スバルR2(CVT)【試乗記(後編)】
驚かすのは、鬼面のみならず(後編) 2003.12.20 試乗記 スバルR2(CVT) ……86.0〜140.0万円 なつかしい名前を、斬新なデザインのニューモデルに与えたスバルの新型軽自動車「R2」。『webCG』コンテンツエディターのアオキが、3つのグレードに“ちょい乗り”した。3つのグレード
斬新なデザインに加え、スバルの新しい軽自動車「R2」の特徴のひとつが、タワーパーキングに停めることを考慮した、1520-1525mmの車高である。「ハイトワゴンももう10年」同じようなクルマばかりで、消費者も飽きたでしょう……というのが、R2の開発をとりまとめた西尾貞典スバル商品企画本部プロジェクトゼネラルマネージャーの観測だ。ちなみに、初代「スズキ・ワゴンR」の登場は1993年。
軽自動車の主要マーケットたる地方においては、あまり問題にならないのかもしれないけれど、都市部に住むヒトは、すくなくともリポーターは、背の高い軽自動車をテスト用にお借りするたび、「小さいことが取り柄のハズなのに、なんで(会社の)立体駐車場に入らないんだ!」とハラを立てる。R2が提案する全高は、職務遂行のうえからも大いに歓迎したい。
神奈川県横浜で開催されたプレス試乗会で、限られた時間と場所ながら、3つのグレードに乗ることができた。0.66リッター直4のSOHC(46ps)を積む「i」、同DOHC(54ps)の「R」、スーパーチャージャー付き(64ps)「S」である。iとRには5段MTもカタログに載るが、この日用意されたテスト車は、すべてCVT。駆動方式はFF(前輪駆動)ほか、ビスカスカプリングを用いたAWDこと4輪駆動車も、試乗車リストに載っていた。
贅沢なシャシー
会場となったホテルの駐車場には、色とりどりのR2が並んでいる。楽しげだ。外板色は全11種類。内装は、アイボリーとオフブラックから選べる。
個人的には「菫」(ライトパープル・オパール)と「向日葵」(クリームイエロー・パール)がステキだ、と思い、そばにいたスバルのエンジニアの方にそのことを伝えると、「でも、売れるのはシルバーとか白なんですよね」というつれないお応え。「この会話、どこかで交わしたことが……」と感じて、思い出した。「日産マーチ」の試乗会のときだ。
まず乗ったのは、ベーシックなシングルカムユニットを搭載した「i」(FF)。インストゥルメントパネルには、“航空機の翼”を意識したというシルバーのパネルが広がっている。シンプルなストレートゲートをもつインパネシフトが好ましい。
座ったとたん、シートがいいのがわかる。フワリとして、それでいてしっかり体を支えてくれる。“軽のわりに”という枕詞をまったく必要としないデキのよさ。たっぷりとした背もたれが頼もしい。
横浜の街に出て走り出したとたん、「前編」の冒頭に記したように、しごく“まっとうな走り”に驚いた。
シャシーは、スバルらしい贅沢な4輪独立式で、(前)L字アームのマクファーソンストラット(後)パラレルリンクのストラットを採る。形式は「プレオ」と同じだが、リアのリンク長を延ばすなど、改良が加えられた。
R2は、「i」と「R」で14インチ、スーパーチャージャー付き「S」が15インチという、普通の軽自動車よりひとまわり大きなタイヤを装着する。ベーシックな「i」でも、14インチをもてあますことなく履きこなす。
限られた時間で試乗と撮影をこなさなければいけない。SOHCをビンビン回して、R2「i」が、山手の丘を駆け上がる。リポーター、カメラマン、動画カメラマン、そして機材を積んだ状態は、少々酷だったろうか。46ps、5.9kgmという余裕とはいいかねるアウトプットを最大限活かすべく、CVTは高回転域を主要使用帯に選び、結果的に車内はウルサイ。そして、絶対的には、遅い。試乗車の返却時間にせかされる取材陣には、iグレードの、「超−低排出ガス」&「カタログ燃費22.5km/リッター」のメリットは、アピールできないのであった。
わかりやすい戦略
「それでは……」と、次に選んだのがDOHCスーパーチャージャーを積む「S」(AWD)。ボンネットのエアスクープが勇ましい。R2は、すべてのグレードで車速感応型電動パワーステアリングを備えるが、「155/60R15」という一段スポーティなタイヤサイズのためだろう、Sのステアリングはグッと手応えを増す。
こなさねばならない仕事量に後押しされてスロットルペダルを踏み込めば、さきのSOHCエンジンより太い音が盛り上がり、スーパーチャージャーの過給音がそれに重なる。軽ターボの、けっ飛ばされるような加速ではなく、ペダルを踏む量に比例して、力強く速度を上げる。軽自動車らしからぬ、はたまた個性的なフェイスに似合わぬ、重厚な走りだ。
Sグレードは“走り”同様、車両本体価格130.0-140.0万円と、小型車なみのプライスタグを付ける。CVTに、7スピードのシーケンシャルモードが備わるのも、Sの特権だ。
最後にドライバーズシートに座ったのが、ツインカム16バルブのR。「訴求グレードです」とスバルが推すだけあって、なるほど、全体のバランスがいい。
シリンダーヘッドを新設計した0.66リッター4気筒は、「AVCS」こと可変バルブタイミング機構を得て、54ps/6400rpmの最高出力と6.4kgm/4400rpmの最大トルクを発生する。絶対的なアウトプットは、プレオのマイルドチャージ(60ps、7.6kgm)に届かないが、自然な出力特性で、使いやすいエンジンだ。
スロットルペダルとバタフライを電気的につないだ電子制御スロットル化したのもニュースで、電制無段変速機たる「i-CVT」との協業で、動力性能もさることながら、燃費、排ガスといった環境面で、ドライバーによるばらつきを緩和する狙いもあろう。107.0-122.0万円という価格帯に納得できるなら、スバルのセールスマンの薦めに従って、Rグレードを選んで間違いはないと思う。
「今後のスバル顔!?」と驚かせる顔つきはじめアグレッシブなデザインとは裏腹に、R2は手堅くまとめられた軽自動車だ。嫌いなヒトの数はともかく、「R2がスキ!」と言ってくれるヒトが月に8000人いればいい。軽自動車分野での強者とはいいかねる富士重工は、見えない技術力を活かして、そして隠して、わかりやすい戦略をとったわけだ。
(文=webCGアオキ/写真=峰 昌宏/2003年12月)
・スバルR2【短評(前編)】(2003/12/19)
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000014500.html

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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