メルセデスベンツML350(5AT)【ブリーフテスト】
メルセデスベンツML350(5AT) 2004.02.04 試乗記 ……550.0万円 総合評価……★★★ 北米で人気の“クロスオーバー”市場をターゲットに企画された、メルセデスのSUV「Mクラス」。BMWの「X5」だけでなく、「ポルシェ・カイエン」、「フォルクスワーゲン・トゥアレグ」の追撃を受ける立場となった。モデル末期となりつつある「ML350」の実力は? 自動車ジャーナリストの渡辺慎太郎が試乗した。
|
サバイバルゲームのために
昔のメルセデスと比べれば、今のメルセデスは全車とも“メルセデスらしくない”と言える。なかでも、既存のラインナップでもっともメルセデスらしくないモデルが「Mクラス」だと思う。
理由はある。Mクラスは、商品企画の段階から、北米市場を意識して造られたクルマだからだ。これまでも、アメリカマーケット向けのメルセデスはあったが、それはW124(先々代のEクラス)に4リッターのV8を積むなど、既存の車種に手を加えたものばかり。ゼロからアメリカ人のために作られたメルセデスは、このMクラスが初めてだろう。しかもアメリカに専用工場を建設するなど、メルセデスの気合の入れようは半端じゃなかった。
そんなにアメリカマーケットは重要なのか? 重要なのである。メルセデスと同じように、アメリカ向けのクルマを開発し工場を建設したBMWや、アメリカで売りまくると正々堂々と発表したポルシェなどの動向からも察することができる。人になんと言われようと、自動車雑誌に悪口を書かれようと、アメリカで大量に売りさばいて利益を出すことが、生き残りゲームに勝つ唯一の方法だと自動車メーカー各社はそう考えているのだ。
★の数からも分かるように、Mクラスがライバルよりも秀でている部分はほとんどなくなってしまった。唯一の★★★★は、Sクラスのパワートレインのおかげ。要するに、Mクラスはもう“古い”クルマなのである。そんなことは当のメルセデスが一番よく分かっていて、次期Mクラスの開発は最終段階入っているという。シャシーは今年のデトロイトでお披露目となったGST(グランドスポーツツアラー)と共通。またしても、Mクラスはアメリカを向いてしまったようだ。
|
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
Mクラスがデビューしたのは1997年。フルモデルチェンジはまだだが、2001年夏に大がかりなマイナーチェンジ(1000カ所以上を改良)を受けた。ドイツ本国では現在、2種類のディーゼル(直列5気筒の270CDIとV8の400CDI)と3種類のガソリン(V6の350、V8の500と55AMG)エンジンを選ぶことができる。ちなみに、現在はアメリカだけでなく、オーストリアのグラーツ工場でも生産される。
(グレード概要)
以前は正規輸入車で唯一、ディーゼルエンジンを搭載したモデルもラインナップされていたが、現在はガソリンのV6を積んだ「ML350」と、V8の「ML55AMG」の2種類のみ。ML350には、AMGスタイルのエアロパーツや18インチホイール、バイキセノンライトなどがセットになった「スポーツパッケージ」がオプション設定される。
【室内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
マイナーチェンジを受ける前のインテリアの質感は、「アメリカで売るからって、何も質感までアメ車にならわなくても」という代物。メルセデスの名を語るにふさわしいとはいえなかった。現行モデルはずいぶんマシになったとはいえ、Cクラスにさえ劣る部分が依然として残っている。標準装備は充分で特に不満はない。
(前席)……★★★
運転席に座ると懐かしい気持ちになる。メーターパネルの意匠や、スタッカードゲートが見えるAT(CやEはブーツで隠れて見えない)、そしてその両脇に配置されたパワーウインドーのボタンなど、一昔前のメルセデスを思い起こさせるからだ。つまり見栄えよりも機能性を重視した演出。これはこれで悪くない。ちょっと硬めのシートも昔のよう。シートポジションは手動調整式。
(後席)……★★★
フロントシートよりもわずかに高い位置に設置されているので、前方の視界は良好。2:1の分割可倒式で、前方に最大80mmまでスライドすることもできる。シートアレンジが多彩なことは、このクラスではもはや標準装備項目。ただ、Mクラスの場合はリアシートがちょっと重い。それだけ「倒す」ことよりも「座る」ことに重点を置いて設計されてシートであるともいえる。
(荷室)……★★★
トノカバーの下だけで、乗車定員分の荷物を収めるスペースを有する。アクセサリー用の12V電源ソケットも完備。広さ、使い勝手ともに申し分ない。しかしこのサイズのクルマで荷室スペースに問題があったとしたら言語道断、というのも事実である。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
「320」から「350」に格上げされたMクラスの3.7リッターV6は、基本的にSクラスに搭載されるユニットと同一である。ただし、最高出力や最大トルクは若干抑えられて235ps、35.2kgm(S350は245ps、35.7kgm)となる。2トン強のボディを動かすには充分なパワーであり、5段ATはシフトショックをほとんど感じさせない。
Mクラスの4WDシステムは、センターデフにプラネタリーギアを用いた「4MATIC」と基本的に同型。LSDがない代わりに4ETS(エレクトロニックトラクションサポート)+ESP(エレクトロニックスタビリティプログラム)が、4輪を個別にブレーキ制御するタイプ。4MATICとの違いは前後のトルク配分で、Mクラスは48:52、4MATICは40:60。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
サスペンションは前後共にダブルウイッシュボーン。市街地や高速道路での乗り心地は、特別に優れているわけではないけれど、イヤな気持ちになるほど悪くもない。高速道路における直進性はそこそこ。つまり日常の走行環境下では可もなく不可もない。だからといって、ワインディングロードで飛ばしたくなるようなハンドリング性能を持ち合わせているともいえない。その一方で、以前、かなり過酷なオフロードコースでMクラスを運転したときは難なく走破した。
(写真=峰昌宏)
|
【テストデータ】
報告者:渡辺慎太郎
テスト日:2004年1月13日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:1万3477km
タイヤ:(前)225/60R17 108H M+S(後)同じ(いずれもDunlop SP Sport5000)
オプション装備:--
形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(2):高速道路(5):山岳路(3)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

渡辺 慎太郎
-
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【試乗記】 2026.3.4 メルセデス・マイバッハから「SL680モノグラムシリーズ」が登場。ただでさえ目立つワイド&ローなボディーに、マイバッハならではのあしらいをたっぷりと加えたオープントップモデルだ。身も心もとろける「マイバッハ」モードの乗り味をリポートする。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
スズキ・キャリイKX(4WD/5MT)【試乗記】 2026.2.27 今日も日本の津々浦々で活躍する軽トラック「スズキ・キャリイ」。私たちにとって、最も身近な“働くクルマ”は、実際にはどれほどの実力を秘めているのか? タフが身上の5段MT+4WD仕様を借り出し、そのパフォーマンスを解き放ってみた。
-
NEW
「ジープ・アベンジャー4xeハイブリッド」発表会の会場から
2026.3.5画像・写真ジープブランドのコンパクトSUV「アベンジャー」に、4WDのハイブリッドバージョン「アベンジャー4xeハイブリッド」が追加された。その発表会(2026年3月5日開催)の場に展示された同モデルの外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
スバル・トレイルシーカーET-HS プロトタイプ(4WD)【試乗記】
2026.3.5試乗記スバルから本格的な電気自動車の第2弾となる「トレイルシーカー」が登場。前後のモーターから繰り出すシステム最高出力はドーンと380PS。ただし、それをひけらかすような設定にはしていないのがスバルらしいところだ。スノードライブの印象をお届けする。 -
NEW
ホンダ・インサイト
2026.3.5画像・写真4代目はまさかの電気自動車(BEV)! ハイブリッドからBEVへ、4ドアセダンからSUVへと変身して、「ホンダ・インサイト」が復活を遂げた。ドアトリム/ダッシュボードヒーターにアロマディフューザーと、新たな快適装備を満載したその姿を、写真で紹介する。 -
NEW
BYDシーライオン7 AWD(4WD)
2026.3.5JAIA輸入車試乗会2026堂々たるスタイルにライバルの上をいくパワーと一充電走行距離、そしてざっくり2割はお得なプライスを武器とする電気自動車「BYDシーライオン7」。日本市場への上陸から1年がたち、少しずつ存在感が増してきた電動クーペSUVの走りやいかに。 -
NEW
ついにハードウエアの更新も実現 進化した「スバルアップグレードサービス」の特徴を探る
2026.3.5デイリーコラムスバルが車両の機能や性能の向上を目的とした「スバルアップグレードサービス」の第3弾を開始する。初めてハードウエアの更新も組み込まれた最新サービスの特徴や内容を、スバル車に乗る玉川ニコがオーナー目線で解説する。 -
NEW
第951回:日本が誇る名車を再解釈 「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」の開発担当者に聞く
2026.3.5マッキナ あらモーダ!2026年の「東京オートサロン」で来場者の目をくぎ付けにした「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」。イタルデザインの手になる「ホンダNSX」の“再解釈”モデルは、いかにして誕生したのか? イタリア在住の大矢アキオが、開発関係者の熱い思いを聞いた。
























