メルセデス・ベンツML350 4MATICブルーエフィシェンシー(4WD/7AT)【試乗記】
“メルセデス嫌い”にもおすすめ 2012.08.30 試乗記 メルセデス・ベンツML350 4MATICブルーエフィシェンシー(4WD/7AT)……898万6000円
メルセデス・ベンツのSUV「Mクラス」が3世代目に進化して日本上陸。その実力を、3.5リッターV6エンジンを積む主力グレードで試した。
全部乗せのゴージャスなM
2012年6月末に新型「メルセデス・ベンツMクラス」が日本に導入された時に、うれしかったことがふたつ。
ひとつは、ギンギラギンだった先代のルックスが、さり気なくやさしくなったこと。「Mクラス」は泣く子も黙る名家のご子息で、体格にも恵まれている。「どないだー!」と威圧するよりも、スマートに振る舞うほうが似合う。
もうひとつは価格の引き下げ。今回試乗した新開発3.5リッターV6ガソリンエンジンを積む「ML350 4MATICブルーエフィシェンシー」は、同じ排気量のエンジンを積む従来型より6万円お求めやすい750万円に設定された。
ところが待ち合わせ場所に現れた試乗車を見てガーン……。ギンギラギンではないけれど、ちょっと悪いオトーサンの胸元を飾る極太チェーンのように、フロントスポイラーがギラリ。価格表を見れば、ほとんど900万円!
65万円のAMGスポーツパッケージ、45万円のコンフォートパッケージなどなど、総額148万6000円のオプションを装着した仕様だったのだ。近所のもんじゃ焼き屋さんのメニューでいえば、ホタテとエビと明太子(めんたいこ)と豚バラが入った“スペシャル”だ。
明太子とモチとチーズのシンプルなもんじゃを期待していたのでややがっくりきたけれど、運転席に座ってなるほどと思う。
前夜の予習で、新型Mクラスは従来型とほぼ同じ体形を維持していることは知っていた。新型のほうが2cm長くなっているものの、2915mmのホイールベースは変わらない。
先代から引き継いだかなりの大柄ボディーなのに、いざ乗ってしまえばボディーの四隅がつかみやすいのだ。外から見た時の「でかっ!」という印象は、運転席に座ると「思ったより扱いやすい」に変わる。
そして走りだすと、「すごく扱いやすい!」に変わる。
拡大
|
拡大
|
拡大
|
拡大
|
いい仕事してます
新型Mクラスに搭載されるエンジンは、3.5リッターのV6直噴ガソリンと、3リッターのV6ディーゼルターボ、そしてAMG仕様の5.5リッターV8ツインターボの3種類。今回試乗したのは、メルセデス・ベンツとしては第3世代にあたる3.5リッターのガソリン直噴エンジンを積む仕様だ。
最新の直噴エンジンのウリは、アイドリングストップ機構や効率を高めた7段AT「7Gトロニック プラス」との連携プレーで実現した燃費性能だ。JC08モード燃費では、従来型より42%(!)も優れた10.4km/リッターを記録している。けれども実際にアクセルペダルを踏んだり戻したりして感じ入るのは、親しみやすい性質だ。
発進スタートから巨体をじんわり押し出す力強さがあるから、市街地でのストップ&ゴーの連続も涼しい顔でこなす。アイドリングストップからの再始動も素早く、ナチュラルで気に障らない。
高速巡航では静かさが光り、追い越し時にちょこっと回転を上げる時の滑らかな回転フィールも心地いい。そしてワインディングロードなどで上まで回した時には、爽やかに抜けるフィーリングと、朗らかな音を楽しむことができる。効率や耐久性、快適性が大幅に向上したという7段ATとともに、どんな場面でもいい仕事をする。
状況を問わず、いい仕事をするのは足まわりも同じ。
タウンスピードでもゴツゴツを伝えるようなことは一切なく、例えば工事で掘り起こした直後の荒れた路面の凸凹もまったりからめとるように走る。高速では車高の高さを忘れさせるくらいどっしりと据わりがいい。「SUVにしては」という前置き抜きに、快適だ。ルックス同様、乗り味も大幅に洗練された。
さすがにワインディングロードでは、楽しいとは言い難い。けれどもステアリングホイールを切った角度に応じてステアリングギア比が変わるダイレクトステアリングの効果か、タイトコーナーで慌ててステアリングホイールを切る量を増やす「おっとっと」の失態を演じることもない。
ただし、エンジンや足まわりが扱いやすいというのは、ほとんどすべてのメルセデス・ベンツに共通する特徴だ。では、このクルマならではの個性は何か?
拡大
|
拡大
|
拡大
|
拡大
|
使い切ってナンボのクルマ
特に五感を刺激するわけではないけれど、1000km級のグランドツーリングや10年10万km的使い方をした時にじわじわと効いてくる、メルセデス・ベンツの長所をML350 4MATICブルーエフィシェンシーも備える。
ただしそういった機械的特徴をSUVというパッケージングで包むと、不思議とプレミアム感よりツール感が前面に出る。
ありがたい高級品というより、使い切ってナンボの上等な実用品だ。
しかも、夏のドライの試乗では、その魅力の半分しか味わえていない。無敵の四駆システム「4MATIC」は、さらにコンディションが悪いところで真価を発揮するはずだ。
人や荷物を満載してのゲリラ豪雨の高速や雪道で4MATICの恩恵に浴した時、ML350 4MATICブルーエフィシェンシーの“道具感”はさらに増すだろう。
どこにメルセデス・ベンツの魅力を感じるかは人それぞれ。「安全性が高いところ」と答える人もいれば、「リセールバリューの高さ」と答える人もいる。ML350 4MATICブルーエフィシェンシーに関して言えば、「よくできた道具であるところ」だと思う。そういう意味では、メルセデス嫌いのためのメルセデス、ともいえるかもしれない。
ただし「メルセデス嫌いのためのメルセデス」としてお薦めするにあたっては、高価なオプションを装着しない仕様をガシガシ使うというのが前提だ(しつこい)。
(文=サトータケシ/写真=峰 昌宏)
拡大
|
拡大
|
拡大
|

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
スズキDR-Z4S(5MT)【レビュー】 2026.1.7 スズキから400ccクラスの新型デュアルパーパスモデル「DR-Z4S」が登場。“Ready 4 Anything”を標榜(ひょうぼう)するファン待望の一台は、いかなるパフォーマンスを秘めているのか? 本格的なオフロード走行も視野に入れたという、その走りの一端に触れた。
-
NEW
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。 -
第858回:レースの技術を市販車に! 日産が「オーラNISMO RSコンセプト」で見せた本気
2026.1.15エディターから一言日産が「東京オートサロン2026」で発表した「オーラNISMO RSコンセプト」。このクルマはただのコンセプトカーではなく、実際のレースで得た技術を市販車にフィードバックするための“検証車”だった! 新しい挑戦に込めた気概を、NISMOの開発責任者が語る。 -
ルノー・グランカングー クルール
2026.1.15画像・写真3列7座の新型マルチパーパスビークル「ルノー・グランカングー クルール」が、2026年2月5日に発売される。それに先駆けて公開された実車の外装・内装を、豊富な写真で紹介する。 -
市街地でハンズオフ運転が可能な市販車の登場まであと1年 日産の取り組みを再確認する
2026.1.15デイリーコラム日産自動車は2027年に発売する車両に、市街地でハンズフリー走行が行える次世代「ProPILOT(プロパイロット)」を搭載する。その発売まであと1年。革新的な新技術を搭載する市販車の登場は、われわれにどんなメリットをもたらすのか。あらためて考えてみた。 -
ホンダ・プレリュード(前編)
2026.1.15あの多田哲哉の自動車放談トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんが今回試乗するのは、24年ぶりに復活した「ホンダ・プレリュード」。話題のスペシャルティーカーを、クルマづくりのプロの視点で熱く語る。





























