スバルR2 S(CVT)【ブリーフテスト】
スバルR2 S(CVT) 2004.02.02 試乗記 ……141.0万円 総合評価……★★★ (室内)寸法競争と決別し、デザイン重視でつくられた軽コミューター「スバルR2」。スーパーチャージドユニットを積む「S」グレードに乗った別冊CG編集室の道田宣和は、質感の高さに驚くものの……。デザイン優先の功罪
戯け者を演じてはみたものの、生来の真面目さが抜けきらず、内心かえってそのことに悩みもある……。新生スバル・デザインの先駆けを自任する「R2」は、“思い切り遊んでみました!”といわんばかりの外観だが(筆者などは逆三角形のドアミラーに、かつてのフィアット・リトモを見る思いだ)、そのじつ、乗ってみると、クルマづくりの本質には大した進歩がなかった。ミもフタもない言い方になるが、自分のなかでは、そんな風にまとめられた。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
全長3395mm×全幅1475mmは軽自動車の定石どおりだが、“立体駐車場可”の全高(1525mm)と、きょうびの軽としては短めのホイールベース(2360mm)に言及したあたりで、早くもこのクルマの目指した方向性が見えてくる。メーカー曰く、「寸法競争から解き放たれた個性的なデザイン」がそれである。
2003年の東京モーターショーに“参考出品”されてからひと月あまり、「プレオ」に代わって熾烈な軽自動車市場で主戦モデルを張るべく、暮れのボーナス戦線を間近に控えた12月6日、R2は市販された。かつてアルファロメオに籍を置いた、アンドレアス・ザパティナスがチーフデザイナーに就いてから、一連のショーカーで意図的にイメージづけられてきたのがメーカーの出自を示すための“ウィンググリル”。
R2は最初にそのマスクを被ったうえで、流行の理詰め路線とは一線を画す、抑揚の強いスタイリングで一石を投じた。いかにもザパティナス好み、いかにも奔放なイタリアンデザインといった趣である。好き嫌いは別にして、すくなくともこの複雑な造形を、軽の限られた枠のなかで実現したプレス精度の高さは評価されていい。
(グレード概要)
R2が他の「軽」に比べてゴージャスなのは、シリーズ全車に4気筒エンジンが奢られることだ。グレードはベーシックな「i」(SOHC 46ps/6000rpm、5.9mkg/5200rpm/86.0万円〜)、バルブコントロールを備える、ツインカム16バルブの「R」(54ps/6400rpm、6.4mkg/4400rpm/107.0万円〜)、同スーパーチャージャー・インタークーラー付きの「S」(64ps/6000rpm、10.5mkg/3200rpm/130.0万円〜)と、いたってシンプル。FF(前輪駆動)と、後輪駆動のためのVCU式センターデフとプロペラシャフト、リアドライブシャフトを加えたAWD仕様が各10.0万円高で用意される。ギアボックスは、前2者が5MTまたはCVT、パワフルな後者は、スポーツシフト付きCVT。7段シーケンシャルモードでは、“CVTのスバル”ゆえの自信からか、3速から上が固定レシオ(連続可変でないという意味)、5速から上がすべてオーバードライブレシオ(トップにいたっては0.442!)となる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
驚くほど立派なコクピット、というしかない。小型車に比べてやや幅が狭いのを別とすれば、奥行きのある立体的な造形、軽とは到底思えない圧倒的なクオリティの高さが、クラスをひとまわりもふたまわりも超えた安心感と気持ちよさをもたらす。
なかでも、質感の向上が目覚ましい。上級車並みのタッチを誇るスイッチや、樹脂のひとつひとつが新設計で、旧型や他モデルからの流用品がないのは、コストにひときわ厳しい軽では稀なこと。
そうか、時代に逆らってまで極端にグリーンハウスを小さくしたのは、まさにそのためだったのかと、妙に納得させられた。そうするとしないとでは乗員の“包まれ感”がまったく違うし、そんな“濃い雰囲気”のなかでは否応なく質感の善し悪しが露わになるからだ。
一方、懲りすぎの感がなくもない。“フロスティパール”と称する、メタルカラーのダッシュボード化粧版がそれだ。普段はドライバーの方を向いて艶のある鈍い光を放ち、残りの部分とツートーンの妙を演出するのはいかにも高級である。だが、あいにく斜め後方から低い角度で冬の朝日を受けたりすると、いまどき珍しいくらいモロに顔面が照射され、眩しいことこのうえない。
R2を見ていると、なんだかこう言っているようだ。「目指すのはトータルなデザインクオリティであって、些末なことはどうでもいい」と。その典型がいわゆるポケッテリア、つまり小物入れの確保にあまり熱心ではない点だ。今日、ライバルはあらんかぎりの知恵を絞って、わずかな隙間も見逃すまいとしている。それに対し、R2はグラブボックスのボタンや、カップホルダーが巧妙に隠し込まれたダッシュアンダートレイなど、一部にアイデアのキレは認められるものの数自体は多くなく、ちょっとしたモノの置き場に困るのも事実である。
(前席)……★★★
高いダッシュと深いドアに囲まれた前席の雰囲気は、「トヨタ・ヴィッツ」によく似ている。狭いようで広い、広いようで狭い不思議な空間だが、幸い外観から危惧された斜め後方視界は思ったほど悪くない。シートはクッション、バックレストとも中身のウレタン(?)に表皮のファブリックがピタリと糊付けされ、日本車には珍しく、まるで樹脂製かなにかのように沈まない。要するに、硬めなのである。クッションそのものはやや前後長が短く、小振りだ。
(後席)……★★
斬新さがウリの前席はまだいいが、後席は明らかにデザイン優先のワリを食っている。「ホンダ・ライフ」などに較べて、見るからにレッグルームが狭い。なぜかその昔の「レックス」(360cc/550cc時代のリアエンジン車)を思い出させるような形状のリアドアは、ガラスが完全には下りきらないこともあって、狭苦しさは免れない。シートも小型。リクラインもあることはあるが、むしろそれは背後の荷物をより楽に収容するためのものらしく、直立に近い姿勢を強いられる。2+2と割り切ればハナシは別だが。
(荷室)……★★
本来の意味でのトランクがスペース的に限られるのは軽の宿命。R2も例外ではなく、それ自体けっして広くない。問題は、軽がこぞってスペース捻出のアイデアを競い合うなかで、それを補うための工夫がほとんど見られないことである。リアシートは確かにバックレストが50:50の分割可倒式だが、単にそれだけ。座面が前倒れするわけでも、ましてやそれがフロアと面一になるわけでもなく、畳まれた背もたれとの間にハッキリと段差が付く。ついでに言えば、フロントシートも“無為無策”で、ライバルのようにアンダーシートポケットを設けたり、シートそのものが小さく畳まれてリムジン並みの居住空間を生み出すわけではない。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
エンジンは、さすがに過給器付きの4気筒。スムーズでパワフルで、それになんといっても自動車らしい自然な音がする。ギアボックスがCVTというのも大正解だ。Dレンジで効率的にトルクを拾って活発に走るだけでなく、その気になれば7000rpmまでまわったうえでシフトアップされるから、持てるパワーを100%使い切ることができるのだ。ちなみに、メーター読みの100km/hは、Dレンジで2900rpm。軽としては充分にハイギアリングで、静かさもまずまずだ。また、7段マニュアルモードもあるおかげで、同じ100km/hでも6速(3600rpm)はもちろん、5速(4600rpm)や4速(5800rpm)まで守備範囲となりうる。総じて、パワーは「スズキ・ワゴンR RR-DI」ほどではないが、(ターボを含めた)ライフよりは強力といったところ。すくなくとも、パワートレーン全体のスムーズさではピカイチである。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
乗り心地は一言でいってファーム。適度な硬さを持ちながらしなやかさもあわせ持ち、なかなか快適である。ただし、ステアリングがダルでフィールに乏しく、おまけにロック・トゥ・ロック3.4回転の割にはレシオが遅いため、コーナーではアンダーを出しやすく、手が追いつかない場面もある。他のハイトワゴンに較べて、なぜか妙に重心の高さを感じることもあり、首都高でも積極的には飛ばす気になれない。もっとも、横風には比較的強いから、直線を走る分には大丈夫だ。
(写真=峰昌宏)
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【テストデータ】
報告者:道田宣和(別冊CG編集室)
テスト日:2004年1月14日〜16日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:2122km
タイヤ:(前)155/60R15 74H(後)同じ(ブリヂストン・ポテンザRE080)
オプション装備:ADDZESTサウンドシステム(MD+CDプレーヤー&AM/FMチューナー一体120Wオーディオ)/2灯式HIDハイ&ロービームランプ/UVカット機能付濃色ガラス(11.0万円)
形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(7):高速道路(3)
テスト距離:305km
使用燃料:24.4リッター
参考燃費:12.5km/リッター

道田 宣和
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