ボルボS40 2.4/V50 2.4i (5AT/5AT)【短評(後編)】
余裕のベーシック(後編) 2004.09.03 試乗記 ボルボS40 2.4/V50 2.4i (5AT/5AT) ……372万7500円/451万5000円 2種類のチューンを持つノンターボボルボ。140psのサルーンと、170psのエステートに乗った『webCG』コンテンツエディターのアオキは……。ワゴンのアドバンテージ
“スウェディッシュ・ダイナミック・サルーン”をキャッチフレーズとする「ボルボS40」で、秋田県は男鹿半島を行くのは楽しいことだった。その楽しみは、クルマを運転することに特化するのではなく、木々や芝生の緑の向こうに日本海の波頭を見、フロントスクリーンのあなたの空の青さに喜ぶといった、余裕ある楽しみである。
テスト車「S40 2.4」に積まれる2.4リッター直5エンジンは140psのおとなしいチューンだが、フルスケールエンジンを回すような激しい走りをしないかぎり、動力性能はまったく十分。「ダブルCVVT」こと連続可変バルブタイミング機構を備えたフラットトルクな5気筒は、5段ATとのマッチングもいい。アイシン製オートマチックは、ギアトロニックと呼ばれるシーケンシャルシフト用ゲートを備えるが、「D」に入れたままで、まず不満はない。
ランチポイントで、「V50 2.4i」に乗り換えた。こちらのパワーソースは、同じ2.4リッターの排気量ながら、ピークパワー、最大トルクの発生回転数を上げ、170ps/6000rpm、23.5kgm/4400rpmのアウトプットを得る。
V50は、S40のリアセクションを45mm延ばしたワゴンである。“ニュー・スポーツ・エステート”を謳うが、先代「V40」より全体に丸みを帯び、むしろふくよかな感じだ。車名が40から50に格上げされただけのことはある。値段も底上げされた。
V50のベーシックモデル2.4は、372万7500円。2.4iは、42万円高の417万7500円となる。それでも、同じ価格帯のライバル、「アウディA4アバント」「BMW 3シリーズツーリング」「メルセデスベンツCクラスワゴン」より、1気筒多いエンジンを積むうえ、価格がリーズナブルというのがセールスポイントとなる。一番の競合相手、A4アバントに対しては、「ワゴンとしての使い勝手のよさがアドバンテージだ」と、ボルボのスタッフは主張する。
運転手を駆りたてない
V50の荷室は、417リッター(VDA)。座面も前に倒せるダブルフォールディング式を採るリアシートは6:4の分割可倒式で、最大1307リッターまでラゲッジスペースを拡大できる。助手席バックレストを倒せば3m超の長尺モノも搭載可……といったスペックもさることながら、シンプルな荷室形状、バンパーレベルまで開口部がとられたリアゲート、買い物袋といったちょっとした荷物を固定するのに便利な「グローサリーバッグ・ホルダー」など、たしかに日常の使い勝手はよさそうだ。V50のVは、Versatility(多用途性)のVである。
走り出せば、これはS40とキャラクターは変わらない。十分な情報を与えつつ、ことさらに運転手を駆りたてない素直なドライブフィール。おだやかなハンドリング。高速巡航では、フラットな乗り心地。2.4iの170psが実際に本領を発揮するのは5000rpmから上で、高速道路での追い越しは楽になるけれど、通常は“頼もしい潜在能力”としてボンネットの下にしまわれたままだ。
テスト車はオプションの「205/50R17」サイズのピレリP7を履いていた。このクルマの場合、ノーマルの「205/55R16」の方が合っているのではないか、と思う。ゴーマルタイヤだと、ハーシュのエッヂが丸まりきらない印象がある。路面によっては、細かい突き上げが気になることがある。
だから、V50 2.4iの場合、本革シートを選ぼうとすると、セットオプションで17インチになってしまうのは、すこし考えものだ。2.4iに用意されるセットオプション「ベーシックパッケージ」(36万7500円)には、17インチホイールほか、本革シート、助手席パワーシート、サンルーフ、キセノンヘッドランプが含まれる。
拡大
|
拡大
|
ベストバイ
新型エステートV50は、都市部でも使いやすいボディサイズで、一目でボルボとわかり、そのうえジャーマン・プレミアムメーカーのモデル群より一段廉価だから、きっと人気が出るだろう。
ちなみに、S40 2.4の標準はスチールホイールだが、V50のボトムレンジ2.4はもとから16インチのアルミが付く。レザーシートにするための「レザーパッケージ」を選んでも、デザインは変わるが足もとは16インチのままだから、V50を購入するなら、個人的には2.4をお薦めする。
一方のS40は、別の意味でボルボ・カーズ・ジャパンから期待されるモデルだ。わが国では、「ボルボといえばワゴン」のイメージが強いけれど、裏を返せば、サルーンの販売を伸ばす余地が大きいということ。S40には、その期待に応える魅力がある。
S40、V50とも、“ダイナミック”“スポーティ”が強調されるボルボの新世代コンパクトだけれど、乗ると、依然として温厚な北欧のクルマである。特に140psの2.4は、ベーシックにして気持ちに余裕をもたせる。両シリーズのベストバイだと思う。
(文=webCGアオキ/写真=高橋信宏/2004年9月)
ボルボS40 2.4/V50 2.4i (5AT/5AT)【短評(前編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000015651.html

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
メルセデス・ベンツGLA200d 4MATICアーバンスターズ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.12.22 メルセデス・ベンツのコンパクトSUV「GLA」に、充実装備の「アーバンスターズ」が登場。現行GLAとしは、恐らくこれが最終型。まさに集大成となるのだろうが、その仕上がりはどれほどのものか? ディーゼル四駆の「GLA200d 4MATIC」で確かめた。
-
フォルクスワーゲンTロックTDI 4MOTION Rライン ブラックスタイル(4WD/7AT)【試乗記】 2025.12.20 冬の九州・宮崎で、アップデートされた最新世代のディーゼルターボエンジン「2.0 TDI」を積む「フォルクスワーゲンTロック」に試乗。混雑する市街地やアップダウンの激しい海沿いのワインディングロード、そして高速道路まで、南国の地を巡った走りの印象と燃費を報告する。
-
フェラーリ・アマルフィ(FR/8AT)【海外試乗記】 2025.12.19 フェラーリが「グランドツアラーを進化させたスポーツカー」とアピールする、新型FRモデル「アマルフィ」。見た目は先代にあたる「ローマ」とよく似ているが、肝心の中身はどうか? ポルトガルでの初乗りの印象を報告する。
-
ホンダN-ONE e:G(FWD)【試乗記】 2025.12.17 「ホンダN-ONE e:」の一充電走行距離(WLTCモード)は295kmとされている。額面どおりに走れないのは当然ながら、電気自動車にとっては過酷な時期である真冬のロングドライブではどれくらいが目安になるのだろうか。「e:G」グレードの仕上がりとともにリポートする。
-
スバル・クロストレック ツーリング ウィルダネスエディション(4WD/CVT)【試乗記】 2025.12.16 これは、“本気仕様”の日本導入を前にした、観測気球なのか? スバルが数量限定・期間限定で販売した「クロストレック ウィルダネスエディション」に試乗。その強烈なアピアランスと、存外にスマートな走りをリポートする。
-
NEW
病院で出会った天使に感謝 今尾直樹の私的10大ニュース2025
2025.12.24デイリーコラム旧車にも新車にも感動した2025年。思いもかけぬことから電気自動車の未来に不安を覚えた2025年。病院で出会った天使に「人生捨てたもんじゃない」と思った2025年。そしてあらためてトヨタのすごさを思い知った2025年。今尾直樹が私的10大ニュースを発表! -
NEW
第97回:僕たちはいつからマツダのコンセプトカーに冷めてしまったのか
2025.12.24カーデザイン曼荼羅2台のコンセプトモデルを通し、いよいよ未来の「魂動デザイン」を見せてくれたマツダ。しかしイマイチ、私たちは以前のようには興奮できないのである。あまりに美しいマツダのショーカーに、私たちが冷めてしまった理由とは? カーデザインの識者と考えた。 -
ホンダ・ヴェゼルe:HEV RS(FF)【試乗記】
2025.12.23試乗記ホンダのコンパクトSUV「ヴェゼル」に新グレードの「RS」が登場。スポーティーなモデルにのみ与えられてきたホンダ伝統のネーミングだが、果たしてその仕上がりはどうか。FWDモデルの仕上がりをリポートする。 -
同じプラットフォームでも、車種ごとに乗り味が違うのはなぜか?
2025.12.23あの多田哲哉のクルマQ&A同じプラットフォームを使って開発したクルマ同士でも、車種ごとに乗り味や運転感覚が異なるのはなぜか? その違いを決定づける要素について、トヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
クルマ泥棒を撲滅できるか!? トヨタとKINTOの新セキュリティーシステムにかかる期待と課題
2025.12.22デイリーコラム横行する車両盗難を根絶すべく、新たなセキュリティーシステムを提案するトヨタとKINTO。満を持して発売されたそれらのアイテムは、われわれの愛車を確実に守ってくれるのか? 注目すべき機能と課題についてリポートする。 -
メルセデス・ベンツGLA200d 4MATICアーバンスターズ(4WD/8AT)【試乗記】
2025.12.22試乗記メルセデス・ベンツのコンパクトSUV「GLA」に、充実装備の「アーバンスターズ」が登場。現行GLAとしは、恐らくこれが最終型。まさに集大成となるのだろうが、その仕上がりはどれほどのものか? ディーゼル四駆の「GLA200d 4MATIC」で確かめた。





































