け継がれており、それらはやがて伝統の域に達する。そんなボルボらしいこだわりが散見された、あたらしいS40の印象を一言でいえば、“名門の子息らしい素直で伸びやかな素性”といえる。
育ちのよい優等生となると、へそ曲がりは重箱の隅をつつきたくなるもの。欠点らしきところは見当たらないのだが、強いて挙げるなら、衝突時に足を守るべく、限度を超えた力がかかると落下するように作られたペダル類の剛性感だ。特にブレーキペダルは、フルブレーキしたときのフィールが、少々ヤワに感じられた。
もとより、ボルボといえば安全性の大家。急がずとも速く、凡に見えて非凡。情熱的ではないが、飽きのこない長寿命の持ち主だ。いずれも大きなセールスポイントなのに、強調しない奥ゆかしさもある。10年、20年後の存在が容易に想像できるクルマであることも、また、ボルボらしいボルボである。
(文=笹目二朗/写真=ボルボカーズジャパン/2004年2月)

笹目 二朗
-
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.9.2 BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.9.1 2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
NEW
ホンダがコンセプトモデル「アキュラ・ネクセラ ビジョン」を発表 次世代デザインを読み解く
2026.9.3デイリーコラム本田技研工業の米国現地法人アメリカン・ホンダモーターが、アキュラブランドの次世代デザインを示すというコンセプトモデル「ネクセラ ビジョン」を初公開した。バタフライドアを採用するこのスポーツカーは、次世代アキュラの何を表現しているのか。 -
NEW
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(後編)
2026.9.3あの多田哲哉の自動車放談ワインディングロードで新型「BMW iX3」のステアリングを握った多田哲哉さんは、その走りに感心した様子。どんなところが優れているのか、トヨタのエンジニアの視点で語ってもらおう。 -
新型「三菱パジェロ」の外装・内装を写真でチェックする
2026.9.2画像・写真5年間のブランクを経て、三菱のフラッグシップSUV「パジェロ」がついに復活! 「グランドカリスマ -泰然自若-」をコンセプトにデザインされた本格クロスカントリーモデルは、どのような姿をしているのか? 内外装の詳細を、写真で紹介する。 -
復活の決め手はこっくりさん!? 新生「三菱パジェロ」誕生の経緯とその狙い
2026.9.2デイリーコラム5年間の沈黙を経て、ついに登場した新型「三菱パジェロ」。スリーダイヤモンドが誇る荒野のフラッグシップは、いかにして復活を遂げたのか? 開発の経緯や内外装デザインの詳細、パワートレインに見るクルマの“狙い”をリポートする。 -
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。








